書評: 思考は現実化する

自己啓発本の原点」とも称される、1937年出版の自己啓発本。

オススメ対象者

この本を読むのに適していると考えられるのは、以下のような方です。

  • 何かを始めたいと思っている人

自己啓発本の原点であると称されることもあって、自分の中に何か意思がある人がこの本に適しています。
ページ数も非常に多いため、その熱意を試す試練として、この本を読破できることもその意思を問うものになっていると思います。

概要

このブログの本格稼働に合わせ、色々な本を読もうと読書習慣を復活させたところですが、本屋で探した限りでは取っつきやすい本の内容に真新しさを感じなくなっていました。このあたりは社会人経験がついてきたことや、投資関係の勉強を進めていく中で、自然と知識がついたことが影響しているのかもしれません。

そうしたことから、店頭で今まさに平積みされているような流行りの本を追うのは止めて、10年以上経ってもその名が呼び続けられているような名著を読んでいくことにしました。

中でも、ちょうどAmazonの Prime Reading で何度も目にしていましたが、この「思考は現実化する」がその名著に名を連ねていたので、読んでみることにしました。

私は電子書籍でこの本を読み始めたので気付きませんでしたが、なんとこの本章立てにして18章、610ページもあります。後ろ100ページ程度は付録のようなものですが、それにしたって大作です。

この本の書評を書こうとするなら、それはそれで大作になるのでは、と思いつつ読んでいましたが、読み終わって「主張は首尾一貫したシンプルなもの」だと思いました。
今回はそのあたりを思い出しながらまとめていきたいと思います。

燃えるような願望

この本を通じて、最も強く押し出されていたのがこの「燃えるような願望」というフレーズでした。
場所によっては願望ではなく意欲、信念、熱意などと結びついていましたが、いずれも指すところは同じだと感じました。

この本のタイトル「思考は現実化する」ですが、英語の原題は少し違っていて「Think and Grow Rich」というものです。邦題ではより自己啓発本らしく、「現実化する」という訳が当てられていますが、原題からすれば「思考で富を得よ」あたりでしょうか。

というのも、この本の多くは、著者であるナポレオン・ヒルが自ら取材・調査して得た多くの成功者から、成功の原則を紐解いていくスタイルで書かれています。そして、その成功というのは20世紀初頭のアメリカらしく、ビジネスでの成功が中心になっています。

そうしたことから、この本では多くの成功者がいかにして成功を成し遂げたかというストーリーを取っています。
そうした中で、「全ての成功者には燃えるような願望があった」というのがこの本の主題であると言えます。

“燃えるような” とは?

それでは、その “燃えるような” 願望とは一体どのようなものなのでしょうか。

本の中では、「強く願うことにより、具体的な計画が生まれてくる」と語られています。そして、さらに「固い決意を持ってその計画を行動に移せば、願望は必ず達成する」と綴られています。

要するに、様々な願望がある中でも、その実現に向かって計画を立てるような強い願望、さらにその計画が行動に移されるようなさらに強い願望、…というように、幾多の脱落機会を乗り越えてなお願望が枯れないものを、 “燃えるような” 願望と呼んでいることがわかります。

実際に、第1章の序文はこのように書かれており、まさにこのアイデアがこの本を支配していることがわかります。

成功を引きつけるのは、心の力である。
あなたを成功させるエネルギーは、あなたの心の中にあるのだ。
望みどおりに人生を生きるカギはここにある。

思考は現実化する 第1章「思考は現実化しようとする衝動を秘めている」

というように、本文のスタート以前から「」に強くフォーカスが当たっています。

引き寄せの法則

さて、ここで少し話を本の外へ変えてしまいますが、「引き寄せの法則」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

これも自己啓発本としては有名ですが、非常に大ざっぱに言ってしまえば、「自分の心にあるものが、自分に引き寄せられてくる」というものです。メディアによっては「思うだけで達成できる」のように、かなり極端に取り上げられることもあり、個人的にはかなり苦手意識というかかなりの胡散臭さを感じていました。

しかし、この「思考は現実化する」を読んでいるときに、強くこの「引き寄せの法則」を思い出しました。極論すれば、どちらも「自分の心に生まれたものが、現実にやってくる」ということを言っているからです。

