お金に関する相談を受けていると、時折「とりあえず何したらいいか教えて」と言われることがあります。
学ぶ気がないわけではないものの、とりあえず取っ掛かりの部分は言う通りにしてみるという意味で出た発言だとして、この問いにはどう返すのがよいでしょうか。
自分の頭を整理するためにも、今回はこの問いを考えてみます。
質問者のイメージ
もう少しだけシチュエーションを整理します。
質問者のイメージは次のようなものです。
- 資産形成に興味がある
- とはいえまだ知識整理も実践もできていない
- まずは何か始めていきたい
典型的には新社会人がそれに当てはまりますし、その延長で資産形成に興味がないまま年を重ねたケースもあるでしょう。
きっかけは自分のライフイベントであったり、あるいはふと見たCMであったりと様々ですが、資産形成に興味が出ており、これから何かやりたいと思っているというのが最も重要なポイントでしょう。
そうした状態であるものの、資産形成にたくさんの勉強(?)が必要だという認識もあるので、手っ取り早く実践したい気持ちから、「とりあえず何したらいいか教えて」という質問が出ていると考えられます。
とりあえずやることリスト
早速本題に入ってしまいますが、質問に対する回答そのものはこうなります。
- 前準備
- 家計簿アプリを導入する
- 現金利用をやめる
- 楽天カード / 楽天証券口座 / 楽天銀行口座を作る
- 投資
- 確定拠出年金をはじめる
- 楽天証券で楽天カードを使って積立投資をはじめる
- つみたてNISA枠:3.33万円/月
- 一般枠:1.67万円/月
- 家計見直し
- 携帯の契約を格安SIMにする
- 保険の契約を掛け捨て型にする
- 電気 / ガス / インターネットなどの契約を統合する
- オプション
- 楽天ふるさと納税からふるさと納税を行う
もちろん、これに全て従う必要はまったくありません。
そもそも私自身がこの通りにしている部分は少ないですし、「各項目について特段の意志がなければこうするのがよい」という類のものです。
それでは、それぞれについて軽く解説 + 参考情報で補っていきます。
前準備
これ自体が資産形成活動ではないですが、今後の活動にとって重要なツールや行動指針となるものです。
まず、家計簿アプリを導入しましょう。
資産形成する中では、ほとんどの場合、「手元のお金を未来に送る」ようなことをします。
そのため、資産形成活動では「今の生活に投資余力がある」ことが大前提となります。
そうしたとき、「いまどのくらいのプラス / マイナスなのかわからない」ようでは話になりませんので、家計簿アプリを導入して、自身の家計観を養うことが重要になってきます。
無料版ならMoneytree、有料版ならマネーフォワードMEがいいと思いますが、乗り換えるのは結構大変なので、個人的には最初からマネーフォワードMEの有料版をおすすめします。
そのあたりも含め、詳しくは以下の記事で解説しています。
続いて、キャッシュレスです。
家計観を得るために家計簿アプリを導入するわけですが、家計簿アプリでお金の流れを見える化するには、キャッシュレス生活にすることが有効です。
現金生活の場合、家計簿アプリにちまちま使途を入力しなければならないため、かなり手間がかかり、途中で投げ出してしまう可能性が高くなります。
また、キャッシュレスであれば各種ポイントなどで金銭的な還元が受けられるため、現金で使うより少なくとも1%程度は得になります。
1%だけ聞くと大したことはありませんが、年間100万円単位で消費はすると思うので、1%であっても1年では万単位の違いが出ますね。
最後に、楽天系サービスの準備です。
なぜ楽天なのかというと、後述するように投資に対するポイント還元があるからです。
毎月5万円までは楽天カードから投資すると1%のポイントがつきます。このことは、投資の勉強をするほどに、「初年度の利回りが無条件で+1%される」という点で破格のサービスだと思うことになるでしょう。
なお、楽天銀行の口座を楽天証券の口座とマネーブリッジで結んでおくと、普通預金金利が0.1%にアップします。これもなかなか強力です。
特に銀行にこだわりがないようであれば、給与受け取りなんかを楽天銀行にするといいですね。
投資
投資でやることは大きく分けて2つです。
1つ目は確定拠出年金で、勤め先で企業型確定拠出年金をやっているならそこで、それらがなければ個人型確定拠出年金(iDeCo)で資産運用をはじめましょう。
iDeCoの場合、楽天証券 / SBI証券 / マネックス証券あたりではじめるのがよいですが、これも特にこだわりがなければ楽天証券でよいでしょう。
2つ目が積立投資です。
現在、つみたてNISAによって年間40万円までは税制優遇があります。その分でまず月3.3万円を積立設定します。
加えて、先ほど少し触れたように楽天証券において楽天カードで投資をする場合、月5万円までポイント還元があるので、余力がある場合は残り1.67万円も積立設定してしまいましょう。
あとは、それぞれにおいてどんな商品に積立設定するかですが、以下の条件を満たす投資信託を選んでみてください。
- 購入手数料なし(ノーロード型)
- 信託報酬0.2%以下
- 外国株式インデックス型
- 純資産500億円以上
- つみたてNISA対応商品
上記を満たす投資信託は、楽天証券においては以下のようなものがあります。
名称 | タイプ | 信託報酬 | 純資産 |
---|---|---|---|
eMAXISSlim米国株式(S&P500) | 米国株インデックス | 0.0968% | 1200億円 |
<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド | 先進国株インデックス | 0.1023% | 1788億円 |
