書評: できる人のお金の増やし方

リチャード・テンプラーのRulesシリーズのお金編。
具体的にこうしなさいという手段以前に、心の部分をどうするかというところに着目した1冊。

オススメ対象者

この本を読むのに適していると考えられるのは、以下のような方です。

  • お金が増えるような生き方をしたいと望んでいる人
  • お金との向き合い方を考えたい人

書名に「お金の増やし方」とありつつも、具体的な稼ぎ方は出てきません
この本が触れているのは、その前提となる「お金が増える考え方」「お金が増える生き方」のようなものですので、そもそも論で考えたい人に最適です。

概要

私がお金に興味を持ち始めて1年ほど経った頃、株の具体的な取引手法などではなく、「そもそもお金ってなんだろう」というような少し引いた疑問をもったときに出会った本。

既に一度読み通していたところ、そこからさらに3年経った今、どのような感覚になるかと思ってもう一度最初から読んでみました。

ではいつものように、印象的なトピックをいくつか書き並べてみます。

「お金持ちになれない」という思いを捨てる

ほとんど一番最初に出てくるテーマがこれです。

この本を手に取る人がどんな人か考えてみると、タイトルからもわかるように、まずはお金持ちになりたい人でしょう。
さらに、「増やし方」と言っているからこそ、まだ増やす必要がある人、すなわち現時点ではお金持ちでない人が読んでいると考えられます。

そういった人たちに向け、著者はいきなり

お金がない人は、その理由を周囲の状況のせいだと思っている。貧乏な家に生まれたから、環境に恵まれなかったから…というわけだ。
(略)
たしかに簡単ではない。厳しい道のりになるかもしれないが、可能であることに間違いはない。

ルール1 「私はお金持ちになれない」という思いを捨てる より

と断言しています。

ネット上のレビューを見ていると、この部分を受け入れられず、この本全体を「当たり前のことを書き連ねているだけで何の役にも立たない」と評している人もいました。

こうした評価があるからこそ、この点を信じることが大事なのだなと思いました。
確かに当たり前のようですし、これ自体は何の役にも立たないのかもしれませんが、これを信じないと「戦う前から負けている」状態になってしまいます。

だからこそ、この点を信じることをルール1、何よりも最初に持ってきたんだと感じました。

「お金持ち」の定義とは

先ほどのルール1に続き、ルール2の内容で恐縮ですが、ルール1で「誰でもお金持ちになり得る」というアイデアを示した次に、「お金持ちの定義を決めよう」と持ちかけます。

あなたの「お金持ち」の定義は何だろう。所有する車の台数?銀行口座の金額?
(略)
目標がなければ、目指すことはできないからだ。それに、本書が役に立ったかどうかもわからないではないか。

ルール2 自分なりの「お金持ち」の定義を決める より

確かに一般的に富裕層といえば、資産額を基準にした野村総研の調査に倣って

  • 超富裕層   :5億円~
  • 富裕層    :1億円~5億円
  • 準富裕層   :5000万円~1億円
  • アッパーマス層:3000万円~5000万円
  • マス層    :~3000万円

というような1億円以上を指す場合が多いです。
しかし、この調査における1億円というものは、単に集団を区切っているだけにすぎず、自分に価値のあるものかどうかとは全く関係していません。

仮に、自分のやりたいことが資産1000万円でも十分にできるのであれば、自分の中でのお金持ちの定義は1000万円で何ら問題ないわけです。
当然、逆に10億円ないとできないことを考えているのであれば、例え1億円の資産があったとしても、その観点ではまだまだ貧乏だというわけです。

だからこそ、自分なりのお金持ちの定義を立て、それが実現するように計画し、行動していくことが「お金持ち」への唯一の道であるとしているわけですね。

ちなみにリチャード・テンプラー本人は

私の「お金持ち」の定義は「お金の心配をする必要がなくなる」ことだ。

と述べていますね。
お金の心配、という意味であれば以下の記事で「三大資金」に着目してその不安をなくそうというアプローチを考えています。

良心を大事にする

お金持ちになろうとすることと、良心を捨てることを同じように考えてはいけないという話が途中で出てきます。

私の以前の知り合いに、本物の犯罪者がいた。
(略)
彼に言わせると、犯罪者こそ、普通の人よりずっと正しく生きなければならない。ちょっとした交通違反でも、そのせいで犯罪がばれる危険があるからだ。
(略)
玄関のベルが鳴るたびにびくっとするような人生を送りたいだろうか?
誰からも信頼されないような人間で満足だろうか?答えは考えるまでもないはずだ。

ルール14 お金と良心を取引しない より

なぜお金を欲しいと思ったのでしょうか。
そして、そのお金が欲しいと思った先に得たものが、日々不道徳への仕返しを恐れるような人生であったとして、それは得る価値があったのでしょうか。

そういった意味で、いかにお金が得られるとしても、良心を売り渡してはいけないと強く述べているわけですね。

スキルをお金にする

ルール43では、スキルをお金にするという話がでてきます。

以前にこの本を読んだとき、あまり自分のスキルというものを意識することはありませんでした。
しかし、社会人としての年次を重ねるごとに、またその過程でいろいろなことをやっていく中で、どうやら自分には「たくさんの情報を整理して発信する」スキルがあるようなことがわかってきました。

この本でも、

・あなたにはどんなスキルがある?あなたの才能は?長所は?
・誰がそのスキルを必要としている?
・どうすればそのスキルを有効に活用できる?
・必要としている人に、あなたの存在をどう伝える?

