ライフプランで考える、持ち家 vs 賃貸の話

お金のことにあまり詳しくない人でも、ほとんどの人が考えるであろう家の話。
持ち家最強!」「賃貸最強!」どちらのパターンも耳にしますが、どちらの主張も認めた場合、どちらが勝つのでしょうか?

持ち家の話

持ち家の強みとは?

まずは持ち家派の視点で考えてみましょう。持ち家派の主張は概ね以下のようなものです。

  • 資産になる
  • ローン返済と家賃が同額なら、持ち家のほうが良い設備にできる
  • ローン完済後はタダで住み続けられる

要するに「金銭的にメリットがある」という主張です。
「所有欲を満たせる」と言われるとどうしようもありませんが、金銭的メリットであれば計算できるので計算してみましょう。

金銭的メリットを調べよう

似たような話を別の記事でもしていたので、同じデータで見方を変えてみます。
持ち家 vs 賃貸の構図を明確にするため、以下のように揃えます。

  • 住居タイプ
    • 3LDKマンション
    • 70㎡程度
  • 立地
    • 埼玉県さいたま市
    • 駅徒歩10分以内
  • 築年数
    • 新築
  • ローン条件
    • 35年金利固定1.0%

そうしたとき、持ち家と賃貸ではそれぞれ以下のような状況になります。

持ち家賃貸
物件名 ブリリア北浦和 グランカーサ北浦和
最寄北浦和駅徒歩4分北浦和駅徒歩6分
間取り3LDK3LDK
広さ70.19㎡70.25㎡
価格5,568万円
家賃19.3万円
管理費等20,000円
(管理費・修繕積立金)
10,000円
(管理費)
その他コスト固定資産税(年20万円)
住宅保険(年3万円)
換算家賃196,342円(ローン完済まで)
36,666円(ローン完済後)
203,000円

単純にローン返済額だけだとかなり安く見えますが、固定資産税や住宅保険なんかを追加していくと、そこまで圧倒的に安いわけではないことがわかります。
しかし、持ち家派最大の武器である「完済後はタダで住める」ことがありますので、35年後を含めて累計60年をみてみましょう。

このとき、少し注意していただきたいのは、この計算をする際に賃貸の家賃下落率が考慮されていないケースがありますので、念のため家賃下落を考慮しないパターンも書いておきました。

持ち家賃貸(家賃下落なし)賃貸(家賃下落あり)
35年まで20万円 20万円20万円 × (100-築年数*1)%
35年から4万円 20万円20万円 × (100-築年数*1)%
60年総額9,600万円14,400万円10,152万円
35年平均22.85万円20万円24.17万円

このように、家賃下落をしないパターンであれば5000万円近い差が出てしまうため、圧倒的に持ち家が有利に見えますが、家賃下落を考慮するとおよそ500万円程度しか差にならないことがわかります。

35年後の資産価値と家賃はいくら?

先ほどの計算では、家賃下落率を1年あたり1%としていますが、実際に築30年あたりの物件を探すとこのようなものが見つかります。

持ち家賃貸
物件名コスモ浦和常磐メゾン・ド・グリュー桜
33年31年
最寄り北浦和駅徒歩6分北浦和駅徒歩8分
間取り3LDK3LDK
広さ73.82㎡77.88㎡
価格3,490万円
家賃13.0万円
管理費25,000円
(管理費・修繕積立金)
12,000円

20万円を年1%で減らしていくと、35年目には13万円になりますから、年1%の試算はそこまで外れていないことがわかります。ちなみにこれは持ち家側でも同様のことが起きており、5500万円で買った家は35年後に3500万円になっているくらいであることがわかります。

金銭的メリットはどれほど?

これまでの計算を踏まえると、60年間累計では次のようなことが言えます。

持ち家賃貸(家賃下落あり)
35年まで20万円20万円 × (100-築年数*1)%
35年から4万円20万円 × (100-築年数*1)%
60年総額9,600万円10,152万円
60年資産2,200万円0万円
実質住宅資金7,400万円10,152万円

この差額約2500万円のことを指して、持ち家派は「金銭的メリットがある」ことを持ち家のメリットとしているわけです。

賃貸の話

それでは次に賃貸派の視点で考えてみましょう。

  • 容易に引っ越しができる
  • 災害時の被害が少ない
  • 固定資産税や修繕積立金を払わなくてよい

というような主張が賃貸派の意見です。
持ち家派の主張を聞いたここですぐ気付くのは、3点目の主張は金銭的メリットを言っている話なので、実は間違いであることがわかります。

このことを考えると、賃貸派のメリットは引っ越し災害の2点ということになります。これらが結局何を言っているのか掘り下げると、

  • 引っ越し
    • 近隣トラブルのリスクを回避できる
    • ライフステージに合わせた最適な住居が選べる
      • 子の成長に合わせた住居選択(部屋数の増減)
      • 自身の老後を田舎で暮らすことができる
  • 災害
    • 風水害や火災、地震に対する災害リスクを負わなくてよい

ということで、リスクコントロールの観点が大きいことがわかります。
こうしたリスクを抑えるため、持ち家のもつ金銭的にメリットに目を瞑るということを考えると、やっていること自体は保険をお金で買っているようなものと思うことができます。もちろん、災害リスクに対してはそのまま地震保険や火災保険がありますから、持ち家であってもリスク対応は可能です。
が、近隣トラブルの回避ライフステージに合わせた柔軟な住居選択は、まさに賃貸ならではの特権であると考えることができます。

何が分かれ目なのか?

