米国株式インデックスファンドを比較しよう(楽天VTI/SBI VOO/Slim S&P500ほか)

私は現在投資信託の積み立て投資を主力としていますが、中でも最も多くの金額を割り振っているのが米国株式インデックスを対象とする楽天・全米株式インデックス・ファンド(通称:楽天VTI)です。

楽天VTIはいいファンドだと思っていますが、最近は他からも魅力的なファンドがいくつか出てきていますので、健康診断のつもりで米国株式インデックスファンドを比較してみます。

主な米国株式インデックスファンド

今回比較対象とする米国株式インデックスファンドですが、以下の

  • 楽天・全米株式インデックス・ファンド
  • SBI・バンガード・S&P500
  • eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
  • iFree S&P500インデックス

4ファンドとします。
これらは全てつみたてNISAの対象となっていますので、どれも投資家目線で一定程度良心的なファンドだと思っていいでしょう。

他にも米国株式インデックスを対象とするインデックスファンドはいくつかあるようですが、純資産総額をみるとこの4ファンドがメジャーどころのようなので比較除外としています。

ちなみに純資産総額の並びだけだとiFree S&P500インデックスも除外でいい気がしますが、こいつが国内で初めてS&P500を対象としたインデックスファンドのようですのでその観点で少しひいき目に残します。

というわけでつみたてNISA対象の米国株式インデックスファンドを設定日と純資産総額でまとめるとこうなります。

ファンド名信託報酬設定日純資産総額(2021/05/31)
iFree S&P500インデックス0.2475%2017/08/31264億円
米国株式インデックス・ファンド0.4950%2017/09/2989億円
楽天・全米株式インデックス・ファンド0.1320%2017/09/292,741億円
農林中金<パートナーズ>つみたてNISA米国株式 S&P5000.4950%2017/12/1915億円
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)0.0968%2018/07/034,384億円
SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド0.0638%2019/09/262,120億円
NZAM・ベータ S&P5000.2640%2020/02/130.6億円
つみたて米国株式(S&P500)0.2200%2020/03/064億円

これらをグラフにするとこのようになります。eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)が圧倒的なほか、上位3つ以外の存在感がほぼないことがわかります。

各ファンドの純資産総額比較

iFree S&P500インデックス以降、日本でも選択肢が増えてきた米国株式インデックスファンドですが、こうしてみるとかなり明暗分かれている感じがしますね。

スポンサーリンク

各ファンドの比較

それでは本論としてファンドを比較を行っていきます。

  • ファンド構成
  • ファンド手数料
  • ファンド実績

あたりで見てみましょう。

ファンド構成

では4ファンドについて一応その作りを比較しておきましょう。

ファンド名ベンチマーク構成方法投資対象通称
楽天・全米株式インデックス・ファンドCRSP US Total Market IndexファミリーファンドVTI楽天VTI
SBI・バンガード・S&P500S&P500ファミリーファンドVOOSBI VOO
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)S&P500ファミリーファンド米国株式Slim米国株式
iFree S&P500インデックスS&P500ファミリーファンド米国株式iFree S&P500

各ファンド、ファミリーファンド方式であることに変わりはないのですが、それぞれのマザーファンドが買い付ける対象が異なっています。

前者の楽天VTIとSBI VOOは通称でそう呼ばれている通り、投資家から集めたお金でひたすら米国ETFであるVTIやVOOを買い付けています。
ある程度まとまった資金で積立ができるなら自分で米国ETFを買い付けてもいいんですが、毎月1万円とかの少額である場合には単元未満となってしまうため、こうやって投資信託として買える便利さがありますね。

楽天・全米株式インデックス・ファンド 交付目論見書より(楽天証券)

一方で、後者のSlim S&P500やiFree S&P500は、集めたお金でS&P500の構成に沿うように自前で各米国株式を買い付け、S&P500に連動するマザーファンドを構成しています。
現物株式には信託報酬がかからないため、維持経費のかかるETFを買い付けるよりも原理的には運用者にコストメリットがあります。
しかし、VTIやVOOというバンガードETFはひたすら低コストを目指しており、現時点でも経費率0.03%という超低水準で推移しているため、これ以下のコストでマザーファンドを組成できるのかというのがコスト上のポイントになります。

