お金に限らず、何かについて考えたいと思ったとき、「自分の理解度がいまどれくらいなのか」を知ることはとても大切です。
次なるアクションを考えるために、自分がどの程度お金のことを理解しているかを、粗周囲の人からの相談経験を元に考えていきます。
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マネーリテラシーとは
お金に関する話は非常に奥深いです。
付き合いの長い親族や友人であれば聞かずともなんとなく分かるのですが、あまり親しくなかったりする人からピンポイントに質問されたりすると、どのレベルでアドバイスするのがその人にとってよいのか悩ましいことがあります。
そうしたとき、私がよく相手にいくつか質問してマネーリテラシーを測ることがあるので、それをまとめてみます。
確認内容としては、大まかに以下に関することです。
- 自分のお金についての理解
- 主に家計の収支状況など
- 一般的なお金についての理解
- いわゆる金融リテラシー
それぞれの質問に対して、内容そのものの回答または計算する考え方を回答できれば、各設問ごとのマネーリテラシーレベルがあると想定できます。
自分のお金についての理解
自分のお金の理解については、以下の質問で整理ができます。
レベル | 質問項目 | 内容 |
---|---|---|
初級 | 月の平均手取り収入額 | 税引き後の収入です |
初級 | 月の平均貯蓄額 | 毎月貯蓄している金額です |
初級 | 月の平均支出額 | 収入 – 貯蓄 = 支出 になるはずです |
中級 | 純資産 | 家や住宅ローン残債などを加味して、 資産 – 負債 = 純資産 です |
初級 | 退職予定の年齢 | 老後資金の必要額計算に大きく関係します |
中級 | 必要な老後資金の見込み額 | 退職以降の生活のために必要な老後資金の目安額 |
上級 | 老後資金形成に向けて必要な月貯蓄額 | 上記を退職時点で確保するために必要な突き当りの貯蓄額 |
収入→貯蓄→支出の順になっていますが、これは意図的にこの順にしています。
収入は固定化している人が多い一方で、支出については服飾費や娯楽費などで平均的にぱっと答えられる人が少ないです。
ただ、そんな方々でもきちんと計画していれば「月の生活が破綻しない程度の貯蓄」を行っているはずなので、 (収入 – 貯蓄) で支出を計算するようにしています。
自身のお金計画(マネープラン)を立てる中では、現在の収支と資産、あとは退職年齢がわかれば最低限の計画が可能ですのでこれらの項目を質問としています。
その最低限をクリアし、自分なりの老後資金の見込み額と老後資金に向けて必要な月貯蓄額を答えられるようであれば、かなりハイレベルなマネーリテラシーをお持ちということが分かります。
これらの内容について詳しく知りたい場合は、以下の記事もご覧ください。
一般的なお金についての理解
続いて、一般的なお金についての理解を測る質問です。要するに金利感覚ですね。
これらの理解があると自身のマネープランを自ら考えたり、修正したりすることが可能になることに加え、詐欺などに対する耐性をつけることができます。
レベル | 質問項目 | 解答 | 参考 (2020/01時点) |
---|---|---|---|
初級 | メガバンク円普通預金の金利 | 三菱UFJ銀行:円預金金利、みずほ銀行:預金金利・利率、三井住友銀行:円預金金利 | 0.001% |
中級 | 日本国債(変動10年)の表面利率 | Bloomberg:日本国債・金利 | 0.10% |
上級 | 米国国債(変動10年)の表面利率 | Bloomberg:米国債・金利 | 1.75% |
中級 | フラット35(35年固定、9割以下)の最多金利 | フラット35:最新の金利情報 | 1.27% |
上級 | 個人向けローン(100万円以上)の法定上限金利 | 日本貸金業協会:上限金利について | 15% |
上級 | 日本のインフレ率 | 国際通貨基金(IMF):Japan, inflation rate | 1.3% |
つまるところ、お金に関する様々な手段は、金利という共通の尺度でつながっています。そのため、いくつかの金利感覚を持っておくことは、お金のことを様々な視点で見ることに役立ちます。
あやしい投資などでは「元本保証、金利5%」などと言われたりしますが、原則的に元本保証が可能なのは国債の利率までです。仮に、国債以上の利率で元本保証ができる場合は何かしらの工夫やリスクが隠れていないとおかしいので、その仕組みを十分に理解する必要があります。そうした意味で最も身近な元本保証商品である普通預金と、日本国債の金利認識は非常に重要です。
ただ、国債が元本保証の下限になると言っても、外国国債は別です。特に新興国の国債金利は5%なんてザラにありますが、対円レートが不安定なのであまりアテになりません。そうした意味で、参考にすべきはある程度為替の安定している米国債の金利になるでしょう。実際に、ドル建年金保険の予定利率などは米国債の長期金利と強く関係しています。
あとは自分がお金を使う観点で見たとき、ローン金利とインフレ率を知っておけばいいでしょう。特に、インフレ率はバブル崩壊後20年近くデフレの時期を含んで横ばいが続いていましたが、リーマンショック以降はアベノミクスの効果もあり上昇基調です。
記憶の中にある「10個入りの卵パック価格」と実際の価格が乖離していた記憶はないでしょうか?卵や牛乳の価格はインフレの影響がわかりやすいですが、その価格感に乖離がある場合、まさに自分のインフレ感が現実と合っていないことがわかります。
レベル別アドバイス方針
