書評: お金が増える 米国株超楽ちん投資術

一時期よりは下火になったとはいえ、Twitter等と併せ、ネット上で投資情報を発信している人たちは未だ多く存在します。
私も、そうした先人たちから多くのことを学びましたが、中でも私が最も強く影響を受けたのは、この本の著者であるたぱぞうさんでした。

そんなたぱぞうさんが、自身の投資観を一冊の本にまとめていますので、私も改めてそんなたぱぞうさんの考えを読み返してみたいと思います。

オススメ対象者

投資ブロガーによる書籍はいくつかありますが、この本は端的に言って「米国株は今後も成長するため、米国株の長期積立投資をオススメする」ということを言っています。

結論としては私も同様に感じているため、そのことに異論はないのですが、投資の入り口がこの本である場合には、少し断定的で、主張が強すぎるように感じます。

もちろん、この本は狂信的に米国を推しているわけではなく、たぱぞうさんが米国株を推す理由は、20年にわたる経験の結果であることもあり、非常に理性的です。
主な理由としては、米国という国の国際的地位をベースに、米国という市場の健全性を挙げていますが、例えば対比して日本がどうであるのか分からなければ、そうした米国株投資のすばらしさもピンとこないかもしれません。

そうしたことを踏まえると、1冊目というよりは2冊目としてこの本をオススメできると感じました。

  • 日本株などを通じ、既に数年の投資経験(上がった経験、下がった経験)がある人
  • 別方面で聞いた米国株の魅力を深く知りたい人

ただし、長期的な資産形成の意義であるとか、NISAやiDeCoといった税制優遇の観点から、はじめる人向けにも多くのメッセージがありますので、1冊目としてオススメできない本というわけではないことを付言しておきます。

概要

冒頭で触れた通り、著者のたぱぞうさんは私が最も影響を受けた投資ブロガーさんです。たぱぞうの米国株投資というブログで、2016年からブログを続けられています。
ブログタイトルの通り、米国株を中心とした個別株やETFの投資のほか、債券や不動産など手広く資産形成に関する情報発信を行っています。ここまで成果を挙げつつも株偏重とせず、興味の幅を拡げていることについて、とても尊敬しています。

また、本書でも紹介されている通り、元々は同僚に向けて投資の大切さを伝えようと思って開設したブログだそうですが、投資ブロガーの中では読者からの質問回答にそれなりの重きを置いているように思います。
そうした様々な属性を持つ読者に対し、属性を踏まえつつも、自身の考えに基づいて的確に回答されており、自分の中で投資観がしっかり確立されているんだなと感じます。

それでは、いつものようにいくつかのトピックをかいつまんで所感を添えていきたいと思います。

お金の履歴書

この本では、まず最初にたぱぞうさんがどのような投資経歴の末、今に至っているかをまとめています。こうしたリアルなエピソードは先人に学ぶという観点で非常にありがたいですね。

たぱぞうさんは、金融関係の家族の影響もあって早々に投資を始めた一方で、初任給の全額を個別株に突っ込むなど、現在のたぱぞうさんからは考えられないような投資スタイルだったそうです。
運よく壊滅的なダメージを負うことなく資産を増やすことができたものの、振り返ってみれば、PBRなど単一の指標や印象で投資を行っており、非常にリスクのある投資スタイルだったと振り返っています。

そうしたところ、リーマンショックを後の円高を機に、元々は為替差益に興味をもって米国株投資に注目した結果、米国という市場の健全性などとともに、米国株の魅力に気付いていったという経歴のようでした。

このように、20代で投資をはじめつつも、少ない情報量でハイリスクな投資を行ってきたところ、30代40代になって多面的に情報を得ることで、新たな視点を得たようです。
難しいところは、じゃあ最初から米国株に目をつけられていたらよかったのかというと、ベースとなる情報がないため、米国株の相対的な良さというものがかえってわかりにくくなるのではないかと思います。

そうした意味で、今や確固たる投資スタイルを持っている方であっても、そこに至るまでにはそれなりのストーリーがあってのことだと改めて感じました。

米国株の魅力

たぱぞうさんが紆余曲折を経てたどり着いた米国株の魅力ですが、その理由として以下の2点を述べられています。

私は低迷が長かった日本株への投資を経て、米国株の魅力に気付きました。
先ほど挙げた、ファンダメンタルズの面もありますが、大きな理由は以下の2つに集約されます。

1 人口が増加しており、消費成長国であること
2 投資に見合った法整備がなされていること

……です。この条件を満たす国はごく限られています。

第2章 だから米国株でお金が増える「株主を裏切ることは許されない!」 より

ご存じの通り、日本の人口は2008年のピークを境に減少に転じており、2050年前後で1億人を割り込むと予測されています。
一方で、米国は移民の国で知られている通り、いくつかの要因でゆるやかな人口増加が見込まれ、それとともに労働者と高齢者のバランスも適度に保たれています。

そうした人口動向が経済成長のエンジンとなりますが、そのエンジンの性能を引き出すオイルとなっているのが米国経済を支える様々な法律や慣習です。
中でも、たぱぞうさんは米国市場の持つ「株主への利益責任」を高く評価しており、だからこそ今後も利益を上げ続け、米国経済が成長すると見込んでいます。

そうした株主への利益責任が徹底されていることは、企業の内外2つの面でメリットがあります。
内部的は経営者の変更圧力となり、外部的には企業そのものの退場圧力となります。
利益を上げられない経営者や企業は退場すべきであり、だからこそ利益への強い原動力となっているわけです。

