ポイント投資サービスを考えてみよう

投資に注目が集まっている昨今、ポイント大手が相次いでポイント投資サービスをリリースしています。
これらのサービスにおいても、それぞれ微妙に特徴がありますので、そのあたりを整理してみたいと思います。

はじめに

最初に断っておきますが、ポイント投資サービス自体は、ポイントサービスのおまけでしかありません。
この記事の中で、メジャーなポイント投資サービスについて比較していきますが、仮にどれかが優位だったとしても、それを理由にポイント基盤ごと引っ越すほどのことではないため、「ポイント投資の仕組みってそういうものなんだ」という程度の目でご覧ください。

そもそもどのポイントを使ったらよいか悩んでいるという場合は、こちらの記事でクレジットカード選びと一緒にどうぞ。

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ポイント投資サービスとは?

ポイント投資サービスとは、ドコモのdポイントで行うの dポイント投資 や楽天の楽天スーパーポイントで行う 楽天ポイント投資 など、ポイントを使って株や投資信託を売買できるサービスを指します。
これまで各種ポイントというものは、おおよそ100円につき1ポイントもらえ、それらを1ポイント1円で使えるようなものがほとんどで、そうした状況が1989年に初めて近代的なポイント制度をヨドバシカメラが始めて以来、30年近く続いていました。

そうしたポイントの利用方法に、NISAやiDeCoなどで着実に注目が集まっている投資が2019年頃から本格的に加わり始めました。代表的なポイントに対して、以下のようなポイント投資サービスがあります。

投資サービス名利用ポイントサービスタイプ取り扱い商品
dポイント投資dポイント運用独自ファンド
日興フロッギーdポイント投資国内株式
楽天ポイント投資楽天スーパーポイント投資国内株式
投資信託
楽天ポイント運用楽天スーパーポイント運用独自ファンド
ネオモバTポイント投資国内株式
Pontaポイント運用Pontaポイント投資国内株式(一部)

4大ポイントとして名高い dポイント / 楽天スーパーポイント / Tポイント / Pontaポイント のそれぞれにポイント投資サービスがあります。
他にも、LINEポイントを用いた LINEスマート投資 やANAマイルを用いた マイルで投資 がありますが、日本のポイント業界は表に挙げた4大ポイントへ収束しつつあるため、これらについて知っておけば問題ないでしょう。

各サービスの特徴として、利用できるポイントの他に、サービスのタイプが「投資」と「運用」に大別されます。楽天のみ、投資と運用それぞれの投資サービスの両方を提供しているのが特徴です。
投資タイプのものは、一般的な証券会社でも購入できる株式や投資信託の購入をポイントで行うものです。そのため、投資タイプで手に入る投資商品は、通常の円決済で買うような投資商品と全く同じものです。
一方、運用タイプのものはそのサービス向けに作られた独自ファンドに対してポイントを充当するタイプのもので、サービス固有の投資商品を手に入れることになります。そのサービスの独自ファンドを手に入れるという点で、 WealthNaviTHEO などのロボアドサービスと非常によく似ています。

そうした意味で、投資タイプのものはポイントを原資としたネット証券サービス、運用タイプのものはポイントを原資としたロボアドサービスのようなものと考えればよいでしょう。

各サービスの比較

それでは4大ポイントに対応する各投資サービスを比較してみましょう。
投資タイプと運用タイプでずいぶん性格が違うので、サービスタイプごとに考えてみます。

投資タイプについて

投資タイプについては、4大ポイントの中では

の4サービスが分類されます。

この中ではdポイントの日興フロッギーが最後発ですが、今や4大ポイントそれぞれが投資タイプのサービスを展開しています。

売買対象について

まずは売買対象についての特徴です。

国内株式が売買できる日興フロッギーやネオモバに対し、国内株式に加えて楽天証券で売買可能な投資信託も売買できる楽天ポイント投資の違いがあります。
というのも、楽天ポイント投資と言っているものの、独立したサービスと言うよりは「楽天証券の決済代金として楽天スーパーポイントを利用できる」というものであるためです。