たわらノーロード 先進国株式 | 先進国株インデックス | 0.10989% | 576億円 |
eMAXISSlim全世界株式(オール・カントリー) | 全世界株インデックス | 0.1144% | 347億円 |
楽天・全米株式インデックス・ファンド | 米国株インデックス | 0.162% | 1139億円 |
eMAXISSlim全世界株式(オール・カントリー) は純資産の点で上の条件を満たしていませんが、販売開始からの傾きを踏まえるとすぐ500億円を超えていくと思うので特別に入れてあります。
企業型確定拠出年金においては上記の商品が含まれていない可能性が高いので、条件をヒントに提供商品の中で最も好ましいものを選んでみてください。
家計見直し
家計簿アプリを導入した理由でもありますが、投資にお金をまわすためにも、日々の家計から無駄な出費をなくす必要があります。
その代表として、携帯代と保険料、あとは光熱費などの支払いがあります。
まず携帯代ですが、これは格安SIMにするかどうかというところですね。
楽天経済圏にどっぷり浸かるという意味ではキャリアとしての楽天に乗り換えるのもいいかもしれません。
月5,000円かかっていたところが、月2,000円くらいになるようなものですので、節約効果としてはかなり大きいものになります。
ただその分、回線品質などが犠牲になりますので、そのあたりのバランスは考えてみてください。
次に保険ですが、端的に言って貯蓄型保険はやめましょう。その名の通り、老後に向けた貯蓄の役割も果たす保険のタイプですが、老後に向けた資産形成は確定拠出年金やつみたてNISAが最も得意とすることなので、餅は餅屋的な発想で、保険にその役割を任せないほうがよいです。
保険金を5,000万に設定するとしても、年間で5万円以上の保険料を支払っているとしたら見直しの余地ありだと思います。
最後に光熱費ですね。
このあたりは単なる契約の話なので、例えば東京電力にガスをくっつけるとか、はたまた東京ガスに電気をくっつけるとかするだけでも年5,000円くらい浮くと思います。
ここに携帯代とかインターネット代まで絡められればかなり強いですが、可能な範囲で契約の統合を考えてみてください。
オプション
最後におまけです。
一昔前は破格のお得さを誇ったふるさと納税ですが、一定程度の規制が入ったいまでも十分お得さのある制度になっています。
詳しい説明は省きますが、「実質2,000円を払って、それ以上の商品をもらう」ような制度になっていますので、やってること自体はお得です。
とはいえ手元から2,000円消えるのは間違いないので、厳密にはこれでお金が増えるということはなかったりします。
で、ふるさと納税を行う際にはふるさとチョイスに代表されるポータルサイトを使うのがよいのですが、ここでも楽天ふるさと納税を使うことで、ふるさと納税においてもポイント還元が受けられます。
とりあえずやる場合の注意
もし今現在でなにもやっておらず、自分で何かを選び取るほどの知識もない場合、先ほど挙げたことをやるのは悪い手ではないと思っています。
しかし、忘れないでほしいのは、「知識の不足していることをこれからやろうとしている」ことです。
無責任に先ほどのリストを挙げているわけではありませんが、はじめるタイミングによっては、思ったような推移にならない可能性も十分にあります。そうした時に、その反動でそれまでやっていたことを一切止めてしまうとか、トラウマ的な思いで一生投資から遠ざかってしまうことは望ましくありません。
私としても、本来であれば一歩一歩学んだ上で、納得感をもって投資を始めることが最もよいと考えています。
ただし、冒頭質問者のイメージで確認したように、「これから何かやりたいと思っている」人に、じゃあまず投資とは何かから考えてみましょうといったように、長い学びの道を提示するのも気が引けます。
今回のテーマは、そうした「新しいことをはじめるモチベーションを持っている人」に対するものであるため、もしはじめて間もないタイミングでネガティブなことが起こったとしても、うろたえすぎず、学び続けてほしいと思います。
とりあえず、の先
細かな説明はさておき、とりあえずやることリストを実践したとしましょう。
上に挙げた内容は、ほとんどのケースで長期的な損にはならない内容だとは思いますが、本来は自分自身の考えやライフスタイルに従って資産形成を行うのが正しい取り組み方です。
そうした意味で、「とりあえず、の先」があるとすれば、以下のような内容になります。
- 家計の状況を把握する
- 家計の見直しを行う
- 長期的な資産形成目標を立てる
- 資産形成目標に沿った資産形成計画を実践する
それぞれのステップに進めるかは、自身のマネーリテラシーによりますので、こちらの記事を参考にするとよいでしょう。
まとめ
お金に関して学ぶこと、考えることはとても多いです。そのため、慎重を期すあまり、なかなか行動に移せない人が多いのも事実です。
リスクの少ない投資をする上で重要なことの一つに、「長い時間をかける」ということがあります。
そうした意味で、学ぶことや考えることに時間をかけすぎず、まず少額で少しずつ始めてみること自体は、そこまで悪い手ではありません。
また、学びを続けていくにも、実際にそのものに触れてみたほうがよりイメージが湧きやすいところはありますので、その点でもよいでしょう。
今回の回答で示したことは、必ずしも万人にとって最良のものではありません。
しかし、この回答を踏まえたアクションを取っ掛かりにして、お金についていろいろなことを考えたり、実践していけるようになれれば、それはよい回答であると言えるのではないでしょうか。