このようにしてマネーリテラシーがチェックできると、以下のようなアプローチで相談に乗ることができます。いずれも、現在のレベルを起点として、次のレベルに上がるように情報を加えたり、考えを深めたりするものです。
初級以下
大雑把に言って、現在の収支状況を答えられないとこの判定になります。
このタイプの方には、まずは自分の置かれている状況を理解するためにも、まずは「収入と支出の把握」をおすすめしています。
給与明細を見ることからでもいいですし、家計簿アプリを使って3ヶ月ほど収支状況を見える化するのもオススメです。家計簿アプリについては以下の記事をどうぞ。
なおこの見える化により、高齢者以外で「収入より支出が多い」ということが明らかになった場合は、家計の見直しが必要ですので初級に進む前に、そこにアドバイスしていきます。
ただ、お金に「不安」を持っている人でこの状態である人は意外といません。
支出が収入より多いことは体感的であってもわかりやすいので、不安というよりはもはや目に見えた「危機」として不安以上の感覚を持つ方のほうが多いでしょう。
初級
現在の収支状況が答えられるようであれば、現在から将来に目線を移しましょう。
将来のお金には典型的なものでは老後資金がありますので、この老後資金の計算に向けてアドバイスしていきます。
老後資金の計算にあたっては、年金の見込み額が必要になりますが、現在の収入がわかっていれば、年収の割り出しとそれを用いた簡易試算ができますので、その手順をこなしてもらえば大丈夫です。
その他、将来のお金と言えば人生の三大資金と称される「住宅資金」と「教育資金」がありますが、それらはこちらをご覧ください。
中級
現在の収支状況をベースに、将来必要なお金まで試算できるのがこのレベルです。
あとはその実現に必要な貯蓄計画を考えることで上級に進めます。
貯蓄計画を立てる上で切っても切り離せないのが積立貯蓄と金利の考え方です。
目標額をイメージしながら、月の貯蓄額と運用利率を入力しつつ、 積立計算 をしてみましょう。基本的に使うのは 6つのライフプラン係数 における 年金終価係数 ですが、理解が追いつくようなら適宜他の係数も使いながら説明するのがよいでしょう。
運用利率と期間を通じ、どれくらいの成果が得られるのかはお金のQCD感覚が求められます。
このとき、おそらく妥当な運用利率について見当もつかないケースがあると思いますので、様子をみながら国債の金利やインフレ率を補っていきましょう。
上級
貯蓄目標を定め、一定の利率の下で貯蓄する計画まで持てていれば個人レベルでは文句なく上級と言うことができるでしょう。
ここから先は、世間一般に目を向けつつ「計画の達成に支障がないか」「そもそも計画が妥当か」など、様々な可能性へ継続的に目を向けていくことができます。
ここまでくれば最早アドバイスすることなく自身で考えを深めていくことが可能な場合が多いですが、アドバイスの観点としては以下のようなものになります。
- よりリスクを小さくできないか
- アセットクラスの分散やドルコスト平均法で同じリターンを維持しながら、より低いリスクにできないか
- myIndexの資産配分ツール(要無料会員登録)でポートフォリオのリスクとリターンを計算することができます
- よりリターンを大きくできないか
- 残運用期間を鑑みて、リスクを大きく取り、リターンを大きくすることはできないか
- よりリスクを小さくする必要はないか
- 残運用期間を鑑みて、リターンを抑えてでも、リスクを小さくする必要はないか
- リーマンショックをはじめ、経済ショックが発生すると回復に5年程度を要する最大50%規模の下落が生じるため、10年を切っているようならリスク抑制を視野にいれるべきでしょう
このようなことを考えるにあたっては、様々な投資手法や商品を検討するでしょうし、異なる投資商品の比較にあたっては、共通尺度となる金利感覚が不可欠です。
また、退職までに資産を積み上げることが興味の大部分を占めますが、老後資金の取り崩し方を検討することで、そもそも用意すべき老後資金の額を下げることができます。このあたりは 資本回収係数 の考え方と、債券などでリスクを抑制しながらどの程度運用できるのかということが重要になります。
一般的な金融リテラシー
この記事で言うところの「マネーリテラシー」は、アドバイスする側の視点でチェックしたいことを基準においています。
一方、自身のお金を自分で上手く管理していくことを最終目標とする場合、そのリテラシー水準はまた違ったものになります。
そういった意味での一般的な金融リテラシーは、金融リテラシー・マップとしてまとめられているものがあるので、自分自身でリテラシーを高めていきたい場合はそちらもご参考にどうぞ。
まとめ
お金のことについて相談を受けるとき、よく聞かれるのが「何から考えたらいいかわからない」ことです。
お金の相談については知識のあるFPサイドが進んで試算していくケースがありますが、個人的にはあまり良いとは思っていません。もちろん、1回30分や60分といった時間制約の中で成果を出そうとするのであれば、FPがリードしていく必要はあると思うのですが、このやり方ではどうしても相談者本人に結果しか残らないことが多くなってしまうと思っています。
そうした意味で、初級以下から初級へ、初級から中級へと、順に理解を促していくほうが本来的には相談者のためになると思っています。
このようにブログを読んでいただいている方々には、そうした時間制約はありませんので、段階を踏んで徐々に書くようにしています。
仮にこの記事の内容を理解するのに1年かかったとしても、お金と付き合う10年や20年のうちでは僅かなものです。難しい内容であるのは承知ですが、理解する価値のある内容だと思って、ぜひ上級まで自分のレベルを高めてみてください。
もし、自身で考えを深められない場合は、以下から質問・ご相談いただければと思います。