ちなみに、いきなりスルーしてしまいましたが、Pontaポイント運用は残念ながら5種類の株式、5種類のETF、1種類のREITという計11種類の非常に限られた商品しか売買できません。そうすると、楽天ポイント投資とネオモバに比べればPontaポイント運用は論外と言わざるを得ません。
公式サイトでは「今後も新しい銘柄を追加する予定です!ご期待ください!」とありますので、今後に期待しましょう…(遠い目)

楽天ポイント投資 vs ネオモバ

売買可能商品を考えると、投資信託まで含んでいる楽天ポイント投資が有利なように思えますが、ネオモバについては「国内株式を1株から売買可能」という強みがあります。
原則、株式には売買単位が定められており、ほとんどのケースで100株がその単位(単元)になっています。そのため、株価100円だったとしても、単元を考えると100株分の10,000円単位でしか売買できないわけです。
楽天ポイント投資の株式売買は単元単位での取引となるため、単元分に満たない場合は、足りない分を現金で足す必要があります。
一方、ネオモバでは先述の株を、100円で1株だけ購入することができます。ネオモバ自信が100株単位で市場から買付け、各ユーザに分けている格好ですね。

現金の足しにポイントを利用する」場合は楽天ポイント投資で何の問題もありませんが、「ポイントだけで投資したい」場合にはネオモバが向いていると言えます。

ネオモバ vs 日興フロッギー

「ポイントだけで投資したい」と思った場合により強力なのが日興フロッギーです。

ネオモバが1株単位で少額から投資できるといっても、最低限額面通りの金額が必要です。
一方で、日興フロッギーは株数に関係なく「最低100円から任意の金額で買付/売却可能」というサービスになっています。

ここまでの柔軟さを実現するため、注文受け付け時間などで制約がありますが、ポイントの有効活用という意味では最も柔軟に対応できます。
また、使いにくさに困る場合がある期間限定ポイントも日興フロッギーでは株式の購入に使えるので、手元にある全ポイント(端数を除く)を使い切ることが可能です。

株主優待や配当はどうなる?

ここで勘のいい方はネオモバや日興フロッギーについて「株主優待や配当は1株購入の場合どうなる?」と思われたかもしれません。

  • ネオモバ
    • 配当は株数に応じてそのまま、株主優待は単元未満でももらえるものが存在する
  • 日興フロッギー
    • 配当は株数に応じてそのまま、株主優待は単元化した場合のみもらえる

例えば100株で1000円の配当がある場合、1株では10円の配当がもらえます。こちらはどちらも同じです。

一方で、株主優待については違いがあります。結論から言えば株主優待はネオモバのほうが有利です。

株主優待は一般に100株以上、またはそれ以上の保有を条件にしていたりしますが、一部「全株主」を対象とするものがあり、これらはネオモバなら1株でも保有があれば優待をもらうことができます。いわゆる「単元未満株を対象とする株主優待」ですね。

単元未満株を対象とする株主優待について調べている方がいましたのでリンクをご紹介します。

ほとんどが「自社製品を優待価格で買える」「自社製品の割引券がもらえる」などのものです。唯一ジョーシンを運営する 上新電機 が買物優待券5,000円分(2,000円ごとに200円分利用可能)を1株から提供しており、破格の優待として有名です。2020年1月現在で約3,000円ほどの価格を推移しているため、1年で元が取れてしまいます。

一方で、そうした単元未満株を対象とする株主優待を日興フロッギーでは受け取ることはできません。
こちらは1株以下の株式売買を可能にするための措置かと思いますが、日興フロッギー上で株式を保有していたとしても、正確には「株主として登録されるのは日興フロッギー」であるためです。

日興フロッギーでは保有数が100株なりの単元に達した場合、単元の単位で通常口座に移管することができます。この単元化のタイミングで株主の名義がユーザ個人に変わるため、ここから株主優待を受け取ることができるようになるというわけです。

じゃあネオモバはどうなっていたのかというと、ネオモバは少額とはいえ1株単位できっちり取引しているため、それぞれの株主名義が取引時点でユーザ本人になります。
(なので、ネオモバは単元化していなくても株主向けの郵送物が届きます)

