日本の高配当ETFを比較してみよう

キャピタルゲインと並んで投資で利益を得る方法としてインカムゲインがありますが、そのインカムゲインの代表格に株の配当があります。

米国株ではVYM/HDV/SPYDなど、高配当型の有名なETFがいくつかありますが、日本ではどうなのでしょうか。今回は日本の高配当ETFを利回りや規模、組み入れ銘柄の点で調べてみました。

日本の高配当ETF

ではまず日本の高配当ETFの一覧を探してみましょう。
高配当に限らず日本のETFは東証が公開していますので、そこからピックアップしたいと思います。

サイト上でも、「日本株(業種別)」「外国株」「債券」などいくつかの分類で絞り込むことはできますが、高配当の分類はないので単純に「高配当」をキーワードにしたページ検索でETFを抽出します。

そうして抽出したのが以下の9銘柄(+参考でTOPIX1銘柄)です。なお、純資産総額や配当利回りは2021年5月7日時点のものです。

コードETF名信託報酬純資産総額分配利回り1年騰落率3年騰落率
1399上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ0.35%50億円2.06%29.49%-2.63%
1478iシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETF0.19%457億円2.73%36.75%6.24%
1489NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信0.28%379億円3.29%40.70%1.60%
1490上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ(βヘッジ)0.45%58億円1.86%-5.88%-16.05%
1494One ETF 高配当日本株0.28%以内202億円3.25%36.46%5.51%
1499MAXIS日本株高配当70マーケットニュートラル上場投信0.40%以内45億円3.29%-1.46%-9.17%
1577NEXT FUNDS 野村日本株高配当70連動型上場投信0.32%659億円2.84%35.61%-2.00%
1651ダイワ上場投信-TOPIX高配当40指数0.19%182億円2.90%41.24%8.04%
1698上場インデックスファンド日本高配当(東証配当フォーカス100)0.28%126億円2.75%33.95%3.51%
1308上場インデックスファンドTOPIX0.09%75,422億円1.61%37.34%16.32%

各項目で優れるものを、劣るものをでカラーリングしてみました。
全体的にまちまちですが、一見して1490に全然いいところがないように見えますが、どういう組成なんでしょうか。このあと内容をチェックすることにしましょう。

最後に参考としてTOPIXの代表的なETFを並べていますが、TOPIXそのものでも分配金利回りが1.61%あるので、高配当に注力するため他をどの程度割り切るのかの指標になるでしょう。

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高配当ETFの詳細比較

それではより詳細に各ETFを見てみましょう。

全て見ても9銘柄ではありますが、一覧を見る限り気になるものは限られますので、以下の

  • (1478)iシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETF
  • (1489)NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信
  • (1490)上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ(βヘッジ)
  • (1499)MAXIS日本株高配当70マーケットニュートラル上場投信
  • (1651)ダイワ上場投信-TOPIX高配当40指数

5銘柄に限定して調査します。

全体の値動き

まず最初に、全体の値動きを確認します。
ベンチマーク代わりのTOPIXと、高配当ETF5種を並べて2018年から約3年半の値動きを見てみましょう。

いずれのETFもTOPIXのキャピタルゲインに劣っていることがわかります。
TOPIXは機械的に時価総額加重で組んでいる指数ですが、その他についてはもう少し頑張ってほしいところはありましたね。

今回取り上げた5銘柄は大雑把にいってTOPIXとの価格連動性が高いグループと、連動性が低いグループに分かれました。
低連動な1490には「低ボラリティ」、1499は「マーケットニュートラル」という名前がついている通り、マーケットに対する連動性を低くする意図のもとで組成されたETFであるため、TOPIXというマーケット全体の市況からすればある意味設計通りの値動きになっていると言えます。

そうなるとTOPIXとの中間に位置するのが高連動なグループですが、これは分配金利回り1.61%のTOPIXを高配当に寄せた結果としてある意味妥当な位置付けけですね。

(1478)iシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETF

まずはブラックロックのETFである1478です。

コードETF名信託報酬純資産総額分配利回り1年騰落率3年騰落率
1478iシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETF0.19%457億円2.73%36.75%6.24%

こうして見ると地味に見えますが、最安の信託報酬であることに加え、純資産総額から3年騰落率までまんべんなく “まずまず” な数字が並んでいるのが特徴です。

コード銘柄名業種組入比率配当利回り
33827&iHD小売業6.07%2.03%
8001伊藤忠商事卸売業5.57%2.42%
5108ブリヂストンゴム製品5.26%2.42%
6752パナソニック電気機器5.08%2.36%
9434ソフトバンク情報・通信業4.86%5.94%
7203トヨタ自動車輸送用機器4.85%2.63%
9432NTT情報・通信業4.85%3.34%
9433KDDI情報・通信業4.62%3.40%
1925大和ハウス建設業4.33%3.40%
2914JT食料品4.13%7.20%
49.62%3.51%

