インデックス投資家が心得ておきたい3つの前提

ネット証券の隆盛や投資商品の進歩によって、ここ最近はインデックス投資がとてもやりやすくなりました。つみたてNISAなど、インデックス投資を通じて長期的にじっくり投資と向き合うことがトレンドの1つとなっています。

今回は、気軽にはじめられるからこそ、疎かにされがちなインデックス投資の前提ついてまとめてみたいと思います。

簡単なまとめ

タイトルの通り、インデックス投資を行うインデックス投資家が心得ておくべき前提は次の3つです。

  • 未来展望
    • 株式インデックスは長期的に右肩上がりに推移する
  • 個別選択
    • 自分には、有望な企業の株や投資分野を選び抜くことはできない
  • 市場予測
    • 自分には、これからの市場の推移を予測することはできない

勘違いしないでいただきたいのは、これらは事実ではなく、自分が受け入れるかどうか選択できる前提だということです。

個別選択や市場予測など、幅広い情報収集や分析によって、それが不可能でないことはある程度の投資家がインデックス投資を上回るパフォーマンスを残すことによってそれを証明しています。
しかし、その高パフォーマンスの裏で低パフォーマンスに倒れる投資家もまたが存在しており、自分がそうはならないという確信がなければただの絵に描いた餅になるということです。

そのため、この3点にYesと言えるのであれば、自分にとってインデックス投資は限りなく正解に近い投資姿勢だと言えるでしょう。

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物事を考えるのに大事な “前提”

世の中には様々な問いがあり、それらの問いに対して様々な答えがあります。

しばしば、同じ問いを巡る答えについて論争や対立が起こることがありますが、それらの対立は答えに至る前提の食い違いに起因していることが少なくありません。

これはこと投資にしても同じことで、インデックス投資を好感し、「インデックス投資家にあり続けよう」と思う場合には、受け入れるべきいくつかの前提があります。
もし、それらの前提を受け入れることなくインデックス投資を始めてしまうと、その前提を認めない考えに触れたとき、容易に考えを変えてしまうことになるでしょう。

もちろん、考えを変えることが悪いというつもりはありません。
外部環境の変化であったり、自身のスキルやマインドといった内部環境で考えを変えることはむしろ随時行われるべきだと思っています。

しかし、過去の自分が選び取ってきたことが一体どういう前提に基づくものなのか、そして今変えようとしていることは、その前提の変化があったからなのかを意識しておくことは、自分の考えと深く向き合うよい尺度になります。

そうした考えの下、インデックス投資家であり続けるために必要な前提を注意深く考えてみましょう。

株価は右肩上がり?

1つ目の前提は「株価は右肩上がりかどうか」です。

この前提についてより詳しく言えば、以下2点の前提を認めるかどうかということに繋がります。

  • 株式資産全体(株式インデックス)は成長し続けるだろうか
  • 最も効率的な投資先は、株式資産だろうか

それぞれについて、もう少し詳しく話していきましょう。

株式資産全体(株式インデックス)は成長し続けるだろうか

まず1点目の、株が長期的に成長し続けることは以下のグラフとともによく説明されます。

過去の市場暴落と回復年数(myINDEX) より

このように、過去100年にわたる株価推移で幾度も経済ショックを経験しつつも、結局はそれを大きく乗り越えて成長していることなどが「株式資産全体(株式インデックス)は成長し続ける」という主張の根拠となることが多いです。

上の画像では特に米国株式を対象としていますが、「長期的に成長し続ける」と認められていることが多いのは、

  • 米国株式(S&P500など)
  • 先進国株式(MSCIコクサイなど)
  • 全世界株式(MSCI ACWIなど)

の3種類、それも時価総額加重型の高分散インデックスであることが多いでしょう。現在は全世界でも60%ほどが米国株式で占められていますし、上の画像から「今後も米国株式は成長するだろう」という前提を持つ人はインデックス投資家に多いと思います。
しかし、その期待の高さから米国経済の失速を危惧する声は常にありますので、その折衷案として先進国株式や全世界株式への注目が集まっており、投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Yearにおいて全世界株式インデックスファンドが二連覇したことや、先進国株式のニッセイ外国株式が継続的に上位入賞していることにも現れていると感じます。

