投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2021 表彰式 視聴レポート

私も投信ブロガーとして2021年11月に投票していた、投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2021の結果発表、並びに表彰式が2022年1月22日にオンラインで開催されました。

私もリアルタイムに視聴しておりましたので、結果の確認と、思ったことなどをレポーティングさせていただきます。

投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2021(FoY 2021)

例年のことなのでそこそこにしますが、イベント概要のおさらいです。

今年に限らず、毎年行っている投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Yearのコンセプトは以下の通りです。

「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2021」とは?
投資信託について一般投資家の目線でつねに考え、情報を集め、ブログを書いている投信ブロガーたち。投資信託の事情通である彼ら彼女らが支持する投資信託はどれか?

証券会社の宣伝やうたい文句にまどわされず、自分たちにとって本当によいと思える投資信託を投信ブロガーたちが投票で選び、それを広めることで「自分たちの手でよりよい投資環境を作っていこう!」というイベントです。

投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2021 より

2007年にrennyさんの個人企画として始まったところから数えて、今年で15回目となります。節目っちゃ節目でしたね。

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FoY 2021の結果

それでは早速、2021年の結果を見てみましょう。

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投信ブロガーが選ぶ! ファンドオブザイヤ より

というわけで、2019年/2020年に引き続いてeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が2位に倍以上のスコア差をつけて1位に輝いています。

実は昨年も2位がニッセイ外国株式、3位がVTでしたのでTop3は順位含めて変動なしという結果になっています。

これまでのFoY

2021年の結果を加え、これまでのFoYを振り返ってみましょう。まずは歴代のFoYの変遷です。

Fund of the Year投資対象投票者率投票者数
2007セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド世界株+世界債券70.00%20
2008STAM グローバル株式インデックス・オープン先進国株44.44%27
2009バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)世界株37.78%45
2010STAM グローバル株式インデックス・オープン先進国株25.42%59
2011CMAM外国株式インデックスe先進国株27.12%59
2012バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)世界株16.67%66
2013バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)世界株18.60%86
2014<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド先進国株19.49%118
2015<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド先進国株41.61%161
2016<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド先進国株33.81%139
2017楽天・全世界株式インデックス・ファンド世界株19.21%203
2018eMAXIS Slim 先進国株式インデックス先進国株27.16%243
2019eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)世界株21.62%222
2020eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 世界株26.49%185
2021eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 世界株35.00%180

今年でeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) が3連覇となりました。これは2014-2016で3連覇した<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドに続く快挙で、2022がどうなるのか、今から気になってしまうところです。

表のついでに、毎年の投票者数と、1位ファンドに投票した人の割合として投票者率の変遷も出してみました。数値としては上の表の通りですが、グラフで推移を見るとこんな感じになります。

FoY投票者数と1位ファンドへの投票者率の推移

投票者が100人を超えた2014年以降では2015年のニッセイ外国株式が投票者の41%から票を集めて1位となりましたが、今回のオルカンは35%でそれに次ぐ投票者率となります。
FoYに輝くボーダーラインとしては概ね20%くらいが推移からは見えますが、それだけに現在のオルカン人気がいかに堅いものであるかが伝わってきます。

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FoY 2020 から 2021 を見て

それでは今年の結果を見て、2021年の結果として思ったことを少し書いていきたいと思います。

全体的な特徴

個別商品の順位やランクインなどに触れる前に、全体的な雰囲気について考えてみます。

以下はFoY 2020および2021の1-20位です。緑が昨年比上昇した商品赤が昨年比下落した商品になっています。

FoY 2020(対2019)FoY 2021(対2020)
1位eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
2位<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド
3位バンガード・トータル・ワールド・ストック ETF(VT)バンガード・トータル・ワールド・ストック ETF(VT)
4位セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
5位ひふみ投信iFree レバレッジNASDAQ100
6位eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
7位eMAXIS Slim 先進国株式インデックスセゾン・バンガード・グローバルバランスファンド
8位eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)楽天・全米株式インデックス・ファンド
9位eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)たわらノーロード 先進国株式
10位農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶねSBI・V・全米株式インデックス・ファンド
11位楽天・全米株式インデックス・ファンドMAXIS 全世界株式(オール・カントリー)上場投信
12位iFree レバレッジNASDAQ100結い 2101
13位MAXIS 全世界株式(オール・カントリー)上場投信ひふみ投信
14位たわらノーロード 先進国株式eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
15位グローバル5.5倍バランスファンド農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶね
16位結い 2101eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)
17位グローバル3倍3分法ファンド(1年決算型)楽天・全世界株式インデックス・ファンド
18位eMAXIS Slim 全世界株式(3地域均等型)SBI・全世界株式インデックスファンド
19位楽天・全世界株式インデックス・ファンドSBI・V・S&P500 インデックス・ファンド
20位バンガード・トータル・ストック・マーケット ETF(VTI)eMAXIS Slim 新興国株式インデックス