確かに、ある意味理屈は通っていると思いました。

強い願望があれば計画をする。
強い願望があれば行動する。
強い願望があれば仲間が集まる。
強い願望があれば諦めない。
強い願望があれば改善する。

成功の道筋に、容易でないものが潜んでいたとしても、諦めずに行動を続けた人間だけが成功を味わえるのだとしたら、それを成し遂げさせたのは他でもない、燃えるような願望です。また、この本の中で「マスターマインド」と名付けられていますが、目的をともにする仲間たちが集まってくるというのも、引き寄せの法則に類似しているところです。

本の中では手を変え品を変え、色々な成功者をこのフレームに当てはめながら、成功が形作られたのかを繰り返しており、読んでいくほどに、ある種の説得力を感じました。

究極の生存バイアス

このように、「燃えるような願望を持った時点で、あなたは願望を達成することが約束される」と訴えるような文章を読みながら、この本は「究極の生存バイアス」を述べた本だとも思いました。

普通に考えれば、ここまで強い主張を持てば「いくら願望を持ったところで、成功が約束されるはずはないじゃないか」という批判がくることでしょう。
が、この本ではそれに対して「熱意が足りなかった」で片付けてしまいます。要するに「そもそも燃えるような願望を持っていなかった」というわけです。

ただこう思う一方で、やはり「燃えるような願望が達成を生む」ということへの思いが強くなります。私もこれまで生きてくる中で、「これで止めるようならその程度」ということをいくつも見てきたからです。
何かの諦めや挫折が発生するとき、そのタイミングでは必ず願望がそれらの感情を下回ります。どこかで無理だと思い、その思いが行動を止めさせてしまうわけです。

生存バイアスを「生きている者たちの妄言」とするにしても、人の願いを生きながらえさせるのが他でもない燃えるような願望なのだから、燃えるような願望がその人を生存バイアス側に導いていくことになります。

成功者になるためのチェックリスト

この調子で、この本は終始「燃えるような願望が大事」というシンプルなことを主張し続けるわけなので、ある意味最初の100ページほどを読んでしまえば、主要な主張の9割は受け取ってしまうことでしょう。

ではあとの1割は何かといえば、私が当初引き寄せの法則に抱いていたような、「なんとも言えない不信感」を多数の事例によって払拭するための時間です。

典型的には成功者の事例を紐解いていくことですが、中には「成功者に共通する特性」のような項目を並べ、チェックリストがいくつか出てきます。例えば

  • リーダーになるための11の重要な条件
  • リーダーが失敗する10大条件
  • 失敗を招く30の原因

などのようなものです。一例を挙げれば、リーダーの条件には

1. ゆるぎない勇気をもっていること
勇気は自分自身の知識と経験によって裏付けられるものだ。どんな部下でも、自信と勇気のないリーダーにはついていかない。賢明な部下なら、いつまでもそうしたリーダーの下にはいない。

思考は現実化する 第7章「体系的な行動計画を立てる」

などがあります。
これら全てにYesと答えるのは容易ではないですが、1年に1回くらいの頻度で健康診断的にこのチェックリストを自分に当てはめてみるのは、自らを省みるのに有用だと思いますし、仮に全てYesが通るなら、確かに成功はすぐそこにあると自信が持てるような気がします。

自己啓発本の原点

非常に長い本ではありましたが、まさに「自己啓発」を感じる本でした。

確かに今の私にも、大なり小なりの願望はありますが、それらはこの本で述べているような燃えるような願望では到底ないことに気付きました。

しかし、もし私が燃えるような願望を得ることができるとするなら、それが確かに成功への道に繋がっていると思えたことは、この本を読んだ価値が十分にあると思いました。

思えば、先日読んだ リーダーになる人に知っておいてほしいこと でも、熱意の大事さは十分に説かれていたところなので、やはり熱意や願望というものは自己啓発の中核とも言える内容だと思いました。
そして、それを強く主張しているこの本が、自己啓発本の原点と呼ばれていることにも納得です。

まとめ

あまりのページ数に恐れおののいたところもありましたが、この本で述べるメッセージは非常にシンプルなものでした。

物事の本質は、このようにシンプルなのかもしれませんが、シンプルであればあるほど、信じることが難しくなります。
そういう自然な反応を見越して、ナポレオン・ヒルはひたすらに成功者の調査を行い、読者に現実感と自信を与え続けたのかもしれません。

1冊の本を読む負荷としてはなかなかのものでしたが、終わってみれば読んだ価値が十分にありました。先に述べたチェックリストを定期的に見返すとともに、自分の願いが具体化してきたら改めて読み返したい、そう思えた1冊でした。