目的と目標、そして戦略と戦術について

何かをやりたいと思ったとき、「目的が大事」だとか「戦略が大事」とかいうことをよく耳にします。

もちろんどれも大事なのですが、それぞれ別の言葉なので、どういう住み分けになっているかを考えてみましょう。

投資と目的

最初に、どうしてこんなことを考えたのかのきっかけを簡単にまとめておきます。

投資を考える上で、基本的にすべての人が目的に据えるのは「お金を増やすこと」だと思います。
もちろん、その先で「幸せになりたい」というような真の目的がそれぞれにあると思いますが、そうした真の目的における一側面として共通するものとしてお金を増やすことを捉えるのは、そこまで乱暴な考えではないでしょう。

しかし、そうした目的へ概ねまとまっていくにも関わらず、世の中には非常に様々な投資手法が存在します。
株や債券、不動産やコモディティなどの商品性はもちろんのこと、デイトレードから長期投資まで取り組み方にも違いがあります。

どんな手法も、お金を増やすために考案されたものであるにも関わらず、なぜこうも投資手法の選択が1つに決まらないのでしょうか。

後述するように、こうした「投資手法の選択」は今回の内容においては「戦術の選択」や「計画の策定」にあたるものです。
これらに違いが出るのは、その間に存在する戦略や目標の捉え方が人それぞれであるということですので、目的を頂点として、手段に至るまでの考えを戦略や戦術といった「似て非なる言葉」の中から紐解いてみようというのがこの記事の主旨です。

それでは、順に考えてみましょう。

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目的とその他の関係性

この手の言葉において、おそらく最も最上位に位置づけられることが多いのは「目的」であることが多いでしょう。
そういった意味で、こういった階層を使ってそれぞれの言葉が説明されることがあります。

この重ね方自体は目的が最上位になっていることを除いては、いくつかパターンがあります。
詳しくは後述しますが、私の考え方としては目的を最上位として、相互に関係し合う戦略と目標、戦術と計画を並べて捉えることがしっくりきています。

今回はこの考えでそれぞれの言葉を掘り下げてみます。

目的

まずは最も大事な目的から考えてみましょう。

目的とは、読んで字のごとく、「目指す的」のことを指します。なので、何かの行動があったとき、それによって究極的に成し遂げたい事柄となるものです。

ここで、「究極的に成し遂げたい事柄」などと仰々しい言葉を使いましたが、必ずしも重い内容を目的に据えなければいけないということはありません。
が、目的という言葉を使い、目標や計画、あるいは戦略や戦術といった言葉を上手く使い分けて行動を推進していきたいと思う場合には、ある程度重いものでないとあまりそれらの言葉に差が出ないことは意識しておいたほうがいいと思います。

たとえば、目的として次の対比を考えてみてください。

Good

生涯にわたって健康を維持する。

Bad

毎朝起きてから歯を磨く。

これは極端な例ですが、この2つが目的だと言われたら、後者はずいぶんと軽い内容に見えますね。

後者に関しては「手段が目的化している」なんて指摘もあると思いますが、別に手段を目的に置いてはいけない理由はありません。(そうすることが “目的 を掲げる意味” をなしていないとしても)

しかし、「毎朝起きてから歯を磨く」という目的があったところで、その達成に向けてどんな戦略や目標を立てるでしょうか?
立てられないことはないと思いますが、あまり戦略とか目標という言葉を持ち出す必要性がなさそうですよね。

だからこそ、目的にある程度スケールの大きい内容を据えている場合には、特に次に考える戦略や目標といった言葉を持ち出すのが効果的になります。

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戦略と目標

続いては、戦略と目標です。

このあたりは解釈によって位置づけが異なるところですが、個人的には「目的の達成に向けて考えるもの」であることを同じくしながら、「戦略と目標が相互に影響するもの」として同列に捉えています。

戦略

まずは戦略ですが、字の通り、戦い方に関するものです。
もちろん、戦争だけに使われる言葉ではないので、より広義に「取り組み方」の内容だと思えばよいでしょう。

そして、戦”略”という文字にあるように、「いかにして戦いを略すか」というのが戦略の要点だと考えています。この観点で理解すると、「競争のない市場を作り出して勝つ」というブルーオーシャン戦略の意味がよくわかりますね。