こちらを大まかに見て思うのは、「FoY 2021はアクティブファンドが全体的に後退した」ということでした。

FoY 2020では、5位につけたひふみ投信を筆頭に、おおぶねや結い2101がランクインしていました。飛び道具という意味ではiFree レバレッジNASDAQ100(レバナス)、 グローバル3倍3分法ファンド (グロ3)、 グローバル5.5倍バランスファンド (グロ5.5)などもあり、eMAXIS Slimシリーズで1/2/3を独占したFoY 2019とは違った多様性のある結果となっていました。

そうした印象でFoY 2021を見てみると、アクティブファンドが概ね後退していることと、SBI・Vシリーズ等のインデックスファンドがランクインし、押し出されるように飛び道具たちがいなくなった格好です。2021年は市況がたいへんに好調で、インデックス投資だけでも高いリターンが得られた年であったためインデックス人気が一層高まったのか、あるいは飛び道具に対する一過性の熱が冷めたのか、受け止めに悩むところです。

19位: SBI・V・S&P500インデックス・ファンド

SBI・V・S&P500インデックス・ファンド(SBI証券) より

下位の中で「なるほど、そうなるのか」と思ったのがこのSBI・V・S&P500 インデックス・ファンド(SBI VOO)でした。

このSBI VOOは2019年に設定されたS&P500に対するインデックスファンドですが、信託報酬0.1%を切る低コストで当初から話題になりました。
「インデックス投資ではコストが大事」というのは随分浸透した考えですが、そんな中、低コストで目立ったSBI VOOが19位というのは結構意外です。

もちろん、同じく信託報酬0.1%を切るeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)という強力なライバルがいるから、というのはあるのですが、SBI・Vシリーズの先陣を切った商品が10位のSBI VTIよりも下位にいるのにはびっくりしました。

つい先日、SBI・Vシリーズの新ファンドとして、SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド(SBI VT)が設定されましたが、こちらも人気が出そうなファンドですので、こちらを加えた来年のランキングでVOO / VTI / VTの3ファンドがどう並ぶのか気になるところです。

12位:結い2101

結い2101(鎌倉投信) より

全体的にアクティブファンドが下位に追いやられる中で、この結い2101は昨年比で順位を上げてきました。順位を下げたとはいえ、この結い2101はもちろん、ひふみ投信やおおぶねもなんだかんだTop20には残り続けているので、一定のファンがいるということのようですね。

これらのファンドは信託報酬0.1%台が主戦場となっているインデックスファンドと異なり、信託報酬1%以上の世界で商品化されています。
これらのファンドはやはりアクティブファンドらしく、企業を厳選するためのコストがかかっているということですが、加えて特徴的なのが情報開示の充実ですね。

というように、ファンドマネージャーの存在とその考えが感じられるように情報開示が積極的になされている印象です。

読んで字のごとく、信じて託すという投資信託ビジネスの中では、こうした情報開示と運用者への理解は投資家との関係性においては非常に重要だと思いますので、これらがランクインしていることは注目に値するところですね。

5位:iFree レバレッジNASDAQ100

iFree レバレッジNASDAQ100(大和アセットマネジメント) より

やはり今年一番の注目はこちらのiFree レバレッジNASDAQ100、いわゆるレバナスですね。

レバナス自体は2018年の設定で、FoY 2020にもランクインはしていましたが、昨今話題になっていたということが、このFoYにも如実に表れてきたというのが率直な感想です。

Twitterなどを見ていてもレバナスには賛否がありますが、これ自体はツールに過ぎないので、本来的には「レバナスに賛否がある」という日本語自体おかしいものです。
賛否があるとすれば、このレバナスというツールをどのように活用するかの話ですが、それ自体は人それぞれなので使うのが良い人も、悪い人もそれぞれいることでしょう。ですので、こうしたツールが投信ブロガーに認知され、アクティブファンドなどともにある程度の多様性を保ったランキングになっているというのは、これもある意味健全性のひとつなのかなと思いました。