最も効率的な投資先は、株式資産だろうか

2点目は、他にたくさんの投資先がある中で「なぜ株式なのか」という話です。

インデックス投資家は様々な投資家がいるなかで、株式投資家であり、さらにインデックスを主要な投資先とするものです。
そのため、人によっては「不動産が儲かる」「FXが儲かる」なんていう前提で話す人もいますし、実際にインデックス投資以上に成果を上げる投資家はいくらでも見つかるでしょう。

そうした場合には、こちらのグラフが引用されることが多いです。

なぜ米国株を長期保有するのが最適な投資方法になりうるのか | 田舎サラリーマンが株式配当で楽々放牧生活を目指すブログ
なぜ米国株を長期保有するのが最適な投資方法になりうるのか(田舎サラリーマンが株式配当で楽々放牧生活を目指すブログ) より

これはジェレミー・シーゲルの株式投資という本などで見られる有名なグラフです。

このグラフは株式(Stocks)のほかに債券(Bonds)や長期債券(Bills)、金(Gold)、現金(US Dollar)の価値推移を示したグラフとなっています。
一見して株式資産の上昇が目を見張ることと、左軸の単位から複利を意識した指数グラフになっていることがわかります。

株式が上昇する反面、現金が右肩下がりになっていることから、このグラフはインフレを前提としたグラフになっていることがわかりますね。
現金と債券は同様に安全資産だとみなされますが、インフレ局面では現金価値が目減りしていくことを指しています。

このように、複数の資産クラスを見渡しても長期的なパフォーマンスで見れば株式が優れるということで、株式投資が効率的であるという主張に繋がります。

しかし、過去は未来を保証しない

このように、過去100年にわたる実績を見てみれば、確かに株式が今後も有望な投資先であるように思えます。

しかし、これらはあくまで過去のデータであり、過去によって未来が保証されることはありません
そのため、やはりこの前提を自分の中に持つかどうかは、自分自身の選択でしかないわけです。

仮に、「株式資産の成長が鈍くなり、そしていずれ止まっていき、長期的に成長しない」という前提を持つのであれば、また違った投資スタンスになると思いますので、この「長期的に上昇するか」という問いにどう答えるか、そしてその答えを前提としてどのように次なる問いに答えていくかというのはとても重要な前提認識となります。

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有望な株だけを選び抜けるか?

まず第一の前提では「株がよい投資先か?」という問いに答えることを考えました。

次に考えることは、トータルとして株がよい投資先だったとして、その中から特に有望な株を選び抜けるかということです。

これは要するに個別株投資かインデックス投資かという問いでもあり、アクティブ投資かパッシブ投資かという問いでもあります。

個別株か、インデックスか

一般に、集中投資である個別株投資と分散投資であるインデックス投資ではリスクとリターンがトレードオフの関係になると考えられます。

そのため、そうしたトレードオフのことからよく「大きなリスクを取ることで大きなパフォーマンスが得られる」というようなことが言われますが、これは少し言い過ぎで

  • ✕:大きなリスクを取ると、大きなパフォーマンスが得られる
  • ○:大きなパフォーマンスを狙う中では、大きなリスクは避けられない

という関係であることを理解しておく必要があります。
つまり、リスクがパフォーマンスを保証するわけではなく、パフォーマンスとリスクが不可分に同居しているに過ぎないということです。

実際にパフォーマンスを上げるには様々な企業や投資手法、そして様々なライバルがいる中でそれらを上回る必要があり、まだまだリスクの先に乗り越えるべきハードルがあります。
そういったことから、よりよい投資スタイルを考える上では、「どれを選びたいか」ではなくて「自分がどれになれるか」という観点が重要です。

個別株とインデックスの対比イメージ

単にこのグラフを見せて、「どれを選びたいか?」と言われれば誰もが赤だというでしょう。

しかし、実際に赤を志すだけで、赤を成し遂げられるかと言われると別の話なので、自分のスキルやスタンスを踏まえてどれを選ぶか、そしてその道を歩んでいくかを選ぶことになります。