高配当の代表格である通信キャリアが含まれているものの、銀行が上位に含まれていません。
そしてそうした上位10銘柄で全体の半分が組み入れられているのもこのETFの特徴です。

このETFがベンチマークとするのは「MSCIジャパン高配当利回りインデックス」ですが、指数の特徴として単なる利回りの高さだけではなく配当性向などの財務体質も加味するようになっています。

この手の高配当インデックスは「配当利回りの高いほうから順に〇銘柄」のように作られることが多いですが、財務体質を見ている点では米国高配当ETFのHDVみたいなものですね。HDVもブラックロックの商品なので、そのあたりは通じるものがあるのかもしれません。

(1489)NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信

続いては野村のNEXT FUNDSシリーズから1489です。

コードETF名信託報酬純資産総額分配利回り1年騰落率3年騰落率
1489NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信0.28%379億円3.29%40.70%1.60%

1489は今回比較した高配当ETFのうち、最も現在の分配金利回りが高いETFでした。

直近1年の騰落率としては40%を超え、TOPIXを上回るリターンとなっています。
とはいえ、全体チャートで見たら分かるように中期的な目線ではTOPIXに劣後しています。

コード銘柄名業種組入比率配当利回り
8306三菱UFJ銀行業4.08%4.14%
8316三井住友銀行業3.79%4.81%
7751キヤノン電気機器3.71%3.07%
8058三菱商事卸売業3.61%4.42%
8411みずほ銀行業3.35%4.66%
8031三井物産卸売業3.25%3.41%
2914JT食料品3.23%7.20%
9432NTT情報・通信業2.92%3.34%
6178日本郵政サービス業2.85%5.36%
5020ENEOS石油・石炭製品2.82%4.49%
33.61%4.49%

ETFの組み入れ状況を見ると、銀行と商社が上位に並んでいます。
上位10社で全体の1/3ほどに留まりますが、平均利回りは4.49%となっており、これが全体の利回りの高さを底上げしているようです。

ファンドの組成は「日経平均高配当株50指数」に従いますが、これは要するに「日経平均のうち利回りの高い50銘柄」のことです。具体的な組入比率は時価総額や流動性を勘案しますが、日経平均をベースにしているため必然的に大型株が並ぶことになります。

(1490)上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ(βヘッジ)

今回比較した中では最も異色の存在、日興AMの1490です。

コードETF名信託報酬純資産総額分配利回り1年騰落率3年騰落率
1490上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ(βヘッジ)0.45%58億円1.86%-5.88%-16.05%

このように、一覧にまとめた全ての項目で下位に位置しており、どういう存在なのか逆に気になってしまいました。具体的な組み入れ銘柄を見ると、

コード銘柄名業種組入比率配当利回り
8031三井物産卸売業0.97%3.41%
4188三菱ケミHD化学0.97%3.74%
8035東京エレクトロン電気機器0.94%1.56%
9062日通陸運業0.93%2.10%
33827&iHD小売業0.93%2.03%
4544HUグループHDサービス業0.92%3.55%
6501日立電気機器0.92%1.92%
4927ポーラオルHD化学0.92%1.75%
1808長谷工建設業0.91%1.32%
7751キヤノン電気機器0.91%3.07%
9.32%2.45%

ということになり、上位10銘柄で10%にもならない組成となっています。
TOPIXよりはやや高い利回りであるため、確かに高配当寄りに構成しているとは思いますが、なんとも言えない存在ですね。

改めて、設定時のプレス文からファンドの説明を引用すると

「上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラリティ(βヘッジ)」の最大の特徴は、配当利回りの高い日本株からなるボラリティ(価格変動性)を低く抑えた株式ポートフォリオへの投資と株式市場全体の変動に対する価格感応度(β値)を低く抑えるための先物の空売り(βヘッジ)を合わせて行うことです。βヘッジを行うことで、株式市場全体の変動の影響を低減しつつ、高い配当利回などを享受して、安定的な収益の確保を目指します。

日本初、日本株ロングショート戦略ETF登場(日興アセットマネジメント) より

と表現されています。
確かに、市場全体に連動するTOPIXと同じく下げトレンドにあったものの、価格変動性は十分小さく抑えられているように見えます。

しかしながら、同様の値動きをしながらもより高い分配金利回りを実現している1499の存在を考えると、低ボラリティが魅力的であったとしても手を出す気にはなれないものですね。

(1499)MAXIS日本株高配当70マーケットニュートラル上場投信

  • MAXIS日本株高配当70マーケットニュートラル上場投信(三菱UFJ国際投信)

1490同様に、市場連動性を低く抑えた高配当ETFがMAXISシリーズの1499です。

コードETF名信託報酬純資産総額分配利回り1年騰落率3年騰落率
1499MAXIS日本株高配当70マーケットニュートラル上場投信0.40%以内45億円3.29%-1.46%-9.17%