目的を達成するためには、いくつかの行動を実施していく必要があります。
そうしたときに、より効果的に目的へとアプローチする方法を模索するのが戦略です。

これは戦争の例がわかりやすいですが、「戦争に勝つ」という目的があったとして、

  • 被害を最小限に抑えて勝つ
  • 期間を最小限に抑えて勝つ

という、同じ目的に至るにしてもいくつか選択肢があったときに、どの選択が自分たちの目的達成に効果的なのかということを考えるのが戦略です。
ほとんどの場合、目的のために実行できる行動は有限なので、お金であったり時間であったりという「自らの持てるリソースをどう消費するような取り組み方がよいのか」を考え、選び取るのが戦略になります。

このあたりは投資においても良く分かる話で、投資手段を吟味する中で、何を大事にするのか、何を優先するのかという話に関係します。最短の期間でお金を増やしたいのか、最小の労力でお金を増やしたいのか、などなど。
冒頭で触れたように、「お金を増やす」という共通の目的を掲げているにも関わらず、様々な投資手段が議論され続けるのは、手段としての優劣レベルでは解釈できない、その人の「戦略の違い」に起因するものである場合がほとんどです。

目標

次に目標ですが、これも書いた字に大きなヒントが隠されています。

目的が目指す的だとした場合、目標は目指す標(しるべ)となるものです。
登山の場合が最も分かりやすいですが、「山頂を目指すにあたり、どれくらい進んだのか」を知る手掛かりとなるのが標高です。まさに高さの標だということですね。

目標もそれと同じで、目的を目指すにあたって「どれくらい進んだのか」を観測可能にするのが、目的に至る途中に設定した目標だということです。

目標の設定なく、とにかく目的にひた走るケースもなくはないですが、目標を定めておくと次なる行動の目安にもなるため、便利に活用できることが多いです。

こうした観測可能な目安を定めるという点では、いわゆるKPI(Key Performance Indicator)の機能と非常によく似ています。
先ほど「目的はある程度重いものがよい」って話をしましたが、重くするとともに表現が抽象的になってしまうこともよくあります。
先ほどの「健康を維持したい」という話もそうで、具体的な行動を決めるにあたって「そもそも健康とは何か?」ということになってしまうので、目標として「30歳までに健康診断B判定以下をゼロに改善する」などとKPIらしく具体的に設定すると、行動選択の指針が分かりやすくなります。

また、こうして達成水準を明確にすることは、次に選択する行動の目安にもなるため、難しい目的であればあるほど具体的な目標を考え、1つ1つ行動に移していくことが重要です。

戦略と目標の関係

ここで、戦略と目標の関係をみてみると、最初に挙げた通り、「目的の達成に向けて考えるもの」という性質は共通しています。

目標の達成に向けては何かしらの行動を起こしていく必要がありますが、その行動の選択に戦略と目標のいずれもが影響を与えます。

目標とは、目的の着実な達成に向けてチェックポイントを見定めるようなことですが、戦略は時としてそういったチェックポイントをスキップすることも可能にします。
ですので、選択する戦略によって刻むべき目標が変わる側面もあれば、刻むべき目標によって戦略が変わることもあり得るという話です。

ですので、戦略と目標はどちらも考えるべきものですし、どちらかを先に考えてあとはそれに従って考えるといったものでもありません。
達成すべき目的に対して、総合的に効果的な組み合わせがどうかという観点で、何度も相互に見比べ、互いに影響を与えながら戦略と目標を決定していくことになるでしょう。

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戦術と計画

最後に、戦術と計画です。

戦略と目標が「目的を達成するためのもの」だとするなら、戦術と計画は「戦略と目標に従って実行される行動」だと言えるでしょう。

戦術

先ほど、戦略においては「いかにして戦いを略すか」という説明をしましたが、戦術では「いかにして戦いを楽に進めるか」ということになります。

スポーツなどで、優れた戦術にハマったチームが「何かの魔術にかけられたようだった」などと評することがありますが、そういった“戦いの術”のことを戦術というわけです。

戦術を考える上で意識しておかなければならないのは、上位に位置する目的や戦略の存在によって、取りうる手段がある程度限定されているということです。

戦略においては「戦いを起こさない方法はないか」と考えることもできますが、こと戦術においては「戦うことが決まったので、楽に勝つ方法はないか」というレベルで発想することになります。