アクティブ・インデックスか、パッシブ・インデックスか

よく誤解されますが、パッシブ投資はインデックス投資であり、インデックス投資はパッシブ投資である、つまりパッシブ投資とインデックス投資は全く同じ投資手法であるという認識は、多くの文脈で大筋に間違いはないですが実際には少し違っています。

まず、パッシブ投資とは単に「インデックスに連動する投資手法」を指しています。
ですので、連動の対象が日経平均だろうが、S&P500だろうが、それに連動することを目標にする上ではパッシブ投資であると言えます。
この観点で対義語になるのはもちろんアクティブ投資で、そうしたインデックスを上回ることを目指します。

一方で、そのパッシブ投資において、そこに登場するインデックスそのものの性質についてはあまり言及されることがありません。
例えば、S&P500のように市場全体を大きく切り取るインデックスのことを市場平均と呼ぶことに差し支えないにしても、日経平均のように「日本を代表する企業」であり、かつ「株価の平均」を恣意的に切り取ることが本当に市場平均と呼べるかというのは少し疑問があるという点です。

そのため、一言にインデックスと言っても、時価総額加重型インデックスで市場の大半をカバーするパッシブ・インデックスと、市場の全体像を必ずしも織り込まないアクティブ・インデックスに分類するとすれば、一言にパッシブ運用というものが同じ性格にはならないということがわかります。

  • パッシブ・インデックスの例
    • S&P500、TOPIXなどの時価総額加重型インデックス
  • アクティブ・インデックスの例
    • NASDAQ100などのセクター特化型インデックス
    • 日経平均のような時価総額加重型でないインデックス

そうしたことから、「個別株じゃないからインデックスだ!」と志したとしても、市場平均を反映しないインデックスを選んでしまうと、インデックスにおける個別性が滲み出てしまうことになり、相応のリスクを知らずに負うことになってしまいます。

アクティブとパッシブの対比イメージ

ここ最近はNASDAQ100などのハイテクセクターインデックスが好調で、コロナショックを受けて金融やエネルギーセクターが低調だと言われます。
ただ、これらはあくまで一時期を切り取ったに過ぎないため、アクティブ・インデックスを選ぶことは個別株同様、「どのセクターに投資するか」という観点でアクティブ投資の側面を持っている考え方になります。

自分はどれに “なれる” だろうか?

個別株とインデックス、アクティブ・インデックスとパッシブ・インデックスの対比を考えましたが、これらをまとめると総合的には次のような関係になります。

株式投資家の分類イメージ

集中度最も高い個別株投資が最もリスクが大きく(パフォーマンスの振れ幅が大きい)、全ての株式投資の平均としてパッシブ・インデックス投資が存在する構図となります。

繰り返しになりますが、このうちのどれに「なりたい」かどうかではなく、自分のスキルやスタンスを踏まえてどれに「なれる」かどうかを考えるのが肝要です。

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市場の推移を予測できるか?

最後に、市場の推移を予測する、タイミング投資の観点をみてみましょう。

インデックス投資において重要なのは市場動静に左右されず、淡々と積立を続けることだと言われます。
これはつまり、「1年以内に暴落がくるから投資を控えよう」とか「今は割安だから投資を増やそう」などというタイミングの判断をしない投資スタンスのことを言っています。

もし、市場の推移を予測することができるのであれば、インデックス投資であってもタイミングを図ればよりよいパフォーマンスが得られることは明白なので、積立投資を行うということは暗に「価格の推移は予測できない」ことを前提としています。

そのため、積立投資がよいかどうかも結局は「個別株か、インデックスか」と同じように、自分にどれほどの予測眼があるかどうかというスキルの問題と言えるでしょう。
基本的なスタンスとして「株は長期的に上がる」ことを前提とするなら、基本的に投資タイミングは早ければ早いほどいいはずですしね。

