Kyashサービスの歴史を追ってみる

私自身も友人に勧めているとして先日ご紹介したKyashですが、2017年にリリースされてから日々改善が進んでいます。

これまで行ってきた中には、単なる改善に留まらない、大きな転換も何度か行っています。
今後の方向性を考えるためにも、自分の理解のためにここまでの歴史を振り返ってみたいと思います。

というわけで、この記事から便利な何かが得られるということはありませんので悪しからず。Kyash利用のメリットなどが知りたい方はこちらをどうぞ。

Kyashの使命

早速ですが、Kyashの使命はなんでしょうか。
数日、数か月、さらには数年変わることのない、「Kyashという企業が存在する理由」のことです。

そうした内容について、公式ホームページに次の記載があります。

新しいお金の文化を創る

MISSION
 価値移動のインフラを創る

人びとの価値観や想いが詰まったお金。
お店や人びと、そしてさまざまな対象にお金を自由に届けられたら、世界はもっと明るく楽しくなる。
Kyashはそう信じて、価値移動のインフラを創っています。

公式ホームページ「会社概要」 より

何よりも先に「新しいお金の文化」というものが掲げられています。
そして、続く文章からは、お金の移動を導入にしながら、「価値移動のインフラを創る」という具体的な手段に帰着させています。

個人間送金はその一形態ではありますが、Kyashという新たな価値移動の手段によって、実際にお金の使い方が変わったことをユーザの一人として確かに実感します。

そうした新しいお金の文化を創る、そのためのインフラを創るということがKyashの使命に位置づけられていることがわかります。

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Kyashサービスの変遷

それでは、そうした使命に基づき、実際にどのようなサービスがリリースされてきたのでしょうか。2017年から順に追っていきましょう。

無料送金アプリ -Kyash-

2017年4月5日、2015年の創業後、サービス開始に向けて開発を続けていたKyashが正式にリリースされました。

この当時のキャッチコピーは次のようなものでした。

かんたん送金、そのまま使える
無料送金アプリ -Kyash-

Kyashは友達への送金、お店での支払い、
日常のお金のやりとりがひとつにまとまるアプリです

これを見てもわかるように、「無料送金アプリ」という冠がついた状態でKyashがスタートしています。

当時のニュースでも触れられているように、「個人間送金」「手数料無料」というところが、大きな特徴として位置づけられていたようです。

また、Kyashはこの時点から前払式支払手段(プリペイド方式)の事業者として、Kyash残高をVisa加盟店でのオンライン決済に利用できるようになっていました。

ウォレットアプリKyash

正式リリースから1年ほど経った2018年3月5日、Kyashは新たなコンセプトとして「ウォレットアプリKyash」を打ち出します。

このコンセプトを目指す思いとして、次のようなことをリリースで述べています。

友人や同僚への送金に加え、お買い物もまとめて「Kyash」アプリ 1 つで行える「ウォレットアプリ」として進化していくことを目指し、この度 UI の大幅アップデートを行いました。

「Kyash」が送金も決済も可能な「ウォレットアプリ」としてリニューアル より

それまでも、オンライン決済という形でお買い物をすることはできましたが、あくまで冠になっていたのは「無料送金アプリ」というものでした。
その冠を改め、お買い物を明確なターゲットに組み込み、「ウォレットアプリ」を目指すべく、新たなコンセプトを打ち出したわけです。

それまではあくまでお金を授受するためのアプリということで、お金を出入りさせるお財布(ウォレット)ではなく、その脇に位置するような「手段」でしかなかったところ、ウォレットそのものになろうというコンセプトです。

ウォレット機能の強化

お買い物をターゲットに据えたことから、これ以降、2018年は決済機能を中心として、次々にウォレット化を続けてきました。

一番の目玉は2018年6月に始まったリアルカードの発行でしょう。
それまでオンライン決済にしか利用できないバーチャルカードでしか、受け取った残高を利用できなかった一方、リアルカードによって多くの決済シーンでKyashを利用できるようになりました。
加えて、Google Payを通じてQUICPay決済にも対応したため、カード決済非接触決済のいずれでもKyash残高を利用できるようになったわけです。

このタイミングで、Kyashからの決済に対して2%のキャッシュバックがつくようになりました。いわゆる二重取りが可能なスキームになっていたため、このあたりから利便性だけでなく、金銭的にメリットに着目した多くのユーザが流入してきました。
(私がKyashを使うようになったのもこの頃からです)

また、実際のお財布と対比すればわかるように、「財布にいくら入れておくか」という自由さがKyashという財布にはありませんでした。そこで、入金手段としてセブン銀行と連携したり、カードから指定額での入金ができる機能が追加されています。