改めて、持ち家と賃貸の強みを整理すると

  • 持ち家
    • 同じ家に住み続ける場合の金銭的メリットが大きい
  • 賃貸
    • 家に住むことのリスクを抑え、選択の自由を得ることができる

ということになります。
このことを踏まえると、持ち家に向く人、賃貸に向く人はそれぞれ次のような人だと言うことができます。

  • 持ち家に向く人
    • 同じ家に住み続けると決めている人
  • 賃貸に向く人
    • 引っ越しの選択肢を残しておきたい人
    • どこかのタイミングで引っ越すことを決めている人

このように、引っ越しに対する考え方が鍵になりますが、より細かく見ていくと考えるべきケースがあるので、それらにも触れておきます。

持ち家を売って引っ越すケース

持ち家にメリットがあり、賃貸にメリットがあるとなれば、自然とハイブリッド案を考えたくなります。要するに持ち家→賃貸のパターンです。
確かに、持ち家でローンを抱えると言っても、資産である物件そのものがあるため、売ることができます。売ることができれば問題ないですが、売ることに関してリスクがありますので、そのリスクとのトレードオフになります。

  • そもそも売れるかどうか
    • 戸建てはマンションに比べて格段に売れにくい
    • マンションだとしても、単身向けマンションに比べ、家族向けマンションは売れにくい傾向にある
  • 納得できる価格で売れるかどうか
    • 極論、値段を下げれば売れるが、その価格で納得できるかは別の話

売却時のリスクを許容できるのであれば、金銭的メリットリスク抑制&自由選択のメリットを同時の選ぶことができると言えます。

ちなみに、考えればわかりますが賃貸→持ち家のハイブリッド案は持ち家の金銭的メリットをどこまで薄めるかどうかの話になります。試算だと60年2500万程度の金銭的メリットを見込みましたが、おおよそ30年程度が持ち家メリットが出るかどうかの目安になるでしょう。

建て替えまたはリフォームするケース

持ち家には金銭的メリットがあると書いてきましたが、それも実は落とし穴があります。
先ほどの試算においては「60年間同じ家に住み続ける」ことをしれっと前提に置きましたが、この前提は本当に現実的でしょうか?
確かに、物件の売り文句として「100年住み続けられる家」なんてものがあったりしますが、究極的には自分の感覚次第です。理論上、骨格はそれだけ耐用するのかもしれませんが、中の設備などを考えるとなかなか難しいケースが多いでしょう。

そうしたことを踏まえると、建て替えリフォームが必要になります。最近では、築30年程度の老後を迎えるタイミングでそうするケースが多いようですね。

この悩みを持つのは概ね戸建てのパターンで、費用としては建て替えなら建物代がそのまま、躯体等を利用するリフォームでは建て替えのおよそ半額で住むくらいが相場だと言われます。
ではマンションの場合はどうかと言われると、こちらはリフォーム同様に躯体に手をつけません。相場としては1㎡あたり15-20万円と言われ、例示してきたような70㎡程度のマンションであれば、1000-1500万円が相場であることがわかります。
持ち家マンションの試算では、金銭的メリットが2500万円ほど見込めましたが、このリフォームを行えば、その金銭的メリットが1000万円強に圧縮されてしまうことになります。このあたりも落とし穴の1つですね。

まとめ

それぞれ見てきたように、持ち家と賃貸にはそれぞれ強みがあり、それ自体は間違ったことではありません。
ただ、それらの強みを得ることが、それぞれ相反するような性質を持っているため、結局はどちらを選びたいのかという価値観の問題であると言えます。

向いている人強み弱み
持ち家その家に30年以上住み続けられる人ローン完済後の住居費がほとんどかからない災害時のリスクが大きい(保険で緩和可能)
賃貸その家に30年以上住み続けない人ライフステージに合った住居選択ができる
災害時のリスクが小さい
同じ家に住み続ける場合の金銭的負担が大きい

端的に言ってしまえば、60年先までの人生を決めてしまうことで、2500万円などの規模で金銭的メリットが得られるわけですが、果たしてそれがあなたの価値観からどう判断されるか、というようなことです。
ある人にとっては、その程度で2500万円もらえるのかと言うでしょうし、またある人はそこまで制約を受け入れても2500万円かと思うかもしれません。

加えて、金銭的メリットを得られない賃貸の方には様々なリスクを回避できる「安心」という付加価値があります。安心それ自体には何の金銭的メリットもありませんが、宝くじと同様に、当たれば大きい話であると考えることができます。そういう観点では、

  • 持ち家
    • 「どうしても引っ越さないといけない」くじを引いてしまうと、ハズレ
    • それ以外のケースはアタリ
  • 賃貸
    • 「災害の被害に遭う」くじを引いてしまうと、アタリ
    • それ以外のケースは掛け捨て保険と同じ

のようなものだと思うことができます。なかなか面白い対比ですね。

持ち家 vs 賃貸の話は、 公平な議論にするために擦り合わせなければならない前提が非常に多いことから議論を尽くすことが難しく、また自分ごととしては一生に何度もある問いかけではないため、不慣れな状態で考えることを強いられてしまいます。
そういう難しさはあるにせよ、1つ1つ自分の価値観に照らし合わせれば、納得の行く選択をすることは可能だと思いますので、先入観を持ちすぎず、それぞれの価値を大事にしながらぜひ考えてみてください。