加えて、レバレッジという本来扱うのが大変な商品/手法をこうして投資信託の形でアクセスしやすく整備している各投信会社には改めて感謝したいところです。
5位受賞にあたり、レバナスを設計した大和アセットマネジメントの熊原CIO(最高投資責任者)がコメントを寄せていましたが、謎の「高倉健のつもりで読んで/聞いてください」リクエストは非常によかったですね笑

FoY授賞式の翌営業日、2022年1月24日付で大和アセットマネジメントから受賞のリリースが出ていました。授賞式の読み上げ文章もこちらのもののようですね。もちろんこちらからは高倉健の “た” の字も見えません。

真面目なインタビューはもちろん真面目に答えているのですが、少し砕けたものだとこの有様で、面白い人なんだな思って少し好きになりそうです。

2位:<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド

<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド(ニッセイアセットマネジメント) より

続いて2位のニッセイ外国株式です。

すっかり常連のニッセイ外国株式ですが、ランキング全体を見渡して、「同種のもので最も条件がよいファンド」の他に、改めて「新境地を切り開いたファンド」に対する投信ブロガーの思い入れは強いんだなと思いました。

私自身もそのような意味付けで投票したのですが、やはりこのニッセイ外国株式が投資信託界に与えた影響は大きいと認知されているようですね。それまで変わることがなかった信託報酬を、ファンドの組み直しなく下げていく試みは正にパラダイムシフトとも言うべき出来事であったことでしょう。

こうして投信ブロガーが「新しいことをしっかり評価するし、ずっと覚えている」というように運用会社も思ってくれると、中長期的な関係性を前提として何か新しい形の投資信託のヒントになるかもしれません。

1位:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

eMAXIS Slimシリーズ(三菱UFJ国際投信) より

最後は当然ですが、3連覇したオルカンことeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)のところです。
一昔前にS&P500などの米国インデックスが流行り、次にきたのがこうした全世界株の流れだと思いますが、先ほど触れたSBI・Vシリーズの新作SBI VTも新規設定もあるので、これからの全世界株式としては楽天VT・オルカン・SBI VT・SBI雪だるまあたりの戦いとなっていきます。

正直、このオルカンが1位なのは堅いだろうなと思っていましたし、寄せられたコメントの中でもいくつか触れられていた「株式投資はこれ1本でOK」とすら言えるような圧倒的な信頼感は私も同様に感じていたところです。

今回昨年、一昨年に続いて1位に輝いたことで、ニッセイ外国株式に並ぶ3連覇となったわけですが、こうなってくるともはやオルカンから動かないのではないかとか、そのレベルにも思える盤石さです。
今後、全世界株式インデックスファンド以外が1位を取るとする場合、それがどういう商品であって、どんな市況によるものなのかというのはなかなか考える価値がありそうです。

今のこのオルカンであっても十分素晴らしい商品ですが、受賞インタビューで紹介された三菱UFJ国際投信の方々の力で、今のオルカンがもっとよくなること、あるいはオルカンを押しのけて1位に輝くような、次なる何かを願っていきたいですね。

大和アセットマネジメント同様、2022年1月24日に受賞のリリースが出ていました。こちらはオルカンだけでなく、ランクインした7つの商品全体についてのリリースとなっています。

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まとめ

毎年恒例の投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year、FoY 2021は2019, 2020に続いてeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が第1位を獲得しました。

低コストを追求するSlimシリーズの理念に加え、株式投資においてこれ以上ないくらいの分散を実現した全世界株式インデックスという商品特性の合わせ技で、今なお高い評価を受け続けているファンドですね。

それ以外も、昨今の注目度合いを踏まえると概ね自然な並びとなっていましたが、次のFoYはどういった様子になるのか、そしてその結果につながるこれからの2022年はどんな1年になるのか、そんなことを考えながら、また次の投票に備えていきたいと思います。

最後になりましたが、本イベント企画をされた以下の方々に改めて感謝申し上げます。

運営委員会の方々

イーノ・ジュンイチさん / m@さん / まっき~さん / 島田知保さん / えんどうやすゆきさん / カン・チュンドさん / セロンさん / かえるさん / くは72さん

イベントの目的通り、本イベントによって日本の投資信託業界によい刺激が与えられていると思いますし、私自身も投信ブロガーとして1年に1回、自分にとっての投資信託や投資というものを見つめなおすいい機会になっています。

また来年の開催も楽しみにしています。

参考記事

本文中では参考記事に触れていませんが、以下のような記事もあります。

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