なにかの時に使いたいお金の近似計算

複利計算を主とするお金の計算は、細かいべき乗が必要となるためきちんと計算するのが大変です。

そんな大変なお金の計算にも、72の法則に代表される近似計算の方法がいくつかありますので調べてみたいと思います。

複利運用の計算

それでは最初に、ある元本に対して一定の運用利率で複利運用するケースに使える近似計算を紹介します。

72の法則

まず紹介するのは、お金の近似計算で最も有名だと思われる72の法則です。

複利運用を行う際、この72の法則を使って「その利率で元本が2倍になるまでの期間」を近似的に計算することができます。

$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} c := 運用利率(\%) \\ d_2 := 元本が2倍となる運用期間(年) \\ \\ d_2 \approx \cfrac{72}{c} \end{array} \right. \end{eqnarray} $$

どれくらいの精度なのか、正確な値と比べてみるとこうなります。

72の法則正確な値誤差
1%72.0年69.7年+3.36%
2%36.0年35.0年+2.85%
3%24.0年23.4年+2.35%
4%18.0年17.7年+1.85%
5%14.4年14.2年+1.36%
6%12.0年11.9年+0.88%
7%10.3年10.2年+0.40%
8%9.0年9.0年-0.07%
9%8.0年8.0年-0.54%
10%7.2年7.3年-1.00%

年利8%がほぼ正確な値を出していますが、このあたりを中心によく近似されています。
1%のところは少し誤差が大きいですね。

114の法則

72の法則と考え方はほぼ同じですが、「元本が3倍になるまでの期間」を近似計算する114の法則もあります。

$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} c := 運用利率(\%) \\ d_3 := 元本が3倍となる運用期間(年) \\ \\ d_3 \approx \cfrac{114}{c} \end{array} \right. \end{eqnarray} $$

こちらも正確な値と比べてみましょう。

114の法則正確な値誤差
1%114.0年110.4年+3.25%
2%57.0年55.5年+2.74%
3%38.0年37.2年+2.24%
4%28.5年28.0年+1.75%
5%22.8年22.5年+1.26%
6%19.0年18.9年+0.77%
7%16.3年16.2年+0.30%
8%14.3年14.3年-0.17%
9%12.7年12.7年-0.64%
10%11.4年11.5年-1.10%

こちらも8%付近で最もよく近似できるようになっています。

参考: 115の法則

114の法則と同じく、3倍となる期間を近似計算をするものとして、114ではなく115を採用する、115の法則が紹介されることがあります。

115が間違いかというとそんなことはなく、あくまで近似の中心をどこに置くかという話なので、112~116くらいまではそれなりによい近似になります。

最良近似誤差
111の法則2%+0.04%
112の法則4%-0.04%
113の法則6%-0.11%
114の法則8%-0.17%
115の法則9%-0.23%

このうち、一般的に114の法則が採用されるのは72の法則と同じく、最良の近似が運用利率8%で得られることと、割り算を使う実用上、含まれる素因数が扱いやすいというところにあるかと思います。

実際、111から115までの素因数を調べてみると、

$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 111 = 3 \times 37 \\ 112 = 2^4 \times 7 \\ 113 = 113 \\ 114 = 2 \times 3 \times 19 \\ 115 = 5 \times 23 \\ \end{array} \right. \end{eqnarray} $$

というように、この中では112か114が使いやすそうです。素数である113はさすがに割られる数とするには使いづらそうですね。

112を選んだところで、最良近似が4%にあるという点で、実用上は概ね問題ありませんが、2と3を素因数に含む114のほうが少し使いやすそうかなという気はします。

ちなみに、72の法則も含まれる素因数が使いやすいという観点で、計算上の最良近似である69ではなく72が選ばれていると言われています。

144の法則~

さて、この流れであれば何がくるかわかるかと思いますが、次の144の法則は「元本が4倍になるまでの期間」を近似計算できます。

が、実はこの144の法則は覚える価値があまりありません。

144というのは72のちょうど2倍になっていますが、これは「元本を2倍にする72の法則」と、「元本を4倍にする144の法則」の関係によります。

なので、実際に計算してみると、

144の法則(4倍期間)72の法則(2倍期間)比率
1%144.0年72.0年2.0倍
2%72.0年36.0年2.0倍
3%48.0年24.0年2.0倍
4%36.0年18.0年2.0倍
5%28.8年14.4年2.0倍
6%24.0年12.0年2.0倍
7%20.6年10.3年2.0倍
8%18.0年9.0年2.0倍
9%16.0年8.0年2.0倍
10%14.4年7.2年2.0倍

という関係ですね。

なので、現実的には144の法則を使うことなく「72の法則を計算し、それを2倍する」ことで事足りてしまうので、特に別の法則として覚えなくてよいということです。

さらに、これと同様に、既に覚えた72の法則と114の法則を使うと、○倍になる期間の多くが計算できてしまいます。

計算期間素因数計算方法
2倍2(72の法則)
3倍3(114の法則)
4倍2×2(72の法則)+(72の法則)
5倍5(166の法則)
6倍2×3(72の法則)+(144の法則)
7倍7(200の法則)
8倍2×2×2(72の法則)+(72の法則)+(72の法則)
9倍3×3(144の法則)+(144の法則)
10倍2×5(72の法則)+(166の法則)