投資において言えば、「インカムゲイン戦略をとるにあたり、どういった商品を買うのが適しているか」と考えるのが戦術の検討にあたります。
これに並んで、インカムゲイン戦略とセットになった目標も設定されているわけですから、「5年で10万円のインカムを作る」といった目標が、具体的な戦術の良し悪しを決めるポイントにもなるでしょう。

計画

計画までくるとかなり身近な言葉になったと思いますが、ここまでの流れに即して言えば「目標の達成に向けた行動の順序をまとめたもの」あたりでしょうか。

計画において特に大事なのは、行動の順序というところでしょう。
目的に対する目標を期限ごとに複数設定するなどして、順序を意識することがあると思いますが、目標における順序はある程度希望に基づいたものである一方で、計画における順序は行動の具体性を増していく中で、成功の確度を高めるためのものという見方ができます。
戦略や目標を定める中で、目的の達成に向けた行動のイメージが具体化していきますので、計画はそうした理解を踏まえた集大成とも言えるものですから、行動の成果に向けた根拠や自信がより強く感じられると思います。

戦術と計画の関係

ここまでくるとかなり曖昧なところではありますが、戦術と計画の関係を考えるなら、不確実性への対処がポイントになるかもしれません。

戦術は時々刻々と変化する戦況に応じてどう行動するかという観点を含みます。
まさにデイトレーダーなんかであれば、日々の情報に目を光らせたりすることでしょうし、長期的な目線であったとしても不確実性への対処は無視することができません。

一方で、計画というものは順序性が大事になっていくので、基本的には「予定通り進める」ことを前提にすることが多いでしょう。もちろん、計画に予定外のイベントはつきものなので、それを織り込んだ計画にできればいいのですが、多くの場合は「計画の立て直し」というものが求められます。

ある程度の不確実性を許容したり、注視するのが戦術だとすると、計画は不確実性が存在しないかのように順序良く考えるといったところでしょう。
もちろん、それは「不確実」な範囲の捉え方にもよりますので、計画が不確実に対して致命的に脆弱というわけでもないですが、基本的な向き合い方としてはそういう差があるように感じました。

目的の重要性

目的や、それに類するワードの意味するところ、使いどころについて考えてみたところですが、改めてすべての源である目的の重要性を再認識しました。

様々な行動を効果的に行う場合には、こうした戦略や目標といった考え方をうまく使っていくとよいですが、目的の設定がズレていると思わぬ方向に自分を導いていくことになるでしょう。

よくある「手段が目的化している」って話はありますが、これは「幸せになりたい」「健康でいたい」とかいう曖昧なものよりも、具体的な手段を目的とするほうがはるかに考えやすいことに起因するように思います。しかしだからこそ、自分が求めることを難しいながらもしっかり突き詰めていくことは、自分にとって意義のあることに繋がっていくのだと思っています。

FIREをはじめ、ある程度のところまでは手段を求めることと、その向こうにある真の目的を求めることはさほど変わらないのかもしれません。とはいえ、そういった手段を目的化したような世界観では、必ずどこかで自らの望むところとズレが生じると思いますので、常に自分が目指す「目的」についてはちゃんと考える時間を持っていたいですね。

まとめ

世の中には、何かの達成に繋がる様々な手段が存在しています。
一見、存在意義のわからない手段が目につくこともありますが、手段が存在している以上は、誰かの目的であったり、戦略に適うものなんだと思っています。

そして同様に、自分にとってとても魅力的に映る手段があったとしても、それが自分の目的や戦略に適うものであるかは注意深く吟味しなければならないということです。

テレビという均質化されたマスコミュニケーションの時代から、SNSといったマイクロコミュニケーションが盛んになった今でも、あるいは情報が溢れる今だからこそ、自分が受け取るに値する情報なのかどうかは、こういった目的との適合性が重要な意味を持ちます。

「あなたの人生の目的は何?戦略は?目標は?」なんて聞いてくる人がいたらちょっと困りますが、こういったことを丁寧に考えていけるなら、それを大切な指針として、色々なことに活かしていけるような気がしました。