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) 交付目論見書 より(三菱UFJ国際投信)

ファンド手数料

よく話題に上がりますので特に言及しなくてもいいのかもしれませんが、手数料の比較を行っておきます。
手数料においては、交付目論見書から確認できる信託報酬の他、決算時に判明する実質コスト、及び先ほど調べた投資対象からくるコストの3つを調べてみます。

ファンド名信託報酬実質コスト投資対象コスト総コスト
楽天・全米株式インデックス・ファンド0.1320%0.191%0.03%0.194%
SBI・バンガード・S&P5000.0638%0.08%0.03%0.11%
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)0.0968%0.163%なし0.163%
iFree S&P500インデックス0.2475%0.27%なし0.27%

見て分かる通り、SBI VOOのコストが圧倒的に低く抑えられています。
もちろん、大本の信託報酬が低いのはありますが、実質コストとの差分を見てもいかに低コストな運用をしているかがわかります。

さらに、SBI VOOはまだファンド立ち上げから1期目ですので、今後どのようなコスト推移をするかにも注目です。
一般に、ファンドの立ち上げ当初は規模の小ささなどから実質コストが大きく出る傾向があります。加えて初年度は365日に満たない運用期間となる一方で、実質コストは年率で出るため素直に受け取りづらい点にも注意が必要です。

上記の中で設定後2期が経過している楽天VTIとiFree S&P500の実質コストをみていると、実際に下がっていく様子がわかりますね。

ファンド名決算期2018年2019年2020年
楽天・全米株式インデックス・ファンド7月0.207%0.191%???
SBI・バンガード・S&P5009月0.11%
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)4月0.203%0.163%
iFree S&P500インデックス9月0.380%0.295%0.27%

決算期がずれているので正確に同じタイミングで比較することはできませんが、見かけ上の信託報酬とは別に、楽天VTIも十分健闘しているんじゃないでしょうか。

ファンド実績

最後にファンド実績をみてみましょう。

ファンド名純資産総額設定日運用月数平均積立額
楽天・全米株式インデックス・ファンド2,741億円2017/09/274462.30億円
SBI・バンガード・S&P5002,120億円2019/09/2620106.00億円
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)4,384億円2018/07/0335125.26億円
iFree S&P500インデックス264億円2017/08/31455.87億円

単純な計算として、現時点での純資産総額を設定日からの経過月数で割ってみました。
やはり信託報酬0.1%切りを引っさげて登場したSBI VOOと、それに追従したSlim S&P500が強いですね。

純資産総額のグラフは冒頭に示した通りですが、運用月数を加味した平均積立額を見るとまた違ったことが見えてきます。

各ファンドの純資産総額と平均積立額

Slim S&P500が純資産総額、平均積立額ともにトップである一方で、楽天VTIは平均積立額でSBI VOOに負けています。純資産総額ではまだ600億円ほど差がありますが、同じペースだとすればあと10ヶ月くらいで追い抜かれる計算です。

私はこれらの登場後も楽天VTIへの投資を継続していますが、主な理由としては実質コストで大きく差がついていないことと、対象ベンチマークとして大型株500銘柄のS&P500よりも、中小型株を含む約3500銘柄のUSトータルマーケットほうが好みということがあります。
ただ、iFree S&P500のようなS&P500のファンドへ投資していたとしたら、Slim S&P500出た時点で乗り換えていたと思うので、ここ数年の競争が激しいところですね。

各ファンドの選択ポイント

ここまで見てくると、iFree S&P500は選択肢に残らないと思いますが、

  • 楽天・全米株式インデックス・ファンド
  • SBI・バンガード・S&P500
  • eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)

の3ファンドは検討の余地がありそうです。
だとしたとき、結局どれを選ぶかのポイントはどのように考えたらいいのでしょうか。

ベンチマークで選ぶ

1つ目は各ファンドがベンチマークとしている指数で選ぶ観点です。

冒頭でもまとめたように、楽天VTIは3500銘柄からなるCRSP US Total Market Indexを対象としていますが、SBI VOOとSlim S&P500は500銘柄からなるS&P500を対象とします。

このどちらを好感するかということになりますが、投資リスクを抑える場合によく言われる分散投資の観点から「銘柄数が多いほうがよいか」という話ではなく、「中小型株を含むポートフォリオのほうがよいか」だと思っています。