3年で下落トレンドなことは1490と同様ですが、こちらは分配金利回りが1489同様に3%を超えています。

コード銘柄名業種組入比率配当利回り
8058三菱商事卸売業4.98%4.42%
7203トヨタ自動車輸送用機器4.74%2.63%
9434ソフトバンク情報・通信業4.68%5.94%
9433KDDI情報・通信業4.55%3.40%
9432NTT情報・通信業4.52%3.34%
2914JT食料品4.48%7.20%
7751キヤノン電気機器3.87%3.07%
8031三井物産卸売業3.58%3.41%
8766東京海上保険業3.48%4.15%
8001伊藤忠商事卸売業3.18%2.42%
42.06%4.00%

内訳をみてみると、お馴染みの大型株が並んでおり、上位10社で合計42%、平均4%の配当利回りとなっています。

「マーケットニュートラル」の名称通り、価格変動を抑える商品設計である一方で、この組成で1年騰落がマイナスになるのはちょっと理解できないですね…。
1490もそうですが、「価格変動を抑えて安定的にインカム収入を得る」のがこうした低ボラリティ商品の目指すところですが、そうであるなら最初から株式資産を選ぶ必要はないのでは…?という意味でこちらもやはり手が出ない印象でした。

(1651)ダイワ上場投信-TOPIX高配当40指数

最後は大和AMの1651です。

コードETF名信託報酬純資産総額分配利回り1年騰落率3年騰落率
1651ダイワ上場投信-TOPIX高配当40指数0.19%182億円2.90%41.24%8.04%

今回比較した商品の中では、項目の並びからして1489と並んで最も好感できるものだったのではないでしょうか。信託報酬最安の水準でありながら、1年/3年の騰落において最もよい成績を収めています。

コード銘柄名業種組入比率配当利回り
8306三菱UFJ銀行業5.54%4.14%
8035東京エレクトロン電気機器5.24%1.56%
8316三井住友銀行業5.21%4.81%
7267ホンダ輸送用機器4.96%3.33%
9433KDDI情報・通信業4.84%3.40%
7203トヨタ自動車輸送用機器4.82%2.63%
8001伊藤忠商事卸売業4.71%2.42%
8411みずほ銀行業4.08%4.66%
4502武田薬品工業医薬品3.95%4.90%
8058三菱商事卸売業3.58%4.42%
46.93%3.63%

組み入れ状況はこのようになっており、上位10銘柄で46%と1478同様に上位に集中する組み入れです。

こちらは「TOPIX高配当40指数」に従いますが、この指数は

  • 東証一部銘柄のうち、時価総額と流動性が高い100銘柄(=TOPIX100銘柄)
  • TOPIX100銘柄のうち、配当利回りの高い40銘柄(=TOPIX高配当40銘柄)

というように構成されるものです。

時価総額加重で組成するものの、ファーストリテイリングやソフトバンクグループなどは配当利回りが高くないため、組成上位には現れないということですね。

もし日本株高配当ETFを買うなら

ここまで見てきて、「日本の高配当ETFは魅力的だなぁ!」と思う人はあまりいないと思いますが、もしどうしてもこの中から買うとするなら選ぶポイントとしては次のようになるでしょう。

  • 1651:インカムとキャピタルをそれなりに両立したい
  • 1499:キャピタルの不確実性を抑えて、インカムを享受したい

とはいえ、これはあくまで「どうしても今回の高配当ETF9銘柄から選ばなければならない」場合ですので、TOPIXそのものもそうですし、REITや債券、さらには外国株など多様な選択肢がある中でもなおこの高配当ETFに着地するロジックはイメージしづらいように感じます。

「日本株高配当ETF」に着目する方は、やはり「高配当」という言葉に注目していると思いますので、また別の機会に株式以外の高配当、高インカム商品については調べてみたいと思います。

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まとめ

今回は言及されることの少ない日本株の高配当ETFについて調べてみました。

マーケットニュートラルなものがあったりアイデアとしては面白いと思いましたが、やはり高配当にするためTOPIXに対してキャピタルゲインに劣る特徴となっていることがわかりました。
また、純資産総額においてもそこまで大きいとは言えないことを考えると、やはり日本においてはまだまだ魅力に乏しいETF商品であると感じました。

しかしながら、JPモルガンの長期予測などを見ていると今後10年はむしろ米国株より日本株のパフォーマンスに期待できるとの読みもありますので、たまにはこうして日本のETFにも目を向けてみたいと思います。

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参考記事

今回は日本株の高配当ETFでしたが、米国株の高配当ETFにおいても同様な記事があります。

商品価格が下がると配当利回りが上が(って見え)るという特性から、配当利回りだけを見てポートフォリオを組むと、インカム収入を上回るキャピタル損失を抱えることもあり、「ダウの負け犬戦略」にも注意する必要があります。

また、キャピタルゲインにではなくインカムゲインを重視するとした場合、それはいったいどういうことなのかについて考えたのがこちらです。

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