2と3の素因数だけでは作れない5 / 7倍については、計算すると166とか200という数字が出てきますので、一応はこれで近似を行うことが可能です。

が、特段「7倍までの期間を計算したい!」と思うことはないと思いますので、やはり72と114を覚えておけば十分だと思われます。

複利積立の計算

現実に投資を行っていく場合、一定の元本を複利で運用し続けるより、元本を積み立てながら複利で運用していくほうが一般的でしょう。

そうしたとき、先ほど紹介した72の法則などでは現実的には使いづらかったりするので、複利積立の近似計算を紹介します。

130の法則

結局同じような話になってしまいますが、こちらは「運用益を含めた資産総額が積立元本の2倍になるまでの期間」を計算します。

$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} c := 運用利率(\%) \\ D_2 := 資産総額が積立元本の2倍となる運用期間(年) \\ \\ D_2 \approx \cfrac{130}{c} \end{array} \right. \end{eqnarray} $$

やっぱり同じような形をしていますが、これで近似ができます。

130の法則正確な値誤差
1%130.0年127.1年+2.28%
2%65.0年64.3年+1.12%
3%43.3年43.3年-0.01%
4%32.5年32.9年-1.11%
5%26.0年26.6年-2.19%
6%21.7年22.4年-3.25%
7%18.6年19.4年-4.28%
8%16.3年17.2年-5.29%
9%14.4年15.4年-6.28%
10%13.0年14.0年-7.24%

さすがに72の法則に比べて誤差は大きいですが、よく近似できていると思います。130で近似すると3%のところが最良近似となります。

本来、この複利積立の計算を真面目にやろうとすると、以下のような方程式を期間 d について解くことになります。

$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} c := 運用利率(\%) \\ d := 運用期間(年) \\ \\ (1+c)^d – 1 = 2cd \end{array} \right. \end{eqnarray} $$

複利運用の計算であれば、高校数学の範囲でアプローチすることができますが、こちらの内容は大学数学の範囲になるので太刀打ちできません。
じゃあ上の正確な値はどうやって計算したんだということになりますが、それは WolframAlpha の力を使って強引に解いてもらいました。

一応どうして130を割ることが近似になるのかということについては、以下のサイトで解説されています。

大雑把に言えば、テイラー展開とその高次の項を無視することによって近似解を得るアプローチですね。

ローン返済の計算

お金の計算で複利計算同様に身近なのはローン計算でしょう。

例えば、「3600万円を金利1%、期間30年で借りたら月々の支払いはいくらか」という計算は、住宅ローンを組んだりする時に欠かせない計算です。

あまり知られてはいませんが、これも近似計算が可能です。

$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} M := 借入元金(万円) \\ r := 借入利率(\%) \\ n := 借入期間(年) \\ m := 月々の返済額(万円) \\ \\ m \approx \cfrac{M}{n \times 12} \times ( 1 + \cfrac{n}{2} \times \cfrac{r}{100} ) \end{array} \right. \end{eqnarray} $$

ちょっとややこしいですね。実際に使ってみましょう。
計算対象として先ほどの、「3600万円を金利1%、期間30年」を当てはめて計算してみると、

$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} M := 借入元金(万円) = 3000 \\ r := 借入利率(\%) = 1 \\ n := 借入期間(年)= 35 \\ m := 月々の返済額(万円) \\ \\ m \approx \cfrac{3600}{30 \times 12} \times ( 1 + \cfrac{30}{2} \times \cfrac{1}{100} ) = 11.5 \end{array} \right. \end{eqnarray} $$

ということになります。

要するに、元金の3600万円を返済期間(360ヶ月)で割った月10万円の支払いに、15%(1%×30÷2)だけ上乗せしたのが月々のローン返済額ということです。

実際これはどれくらいの精度になるのでしょうか。
他の利率でも計算してみましょう。

借入利率近似値正確な値誤差
0.50%¥107,500¥107,708-0.19%
1.00%¥115,000¥115,790-0.68%
1.50%¥122,500¥124,243-1.40%
2.00%¥130,000¥133,063-2.30%
2.50%¥137,500¥142,244-3.33%
3.00%¥145,000¥151,777-4.47%

誤差の動き方を見ると分かるように、こちらの最良近似は金利0%の場合です。
ですので、金利が大きくなればなるほど誤差が大きくなり、2%を超えたあたりからちょっと苦しいかなという気はします。

しかし一方で、現在の住宅ローン金利は変動金利で0.5%を割り込み、35年固定でも1.3%程度の超低金利自体ですので、住宅ローン用途だと思えば実用上は問題ないでしょう。

まとめ

今回は72の法則に代表されるお金の近似計算について調べてみました。

住宅ローンの近似計算は今回始めて知りましたが、実際に計算してみると住宅ローンに対する実用としては十分な精度だと思ったので、72の法則同様に便利に使えそうな気がします。

もちろん、きちんと計算するときは近似に頼らずきちんと計算しますが、こうやって速算する方法を覚えておけば、感覚的に難しい計算の結果を感じることができるので、金銭感覚を養うことに一役買うのではないでしょうか。

他にも便利そうな近似計算があれば、このページに追記していきたいと思います。