運用タイプについて

運用タイプについては、 4大ポイントの中では

の2サービスが分類されます。
Pontaポイント運用は投資タイプでしたが、こちらのdポイント投資は運用タイプです。ちょっとややこしいですね。

これらは一般の証券会社で売買可能な商品を取り扱っていた投資タイプとは異なり、専用に用意されたいくつかの商品にのみ投資ができるタイプです。
ただ、実際には何らかの投資信託に連動するものが多いので、少し詳しくみてみましょう。

dポイント投資

dポイント投資では、7種類の投資コースが選べます。

  • おまかせ運用
    • アクティブコース
    • バランスコース
  • テーマ運用
    • 日経225
    • 新興国
    • コミュニケーション
    • 生活必需品
    • ヘルスケア

これらはそれぞれ、以下の投資信託やETFに連動しているため、実質的にそれぞれの商品を一定の割合で購入していることと同じになります。

種類名前投資対象投資内容信託報酬
おまかせアクティブコース THEOグロースファンド(80%)
THEOインカムファンド(20%)
THEOの投資信託を通じて株式中心に投資。0.488%
バランスコースTHEOグロースファンド(45%)
THEOインカムファンド(55%)
THEOの投資信託を通じて株式と債券におよそ半々で投資。0.467%
テーマ日経225日経225連動型上場投資信託日経平均に投資。0.22%
新興国iシェアーズ・コア MSCI エマージング・マーケット ETF日本やアメリカなどの先進国を除く、中国やインドなどの株式に投資。0.48%
コミュニケーションiシェアーズ グローバル コミュニケーションサービス ETFネットコンテンツ企業や通信企業など、世界のコミュニケーション関連企業の株式に投資。0.46%
生活必需品iシェアーズ グローバル生活必需品 ETF飲料や小売業など、世界の生活必需品関連企業の株式に投資。0.46%
ヘルスケアiシェアーズ グローバル・ヘルスケア ETF医薬品の製造や販売など、世界のヘルスケア関連企業の株式に投資。0.46%

おまかせ運用は実質的にTHEOの投資信託を買っていることになりますが、元になる投資信託もバンガードなどのETFを組み合わせているファンド・オブ・ファンズです。
テーマ運用はそれぞれが単一のETFに連動するようになっており、こちらのほうが素直な運用ですね。ただ、「ETFの分配金が(実質的に)支払われない」という致命的な問題がありますので手を出さないほうが無難です。この問題について詳しく書かれている方がいましたのでそちらもご覧ください。

日本でもいよいよ信託報酬0.1%を切るものが登場し始めたところですが、その風潮を考えると信託報酬の高い投資対象が並んでいるように見えますね。加えて、dポイント投資としての手数料の上乗せがあるかは不明なため、実際にはさらに高い手数料の下でポイント投資をすることになっているかもしれません。
とはいえ、ETFやファンド・オブ・ファンズの仕組みをわかっていればなるほどといったところですが、細かいところを理解せずに投資を始められるのがポイント投資の強みとも言えます。

楽天ポイント運用

楽天ポイント運用では、2種類の投資コースが選べます。

  • アクティブコース
  • バランスコース

dポイント投資同様、以下の 投資信託やETFに連動します。

名前投資対象投資内容信託報酬
アクティブコース 楽天・バンガード・ファンド(バランス株式重視型)楽天の投資信託を通じて、世界の株式70% / 債券30%の比率で投資。0.132%
バランスコース 楽天・バンガード・ファンド(バランス債券重視型) 楽天の投資信託を通じて、世界の株式30% / 債券70%の比率で投資。0.132%

dポイント投資に比べると種類が少ない一方、投資対象の信託報酬は低めに抑えられていますね。いずれも楽天の投資信託を投資対象としていますが、さらにこの投資信託自体はバンガードのETFを投資対象としています。株式ETFは有名な VT ですね。
2択しかありませんが、アセットマネジメントの観点では非常に合理的な2種類に絞られているため、かえってこちらのほうがいいかもしれません。

dポイント投資 vs 楽天ポイント運用

この2つのサービスを比べる場合、差別化要素となるものの1つが投資対象のバリエーションですが、その観点ではdポイント投資が有利と言えるでしょう。
ただ、非常にドライに考えるのであれば楽天の商品は信託報酬の低さが期待できるため、合理的だと考えられます。