なお、個別株によって高いパフォーマンスを挙げられることを示す投資家はウォーレン・バフェットやジョージ・ソロス、ジム・ロジャーズなど明確に存在しますが、市場全体の推移を読んで高いパフォーマンスを挙げた投資家はあまり耳にすることがありません。
もちろん、リーマンショックによる下落相場で投資を増やし、その戻りで大きなリターンを挙げた投資家はいると思いますが、そもそもリーマンショックの到来を予測していたというのとは少し違います。

なので、個人的な意見としては市場全体の株価推移を予測することは、個別株の株価推移を予測すること以上に難しいのではないかと感じます。

インデックス投資家であり続けるためには

改めて、これまでの3点を振り返ります。

インデックス投資を長く続けるにあたっては、自分の考えに合った投資スタイルがインデックス投資であることが重要です。
そうした観点から、

  • 未来展望
    • 株式インデックスは長期的に右肩上がりに推移する
  • 個別選択
    • 自分には、有望な企業の株や投資分野を選び抜くことはできない
  • 市場予測
    • 自分には、これからの市場の推移を予測することはできない

この3つの観点で考えた場合に、それぞれにYesと言えるのであれば、インデックス投資家が向いており、だからこそインデックス投資家であり続けられる可能性が高いというわけです。

逆に言えば、いまインデックス投資を行っている人が、それ以外の投資に手を出そうとする場合、このいずれかの前提を覆しにいかなければならないということです。
それは個人の考えや努力にしかよらない選択の問題ですので、一般的にどうかということではなく、自分が明確にこれらの問いに反論できるかという点が重要です。

そういった意味でも、「なりたいかどうか」よりも「なれるかどうか」という冷静な判断が必要となるでしょう。

まとめ

今回は多くの方が取り組んでいるであろうインデックス投資に関して、それを長く続けていくために必要な前提となる考えを探ってみました。

確かに過去100年に裏打ちされた実績はとても魅力的であり、信じるに値するものではありますが、それもまさに「信じる」というレベルですので、どこまでいっても願望の域を出ません。

もしどこかで原理的に「株式は上昇せざるを得ない」ということが明らかになればまた違いますが、人の作り出した仕組みである以上、なかなかそうはならないだろうなと思っています。

だからこそ、「インデックス投資がよい投資方法である」ということは人の価値観、つまり何を前提として信じてよいかに左右されるので、自分が前提とするものを大事に捉え、それが変わらないものなのかには注意深くなっておくのがよいでしょう。

補記: “なりたい” は悪ではない

記事中で何度か、「なりたいかどうか」ではなく「なれるかどうか」だという話をしました。

そのため、もし投資スタイルに悩む方がいたとして、この二軸をどう思うかと聞いたとき、多くの方が「なりたいが、なれるかどうかわからない」という回答をするでしょう。

そういった確証がないからこそ悩んでいるんだと思う一方で、そうした確証のなさこそがリスクとリターンの源泉であるとも言えます。

なので、元来インデックス投資に傾倒するような人はリスクを重く捉えると思いますので、多くがそこで踵を返し、アクティブ投資に至ることはないと思いますが、やはりどこまでいっても「なりたい」という気持ちが新たな一歩を踏み出させる原動力となります。

私自身も、インデックス投資を主力としていながらも、リスクを負える範囲で一部アクティブな投資もやっていますし、完全に自分の努力やスキルを信じていないわけではありません。

考えなしに楽観的な高パフォーマンスを夢見ることは到底オススメできませんが、臆病な気持ちがありながらも、リスクと同居しながらチャレンジの気持ちで自らを変えていくことは決して悪いものではないと思います。

参考記事

インデックス投資で注意しなければならないのは、やはり「どうやって “長期投資” を維持するか」です。そうした中では、インデックスといえども急速に価格下落する経済ショックへの向き合い方について、自分の許容範囲を慎重に見定めておく必要があります。

そのほか、具体的なインデックス投資の商品については米国株インデックスや世界株インデックスについて比較しています。

いずれも大部分を米国株が占めていますが、米国株優位がどこまで続くのかはこれからも注視する必要がありますね。