ちなみに、2018年から発行の始まったリアルカードですが、微妙に進化を続けています。2020年3月現在で6代目らしいですね。

ウォレット化のねらい

大きなコンセプト変更であったウォレット化ですが、そのねらいについては公式ブログで詳しく言及されています。

それまでは「個人間送金」という送金面に軸足を置いていましたが、サービスサイトの変更にも現れているように、「Visaカードが持てる」というところにマーケティング上の軸足を移しています。

【TECH PLAY】Kyashウォレット化の裏側 より

それまでのメインターゲットは個人間送金に課題を感じる人、その代表として「幹事属性の人」が据えられていましたが、アンケート調査を通じて「カード決済に課題を持つ人」に新たなチャンスがあるのではないかという仮説が立ちました。

具体例としては、「自分でカードを持っておらず、ネットショッピングを気軽に利用できないような学生」が挙げられます。
こうした人たちに対して訴求できるよう、「Visaカードが持てる」ことを打ち出し、コンビニや銀行ATMからの入金に対応するなど、ウォレット機能の強化を目指してきたようです。

また、そうした属性の人たちにしてみれば「送金する相手がいなくても便利」という見え方になりますので、一人、また一人と着実にユーザを増やしていけるというわけです。

新Kyash Cardの登場

引用:Kyash Cardについて(Kyash)

最も最近の動きとしては、それまでのリアルカードを強化した、新しい「Kyash Card」の発行がアナウンスされています。

Kyashサービスを通じ、使命である新しいお金の文化を創ってきたKyashではありますが、その体験の一角を占める決済機能にはいくつかの制約がありました。

  • 月間決済上限12万円
  • 1回・24時間あたりの決済上限5万円
  • サインレス決済非対応
  • 海外決済非対応

これは本人確認を行わないという利用開始ハードルの低さとトレードオフとなっていたものではあるのですが、ユーザの多様化を経て、これらの制約撤廃が望まれるようになりました。
そうした声を踏まえ、ICチップを搭載した新しいKyash Cardを提供し、従来のカードをKyash Card Lite/Kyash Card Virtualとして再編したのがこの動きです。

このKyash Cardにおいては、キーとなるコンセプトを「自由」「デザイン」「安心」とし、より直感的で、リアルタイム性柔軟性を重視した体験を提供するとしています。

それぞれのコンセプトを実現するものとして、引き上げられた決済上限とタッチ決済という「自由」、洗練されたカードの「デザイン」、ICチップを内蔵し、カード番号を表面から廃した「安心」が挙げられます。

特に、ICチップの内蔵や決済上限の引き上げ、さらにはタッチ決済への対応により、決済シーンが増えたことで、さらに洗練されたお金の文化をデザインできるものとして、このKyash Cardが打ち出されています。

ちなみに、この新Kyash Cardのアナウンスに先立ち、2019年7月18日にアプリをリニューアルしていますが、ここでコーポレートカラーが変わっています。

FUN:楽しさ、親しみやすい、マインドフル、明るい
CONNECTED:速い、信頼、繋がり、社会性、コミュニティ、同期
IMPACTFUL:エンパワメント、文化創造、先進性、革新

Kyashのブランド・プリンシパル

並行して、「FUN」や「IMPACTFUL」の意味合いを強めるためコーポレートカラーを含むカラーパレットでは明るくバイタリティのある 色味を定義しました。

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ビジュアル・アイデンティティの定義 より

Kyash事業の展開

個人ユーザに対してのアプローチは、送金体験と決済体験を柱とするウォレット化で一定の落ち着きを見ることになります。

そうした中、Kyashが次なるコンセプトとして打ち出してきたのが、個人向けではなく法人向けの決済プラットフォーム「Kyash Direct」というものです。

Kyashは個人向けサービスですので、その裏側の技術優位性などは語られませんが、実はその点でKyashはかなりの強みを持っています。

  • 自社構築の決済システム
  • Visa公認の自社カード発行

これらの強みと、Kyash Directのコンセプトがどう関わっているか見てみましょう。

自社構築の決済システム

2015年に創業したKyashは、2017年のサービスリリースまでほとんど一般の目に届くことはありませんでしたが、サービスリリースに向けて開発を続ける傍ら、2016年に次のようなリリースが他社からありました。

このシステムは端的に言えば「カード利用状況のリアルタイム連携」を支えるものです。
言われてみたらそうだなと思いますが、Kyashが実現している「利用状況のリアルタイム連携」は、様々なカードに搭載してほしい機能です。そこに目を付けたのか、TISがそれを一般化したシステム「CARD×DRIVE」を外販するようにしたわけです。

実際に、これまた私が使っているSony Bank WALLETにはそうしたリアルタイム連携が機能として備わっているのですが、

と発表されており、同じようにKyash仕組みをCARD×DRIVE経由で使っているとわかりました。

ここで考えてみると、Sony Bank WALLETもKyashと同じように利用状況の見える化機能を持ったカードというわけですが、ソニー銀行はその根幹であるこのシステムの利用に関して、TISとKyashへ二重の手数料を支払っているわけです。