他にも、細かくはポイントの出し入れなどを含めると、以下のような違いになります。

dポイント投資 楽天ポイント運用
投資コース7種類2種類
信託報酬0.22 – 0.488%0.132%
注文締め当日14時 (おまかせコース + 日経225)
当日20時 (その他テーマ)
当日14時
運用開始当日18時(おまかせコース + 日経225)
翌営業日18時(その他テーマ)
翌営業日22時
追加100ポイント単位
1回99,900ポイントまで
100ポイント単位
1回30,000ポイント
(ダイヤモンド会員の場合は1回500,000ポイント)
引出1ポイントから
上限なし
1ポイントから
上限なし

投資コースの他には、注文の受け方に少しだけ違いがありますね。
この独特の時間差をもとに、先物価格の動きを見つつ、ポイントをいつ投入すべきか考えていらっしゃる方もいるようです。(テーマ運用の問題について書かれていた方です)

「どうせポイントだから」ということで遊びの要素を考えるのであれば、テーマ運用などもあるdポイントのほうが楽しいかもしれません。そうでないケースであれば、ポイント運用としては楽天ポイント運用のほうが合理的なな選択でしょう。
とはいえ、合理的なポイント運用に固執しない(楽しさ重視)場合、楽天ポイント投資側を使えば株式や投資信託をそのまま買えてしまうため、一周回ってよりエキサイティングにポイント投資が楽しめる点で、楽天ポイント投資/運用に軍配があがるでしょう。

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まとめ

ここまで見てきた内容をまとめます。

  • 全体
    • 各ポイントに対応するポイント投資サービスがある
    • 投資タイプ運用タイプがある
  • ポイント投資タイプ
    • 国内株式投資信託を直接購入できる
    • 楽天ポイント投資は国内株式と投資信託を購入できる
    • ネオモバは国内株式を1株から購入できる
    • 日興フロッギーは国内株式を100ポイントから購入できる
  • ポイント運用タイプ
    • 投資信託やETFに連動する商品を購入できる
    • dポイント投資はおまかせ型2種に加え、テーマ型5種を購入できる
      • ただしテーマ型は運用ルール上微妙
    • 楽天ポイント運用はおまかせ型2種のみ
      • 信託報酬が安く合理的

結局どのサービスが一番いいの?

冒頭でも述べたとおり、ポイント投資サービス自体はおまけのような存在であるため、自分にとって最適なポイントを選んだ時点で利用するポイント投資サービスも決まってしまいます。

しかし仮に、ポイント投資サービスの良し悪しのみでポイントを選べる場合、本人の価値観によって次のような選択になるでしょう。

  • ポイントに限らず積極的に投資を行っている人
    • 楽天ポイント投資でポイントを決済代金の足しにしつつ株式や投資信託を購入する
  • ポイントだけで株取引を試しにやってみたい人
    • ネオモバまたは日興フロッギーで小さく株式を購入する
  • ふんわりテーマを選んで投資してみたい人
    • dポイント投資で好きなテーマを購入する
      • 楽天ポイント投資でテーマ投資信託を購入してもよいですが、選択肢が多いのでおそらくこのタイプの人は何を選んだらいいかわからないでしょう
  • 何も考えずに手堅くポイント運用をしたい人
    • 楽天ポイント運用でアクティブまたはバランスコースを購入する

やはり投資を主眼に置く場合、楽天の強さは群を抜いています。
ポイント投資サービスだけでなく、保有残高に応じたポイント付与プログラムや、楽天カード決済時のポイント還元サービスなど、投資領域でのポイント還元も非常に活発ですが、このあたりはまた別途記事にするかもしれません。

ポイントの使い方としてそのまま商品を購入するのも良いですが、こういった投資サービスで遊んでみたりするのも悪くないかもしれません。

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