2020年はなんだかんだで “オルカン” の言葉がよく聞かれたように思います。
投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2019 で選ばれて始まった2020年だったので、その人気が明らかにされた意味でも話題になりやすい年でしたね。
さてそんな “オルカン” について、投資知識にほぼ関係しないゆるい内容ですが、その呼称の起源を探ってみたいと思います。
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オルカンとは
さて、冒頭から連呼していますが、 “オルカン” とは昨今の投資信託界隈で人気を博しているeMAXIS Slimシリーズの全世界株投資信託、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の略称です。
設定日は2018年10月31日ですが、実は 投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2018 の時点で既に第3位にランクインしているなど、設定当初から投信ブロガーの注目が集まっていた投資信託でした。
このような注目度の高さから順調に純資産残高を伸ばし、2020年10月に500億円を突破したことが先日リリースされていましたね。
全世界株クラスでは、約1年先行して設定された 楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天VT) が人気でしたが、より低い信託報酬を持つこのオルカンの登場で全世界株投資信託筆頭の座を奪われたように見えますね。
実際、純資産残高の積み上がりを見てみると、
というように、オルカンが急速に追い上げていることがわかります。
コロナショックで落ち込む様子を見るに、オルカンは今年になって始めた方が多く流入していそうな印象です。
2020年12月29日現在で見れば、
設定日 | 純資産残高 | 増加ペース | |
---|---|---|---|
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) | 2018/10/31 | 777.22億円 | 0.98億円/日 |
楽天・全世界株式インデックス・ファンド | 2017/09/29 | 637.19億円 | 0.54億円/日 |
というように、すっかり楽天VTを追い抜いてしまったようです。
オルカンや楽天VTなど、全世界株投資信託についてはこちらの記事も参考にどうぞ。
オルカンはいつから?
さて、そんな人気のオルカンですが、この呼称について時折、
- オルカンってなんですか?
- オルカンって「オール・カントリー」のことだったんだ
など、初見ではわからないという反応をTwitterなどで目にすることがあります。
私も今でこそオルカンでちゃんと理解できますが、初見のタイミングでは少し硬直したことを覚えています。
その時は、文脈的に読み取ることは容易でしたし、FoYのこともあり「Slim全世界=オール・カントリー」の認識があったのですんなり理解することはできましたが、文脈情報少なく流れていく中でふと「オルカン」を目にしただけでは、理解できないのも無理ない略称ではあると思います。
最初からオルカン?
さて、ではこの呼称がいつ生じたものなのかというのが今回の疑問点ですが、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の情報が出たくらいの時期は、新しいeMAXIS Slimシリーズとして「Slimオールカントリー」で呼ばれていたように思います。
実際、他のeMAXIS Slimシリーズにおいては、
- eMAXIS Slim 先進国株式:Slim先進国
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):Slim S&P500
というように、Slim○○として略されるものが多く、それに類する呼び名だというわけです。
もちろん、そもそもSlim全世界と呼びたくなるのも山々ですが、厄介なことにSlim全世界と言ってしまうと、先行して設定されていたものと合わせれば、実は3種類のSlim全世界が存在しています。
- eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- eMAXIS Slim 全世界株式(3地域均等型)
このため、それぞれの混同を避ける意味でか、Slim全世界の呼称はほとんど見かけられませんでした。
(逆に今はオルカン以外の2種は話題になりにくくなったので、もはやSlim全世界と呼んでも差し支えないかも…)
というわけで、当初Slimオールカントリーで通称されていたものが、いつの間にオルカンに変わっていったのでしょうか。それが今回の疑問です。
オルカン情報はいつから?