そうしたことを思うと、他社からも使われるような強力な決済システムを自前で組み上げることで、継続的なコストを抑えながら高い機能性を実現しているというのが第一の強みです。

Visa公認の自社カード発行

Kyashではリアルカードということで、物理的なVisaカードも発行しています。

リアルカード提供が始まった当初は、まだVisaからのライセンスを受けていなかったため、発行可能な他社にリアルカード発行を委託していました。
が、やはりここも自社でできるようにライセンスを取得してしまったわけです。

ライセンス取得の意義について、プレスリリースでは次のように述べられています。

通常、自社ブランドでVisaカードの発行を検討する事業者は、Visa発行ライセンスを保有する銀行またはカード会社と提携し、Visa加盟店との決済処理を担うシステムを提供するシステムベンダーとの契約が必要となります。
このたびのライセンス取得により、Kyashはカード発行から決済処理(プロセシング業務)まで、様々な業態のパートナー企業様に対し、一連のプロセスをワンストップで迅速・安価に提供できるようになります。

Kyash、Visaとのパートナーシップを強化 より

それまでKyashウォレットに存在する残高を決済に利用することを自社で可能なように決済システムを構築していた一方、次はその出口であるカードの発行も自社でできるようになりました。
それまでは他社の力を借りていたわけですから、当然安価に決済事業全体を実行できるようになったわけです。

決済プラットフォーム「Kyash Direct」

こうして打ち出されたKyash Directのコンセプトは、これまで見てきたKyashの技術的な強みを他社にも展開しようというものです。

Kyash Directについて、プレスリリースを引用します。

Kyash Directでは、カード発行からプロセシング業務まで、様々な業態の企業様に対し一連のプロセスをモダンなAPIを通じてワンストップで迅速・低コストで提供いたします。今後、全国のコンビニやスーパーで利用可能な​QUICPayでの非接触決済も予定しており、スマホ一つで完結する決済手段も提供してまいります。

決済プロセシングテクノロジーをAPIで解放する「Kyash Direct」開始 より

と、先ほど引用したVisaパートナーシップの意義をそのまま体現するような、法人向けの新サービスとなっています。

Kyash Directを利用した具体的なサービス例がKyashというわけですが、主なユースケースとして次のようなものが挙げられています。

Kyash Direct「主なユースケース」 より

要するに、Kyash Directは冒頭で触れた使命に関係する「価値移動のインフラ」をまさに支える仕組みになるものです。

販売代金の例では、メルカリの売上代金がメルペイ残高に充当できるような体験を指しますし、店舗売上金の例ではPayPayを利用する販売店側が売上金を即座に使えるような体験を指しているでしょう。

法人向けクラウドサービスの例も面白いですね。
企業の経費精算と絡めて、経費の立替精算を残高で行うのか、あるいは認可した経費分の残高に充当させるのか、というようなことが伺えます。
実際に、このタイプのサービスがクラウドキャストから「Stapleカード」としてリリースされています。

いずれにせよ、Kyash Directという新たな手段を使って、自社だけでなく他社をも巻き込んで「新しいお金の文化を創る」ことに真っ向から挑戦した新たなコンセプトだと感じます。

このあたりについては、CEOの鷹取さんがネットバンキングの次に訪れる「Mobile Banking」ついて、次のように述べています。

「Mobile」は、「Banking」にモビリティをもたらす。つまりこれは、いつでもどこでも、「お金の出入り」や「お金の状況」に直感的でリアルタイムなアクセスができることを意味する。これができるようになったとき、今までよりも格段に、暮らしの中で「Banking」が果たせる役割は増えていくだろう。大きな金額の取引や不審な取引があった際にリアルタイムで通知が届く、電車の待ち時間に友達への送金が完了する、1タップと顔認証で口座の状況が一望できる、など従来の決済や送金という領域の中においても大きな変化が起きていくと思うのだ。

「Mobile」は、何を変えるか? より
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まとめ

2015年に創業し、2017年にリリースされたKyashサービスが、どのようなコンセプトと機能改善を辿ってきたかを調べてみました。

改めて全体像を総覧してみると、見事にKyashの使命である「新しいお金の文化を創る」ことと、これまでの活動が全て全てが繋がっていると感じました。

個人レベルでの新しいお金の文化とともに、他社を巻き込んだ「社会全体での新しいお金の文化」をこれからも創っていくであろうことに、一人のユーザとして強く期待しています。

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参考記事

歴史を紐解く中で、本文中で紹介しきれなかった公式ブログなどの記事です。
細やかなプレスリリースや、中の人による柔軟な情報発信など、Kyash自体の企業文化にも非常に好感できるものでした。

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