ルール43 スキルをお金にする方法を探す より

と、自分に問いかけながら、スキルを活かすことを考えさせようとしています。

自分のスキルを発信していきたい、誰かのために使ってみたいという思いでブログを開設するとともに、このブログを通じてお金を稼いでみたいと思ったことは、まさにこのルールの内容を実践していたのだと思いました。

好き嫌いで手段を選ばない

これは改めてそうだなと思った内容です。

お金の決断は「お金が増えるかどうか」の一点のみを基準としなければならない。
それ以外の要素に惑わされてはいけない。心よりも頭が優位に立っていることを確認しよう。
株を選ぶときに、この姿勢を貫くのは比較的簡単だ。しかし、不動産を買うときや、投資目的でクラシックカーやアンティークを買うときは、そうも言っていられなくなる。個人的な好き嫌いがあるものを買うときは、どうしても感情が入り込んでくるからだ。
好きなものを買ってはいけないとは言ってない。ただ、そのときには、お金を増やすためではなく、楽しみのためにお金を使っていると意識しなければならない。

ルール57 好き嫌いでお金の決断をしない より

このサイトについて でも書いているように、お金とは公平に向き合いたいと思ってきました。
不動産が儲かるというなら不動産をやりたいし、株が儲かるというなら株をやっていたい。しかし、それを考えなしに信じるのではなく、同じ世界観の中で同様に「投資対象として有用である」ことが成り立つようにお金のことを考えていたいと思っています。

お金とは、オイルである

人生における様々な問題を解決することに絡め、こんなことが書かれています。

お金があるからといって、すべての問題が解決するわけではない。
(略)
お金で問題を解決しようとすると、問題の本質が見えなくなる。
(略)
ここでのポイントは、問題の本質を見て、解決策を考えることが先決だということだ。その次に解決策を実行するお金を手に入れる方法を考えるというのが、正しい順番だ。
お金それ自体が問題を解決してくれることは絶対にない。お金は車輪をなめらかに動かすオイルだ。お金は決してエンジンにはなれない。

ルール12 お金を見ない。問題の本質を見る より

この本の本文に入る前、「はじめに」において著者は【人がお金で手に入れたいこと】として、「安心と安全」「快適な暮らし」「…」など、大まかに10種類の望みを挙げています。

この本を手に取る人が、漠然と「お金持ちになりたい」と思っているかもしれませんが、きっとその思いの根底には望みがあるはずです。
そうした望みを実現するためにお金持ちになりたいはずですが、実はその望みはお金がなくても実現できることもあるかもしれません。

望みを叶えるためにお金を望むようになり、いつしか「お金がないと望みが叶わない」と知らず知らずに考えてしまう人もいるでしょう。
そうしたことを避けるためにも、お金はそれ自体が目的ではなく、それによって成し遂げたいことをエンジンに据えることは、お金と向き合う上では非常に重要なことだと思います。

まとめ

この本には1から116まで、116個のお金のルールが書いてあります。

中には具体的に「今の経済状況を把握しなさい」「手数料無料のインデックスファンドを検討しなさい」というような、手段に近いことも欠かれていますが、そうしたものにも必ず、その根底を流れる考えが書かれています。

この本では、著者が出会った数々のお金持ちや、自身の経験を踏まえて得てきた数々の考えをルールとしてまとめており、その全ては「どのようにお金と向き合っていくか」ということに尽きます。

この本は、いまこの本を手にとった読者の「お金持ちになりたい」という思いを出発点とし、その思いを現実のものとするために、どのような向き合い方をしたほうがよいのかというアドバイスを、観察と経験に基づいてまとめたものだと言えるでしょう。

人にとっては、「この本を読んだところで何も得られなかった」と言うでしょう。
それもそのはず、この本ではお金持ちに至る考えをアドバイスとして述べているだけであって、手段はほとんど何も言っていないわけです。
そのため、最終的にどんな手段でお金持ちに近付いていくかは自分自身の決断にしか依らないわけですが、「決断を人に預けたがる」「責任を誰かに取ってもらいたい」人にとっては、到底何も得られないように感じる本だと思います。

しかし、「お金とは、オイルである」と表現しているように、人それぞれに実現したいことが違うわけですから、そこに向かう手段も異なって当然です。
だからこそ、自分の望みを元にしてお金持ちの定義を決め、その定義をエンジンとしながらお金というオイルと長く向き合っていくことが、この本全体で述べられているお金のルールなのだと思いました。