そうしたとき、じゃあ利益のためなら何でも許されるのかというとそうはならないのが米国市場で、そうならないための法整備であったり、ビル・ゲイツをはじめとした著名な億万長者が多額の寄付をしている通り、社会への貢献意識が美徳とされており、不道徳による利益追求を退けていると考えています。

こうした観点を踏まえると、現在の日本市場はこうした米国市場の健全性に到底及ばないと思っていますが、個人的には、金融庁の改革東証の市場再編などを通じて日本市場の体質も少しずつよくなっていくのではないかと期待しています。

様々なETFの魅力

たぱぞうさんは他の投資ブロガーよりも深く米国株に傾倒していますが、中でもセクターETFなど様々なETFについても注目されています。

多くの方が注目するS&P500連動ETFであるSPYIVV/VOOの魅力はもちろん認めるところですが、たぱぞうさんは一貫してCRSP US Total Market連動ETFであるVTIを推されています。
また、S&P500のようなセクターを限定しないETFの他にも、ヘルスケアセクターのVHTやハイテクセクターのVGTなどのセクターETFも紹介されています。

他にも、同じ株式ETFであっても高配当のVYMやHDV/SPYDであったり、債券のBNDやAGGなども紹介されており、これらの特性を理解することで、自分なりのポートフォリオを自在に組み上げるための部品としてETFを考えられるようになります。

私もたぱぞうさんのブログを読むようになるまでは、S&P500以外の米国ETFはほとんど知りませんでしたが、読者の質問回答などで出てくるETFを中心に、様々な部品があることを学び、自身のポートフォリオにも生かしてきました。

とはいえ、個別株を全く見ていないわけではなく、本書においても「たぱぞうの注目銘柄厳選15」ということで、第5章を丸々割いて紹介しています。
様々なセクターに大きく目を向けつつ、その中でも特に有力だと判断した個別株には集中的に投資するようなバランスの取れた投資観が感じられます。

年代別ポートフォリオ

多くの投資本は、投資に興味を持つ20代や30代の若年層をターゲットとしているため、年代別ポートフォリオ出口戦略についてはそこまで強く言及していません。

仮に書いたとしても、メインターゲットからすれば出口戦略を実践することになる20年後や30年後をイメージするのは難しく、また積立投資における出口に直面している人はまだまだ少ないために、あまりありがたがられないセクションなんだと思います。

しかし、このたぱぞうさんは日々のブログにおける質問回答においても、質問者の属性、特に年齢にかなり気を使って回答しており、この本にも年代別ポートフォリオとしてその姿勢が表れています。

原則的に、年齢が若いほど株式の比率は高めにし、年齢を重ねるにしたがって債権や預貯金の比率を上げる、というのがセオリーです。
米国株の場合、過去のデータでは15年保有すればほとんど元本割れはなくなり、20年持てば元本割れがほとんどゼロになるというデータがあります。

第6章 年代別オススメのポートフォリオはこれだ!「若い世代ほど積極的に、リタイア後は控えめに投資」 より

この、「長期で持つほど元本割れがなくなる」ということは、私も過去に試算をして確認をしています。

オイルショックなどの都合で短期的に谷を引いてしまうケースはありますが、基本的には長期になればなるほどトータルリターンが大きくなる傾向がありますね。

米国株投資の実践

最後のセクションでは、米国株投資の実践に触れられています。

ここまでセクターETFなど、様々な銘柄紹介を行う一方で「米国株インデックス投資信託の積立投資が一番楽ちん」という結論を出しています。
その結論に至る背景としては、

  • 米国株(個別/ETF)を扱うには税金処理が必要になる
  • 国内投資信託(米国株インデックス型)の低コスト化が進み、本場ETFと遜色ないレベルになった
  • 近年はNISA/iDeCoなどの税制優遇があり、一定枠内では国内投資信託による資産形成が有利になった

ということがあります。

特に、「楽ちん」という観点をもつと1点目の税金処理はなかなかハードルが高いですね。
たぱぞうさん自身は米国でVTIそのものを購入しているそうですが、それができるかどうかは本人のリテラシーにもよりますので、安易に同じ方法を勧めないところにも好感が持てます。

ただし、外国株の特定口座対応が進んだように、今後二重課税の問題が源泉徴収で解消される可能性や、国内証券会社でのDRIP対応など、今後の制度や仕組みの改善で、楽ちんの水準がまだまだ変わる可能性があります。

まとめ

今回は現在も日々のブログで触れているたぱぞうさんの考えを、書籍で改めて振り返ってみました。

私も現在、たぱぞうさんの影響を多分に受けながら、似たような投資戦略を実行しています。
しかし、そんなたぱぞうさんであっても、20代の頃は逆張りやナンピンといった、初心者らしい行動を取っており、そこから徐々に今のスタイルを確立していったことを思うと、私もまだまだ考えを変える可能性があるなと再認識しました。

ポートフォリオの組み換えなどはそれなりに手間がかかるため、一度決めたらあとは放置してしまいがちですが、20代の頃に得たアイデアを盲信し続けるのも危ない気がしますので、自分の考えはこうやって適宜見直しとブラッシュアップを重ねていきたいと思います。

参考記事

米国株式を推しているたぱぞうさんですが、私も自分なりに分析をした上で、よい投資先であると判断しています。

ただし、この記事の書き方にもあるように「他の地域と比較すればよい投資先である」といった消去法的発想なので、たぱぞうさんが言うように、米国という国そのものの特性を踏まえ、米国それ自体でよい投資先だと言えるようにまだまだ考えを深める余地がありますね。

楽ちん投資の最有力である米国株式インデックスファンドですが、2020年7月時点で調査したところは、本書と同じく楽天VTIやSlim米国株式、SBI VOOが良いという結論になりました。