最古のオルカンを探る意味では、このeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の情報がいつ出てきたかを確認しなければなりません。
調べてみると、2018年10月15日にEDINETへの届け出および三菱UFJ国際投信からプレスリリースがあったようです。
- E11518:三菱UFJ国際投信株式会社 (法人番号)9010001034450 S100E9QQ:有価証券届出書(内国投資信託受益証券)(EDINET)
- 『eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)』の設定について(三菱UFJ国際投信)
当時のTwitterでキーワード検索してみると、
あたりの方々が当日中に言及されていました。
間違いなく10月15日付での公開情報なので、朝10時ですでに情報をキャッチしているスピードには恐れ入ります…。
というわけで、2018年10月15日以降での発言を調べていきます。
略称の変化を求めて
調べたように、
- 2018年10月15日:オルカン情報解禁
- 2018月10月31日:オルカン設定日
を転機として、オルカンの情報がTwitterでやりとりされるようになりました。
そんなコミュニケーションの中で、いつ eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) がオルカンへと変容していくのか、過去ツイートを参考に追っかけてみましょう。
Slimオールカントリーの時代
当たり前ですが、先ほどの初出情報が出たばかりの10月15日近辺では、オルカンはおろか、Slimオールカントリーですら呼称としては見つかりません。
10月15日:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
10月16日:オールカントリー
発表から数日間は話題の第一波がきていますが、概ねこの時点では正式名称での言及が多いようでした。
そうして着々と知名度を上げていき、10月31日の設定に向けてSlimオールカントリーの呼称が登場します。
10月27日:slimオールカントリー
と、こんな感じで、10月31日の設定日を迎え、「オールカントリー」「Slimオールカントリー」の名前でFoY2018へのエントリー含めて徐々に浸透していっているように思います。
オルカン探しの旅
それでは最古のオルカンを探してみましょう。素直にTwitterでキーワード検索してみると…
というように、ずいぶん投資とは違った内容でそれなりの数のツイートが引っかかります。はて。
調べてみたところ、これらのオルカンは
- オールカンストの略
- オルカン(Orkan)という武器の名前
ということで、いずれもゲーム界隈の用語であるようでした。
なので、単にTwitter検索の日付を古くしていけばすぐ見つかるということではなく、徐々に時間を進めながら地道に古のオルカン探しをしていくことになりました。
最古のオルカン
そういうわけで、最古のオルカンを丁寧に探し求めていったところ、確認できる中で最古のオルカン発言を発見しました。2019年1月10日のことです。
こちらはとある会話の中で飛び出したつみたてバニーサさんの発言ですが、その少し前に
という発言があるので、ここでいう「オルカン」は間違いなくeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)を指したものであると思われます。
間に入っているツイートが削除されているため正確な文意は分かりませんが、私が調査した限りではこれ以前のオルカン発言を見つけられておらず、これが最古のオルカンのように思います。
オルカンの浸透
2019年1月10日に初出があるとはいえ、じゃあ翌日からバシバシ使われていくかというとそうではありません。
先ほど2019年1月-2月での検索結果で最古のオルカンが見つかったところですが、次の1ヶ月ではそれらしいものが見つかりません。次に出現するのは3月のことで、
と、連続してオルカンを使用しています。
針井さんもいわゆる株クラ住人ということで、先ほどのつみたてバニーサさんとは近い位置にいたと思いますが、そんなに絡んでいる感じもなさそうなので、針井さんは針井さんで独自にオルカンを考案したんでしょうかね…?
針井さんのフォロワー数が現在2000弱ですが、この当時もそれなりにいたとすれば、単体のツイートとして多くの方の目に触れたのはここが最初と言えるかもしれません。
とはいえ、これでもまだオルカンユーザーが増えていく兆しはあまりなく、約半年後の2019年8月2日に針井さんが
と、ツイートし、これを水瀬さんがリツイートしています。
水瀬さんのフォロワーは万を超えていますので、このツイートがかなり人に届いたのではないでしょうか。
そんなこともあって、2019年10月以降から徐々に針井さん以外のオルカンユーザーが増え始め、2020年1月のFoY2019でオルカンが1位をとったことと併せ、かなりの定着を見せたというのが大まかな流れだと推測されます。
まとめ
というわけで、今回は初見で分かりづらい投資用語であるオルカンについて、その初出を探ってみました。
自らを「オルカン信者」と呼んでいることもある針井さんは、FoY2019でオルカンが1位になったことに絡めて以下のようにツイートしています。
こうしてオルカンが1位になったのも針井さんの発信のおかげ…とはもちろん言い切れませんが、Twitterで継続的に話題にしていた点で一定の影響力はあったと思うので、この「😭」にも何か物語めいたものを感じられます。
思い付きで調べてみましたが、なかなか面白い結果でした。
「私が真のオルカン考案者だ!」という方へ
今回調べた限りでは、オルカンという略称は2019年1月10日が初出だったと結論づけましたが、もし読者の方で
- 私こそがはじまりのオルカンである!
- あの人がもっと昔に言ってた!
といったことをご存じであればぜひ教えてください。
参考記事
文中でも紹介しましたが、投資商品としての全世界株を調べたものです。
こちらはオルカンの普及に大きく貢献したであろうFoYの記事です。2020年は私も初めて投票にエントリーしました。
Twitter上のツイートを参考にする限りは、
ということがわかりました。