株の大小とパフォーマンスの関係は、「株式投資」や「株式投資の未来」で有名なジェレミー・シーゲルが、過去データの分析をもとに中小型株を含むポートフォリオのパフォーマンスが優れるという結果を示しています。

しかし、そうした歴史的な結果によらず、近年では結局市場パフォーマンスを牽引するのがGAFAに代表されるような、時価総額で世界の頂点に立つ企業だったりしますので、大型株で構成されるS&P500や、さらにハイテク大型株中心のNASDAQに投資するほうがパフォーマンスには優れるのかもしれないですね。

特に、コロナショックを受けて市場全体がまだ値を戻していない中、GAFAやNASDAQは史上最高値を更新していますので、超大型株が最もパフォーマンスがよいというここ半年の動きを踏まえ、今一度考える余地があるのかもしれません。

コストで選ぶ

長期積立投資を行う以上、その維持にかかるコストは極力抑えたいと考えます。
0.1%を切る水準だとか言っていること自体は、単年で見ると大した差はないのですが、投資の世界ではその差が複利で聞いてきますので、十分注意しなくてはなりません。

例えば、米国株式インデックスの長期リターンを仮に5%と置いたとき、積立投資においてコスト差が30年でどの程度つくのかをみてみましょう。

月積立額積立元本
(30年総額)
リターン4.9%
(コスト0.1%)
リターン4.8%
(コスト0.2%)
リターン4.5%
(コスト0.5%)
1万円360万円783万円
(+423万円)
770万円
(+410万円)
732万円
(+372万円)
3万円1,080万円2,351万円
(+1,271万円)
2,311万円
(+1,231万円)
2,196万円
(+1116万円)
5万円1,800万円3,918万円
(+2,118万円)
3,852万円
(+2,052万円)
3,660万円
(+1860万円)

机上の空論ではありますが、月5万円積み立てるケースだとコスト0.1%とコスト0.5%の間では約250万円ほどの違いがあります。老後の手元に250万円あるかどうかが、現在のファンド選びに左右されるということですね。

実際に、S&P500のインデックスファンドでも、信託報酬0.495%というのがいくつかありましたので、「S&P500であれば大丈夫!」と思わず、もう一歩厳選するのがよいでしょう。

コストは安いに越したことはありませんが、一般に投資信託の変更ではスイッチングが効かないため、わずかなコスト差に囚われすぎて売買を繰り返すのも考えものです。
実際、見かけ上の信託報酬水準としてはSBI VOOが強いところですが、まだ1期目で実質コストが判明していないこと、後にSlim米国株式が信託報酬を引き下げて同程度の水準にしたことから、今のところS&P500投資信託としては人気を二分する形になっていますね。

スポンサーリンク

まとめ

日本で米国株式インデックスファンドに投資したいと思う場合、今回の比較でも分かる通り、

  • 楽天・全米株式インデックス・ファンド
  • SBI・バンガード・S&P500
  • eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)

のいずれかが選択肢になることがわかりました。
(まぁ、各証券会社の売れ行きを見ていれば済む話ではあったのですが…)

長期投資を行うために、そこまで頻繁にチェックする必要はありませんが、長く資産を預けるだけに、定期的な健康診断はしておいて損はないと思います。

決算期のことを考えると、SBI VOOの運用報告書が出るであろう12月ごろにチェックするのがよさそうですね。
第1期の報告内容は気になるところですので、また12月に調べてみたいと思います。

スポンサーリンク

参考書籍

本文中でも紹介したシーゲル本です。他にも何冊かありますが、シーゲル本としてはここから入ってみるとよいでしょう。

本文中では触れていませんが、米国株ブロガーとして有名なたぱそうさんの本です。単純なリターン良し悪しではなく、ポートフォリオ全体として何を大事にするかというスタンスの面で私も大変勉強させてもらいました。

参考記事

その他、当ブログにおける参考記事です。

今回は米国株式インデックスの商品に限った比較を行っていますが、そもそも米国という投資先がよいのかという点については以下の記事で考えています。

米国以外であれば最近は全世界のインデックスファンドにも注目が集まっていますね。

スポンサーリンク