このブログでも何度か話題に出していますが、また今年もFund of the Year(FoY)の季節がやってきました。
これまでは単なる投信利用者として結果を見ているだけでしたが、ついに今年はブロガーとして投票にも参加することができました。
今回は参加要件であるエントリを兼ねて、FoYそのものについて書いてみたいと思います。
Contents
投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year
ではまず最初にイベントの概要に触れておきます。公式サイトをそのまま引用します。
「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2020」とは?
投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2020 より
投資信託について一般投資家の目線でつねに考え、情報を集め、ブログを書いている投信ブロガーたち。投資信託の事情通である彼ら彼女らが支持する投資信託はどれか?
証券会社の宣伝やうたい文句にまどわされず、自分たちにとって本当によいと思える投資信託を投信ブロガーたちが投票で選び、それを広めることで「自分たちの手でよりよい投資環境を作っていこう!」というイベントです。
まさにこの序文に書かれているように、本イベントの目的は「自分たちの手でよりよい投資環境を作っていく」ことにあります。
このFoYは公式ページを見るとわかるように、2007年に第1回が開催されており、今年で14回目を迎えるに至りました。
第1回といっても、このようにあくまでとあるブロガーの思い付き企画ということで、rennyさん含めた20名で始まったイベントでしかありません。
第2回も同様にrennyさんのブログで公表されていたところ、第3回の2009年からは現在の fundoftheyear.jp に移行して運営体制を強化しながら、年々存在感を増してきています。
そうしてブロガー界隈で存在感が増していくことと併せ、実際に商品企画を行っていく金融機関や果ては行政にも認知されるイベントへと成長し、今や本当に「よりよい投資環境を作っていく」イベントとなっています。
これまでのFoY
そんなFoYがこれまでどんなファンドを選出してきたのかを振り返ってみたいと思います。
Fund of the Year | 投資対象 | 投票者率 | 投票者数 | |
---|---|---|---|---|
2007 | セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド | 世界株+世界債券 | 70.00% | 20 |
2008 | STAM グローバル株式インデックス・オープン | 先進国株 | 44.44% | 27 |
2009 | バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT) | 世界株 | 37.78% | 45 |
2010 | STAM グローバル株式インデックス・オープン | 先進国株 | 25.42% | 59 |
2011 | CMAM外国株式インデックスe | 先進国株 | 28.07% | 57 |
2012 | バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT) | 世界株 | 17.19% | 64 |
2013 | バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT) | 世界株 | 19.05% | 84 |
2014 | <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド | 先進国株 | 20.00% | 115 |
2015 | <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド | 先進国株 | 42.14% | 159 |
2016 | <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド | 先進国株 | 33.81% | 139 |
2017 | 楽天・全世界株式インデックス・ファンド | 世界株 | 19.70% | 198 |
2018 | eMAXIS Slim 先進国株式インデックス | 先進国株 | 27.39% | 241 |
2019 | eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) | 世界株 | 26.82% | 179 |
こうしてみてみると、特にその年で話題になったものというよりは、外国株式に広く分散するものが長年好まれてきているように見えますね。
ここ10年でのパフォーマンスは米国株一強ではあるものの、だからといって米国株投信に流れないあたりに投信ブロガーの軸のようなものを感じます。
また、参考程度に投票者数と、そのうちFoYファンドに1ポイント以上の票を投じた人の投票者率を併記していますが、概ね投票者率25%を超えるとその年のFoYに選ばれる水準になっていそうです。
それだけに、2015年の<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドがどれほど高く評価されていたかがわかりますね。
以下が過去の参加者数、投票者率と最終的な得票率をまとめたグラフです。
1人最大5ファンドまで投票できるため、基本的には(投票者率)>(得票率)になりますね。
さすがに最初の3年くらいは参加者が50人に満たない水準であるため、高い偏りが見られますが、それ以降は大分動きが落ち着いたように見えますね。
特に得票率(灰色)についてはおよそ15%が1つのFoY水準であると言えるでしょう。
FoYにみる過去のトレンド
先ほどのグラフを見て感じるのは、かつて3連覇を成し遂げた<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドであっても、今やeMAXIS Slimシリーズの後塵を拝しているという競争の激しさですね。
2013, 2014の2年はVTが連覇していたものの、投票者率は20%を切る水準で、「誰もが認めるイチオシファンド」が1つに決まらないような競争の時期であったように見えます。
しかし、その後2015年11月にニッセイが信託報酬の引き下げを行い、翌2016年で圧倒的な支持を得てFoYを獲得します。
今でこそ信託報酬の引き下げは珍しいことではなくなりましたが、このことについて、当時は相当な衝撃であったとニッセイAMの社長が対談の中で振り返っています。
2015年というのは、<購入・換金手数料なし>シリーズにとって、いや、日本の投資信託市場にとって、ある種エポックメイキングな年だったといえるだろう。この年の11月、<購入・換金手数料なし>シリーズが、信託報酬率の引き下げを実施したのだ。
徹底したコスト追求でインデックスファンドを身近に~ファンドの挑戦者たち~(トウシル) より
これは、今振り返って想像する以上に大きな出来事だったといえる。今でこそ当たり前になっている感があるが、日本の投資信託市場にあって、すでに設定されて運用が始まっている公募投資信託が信託報酬率を引き下げるというのは、当時、ほとんど例のないことだったからである。
(略)
苦労して実現した値下げの効果は絶大だった。これをきっかけに<購入・換金手数料なし>シリーズは、「ブロガーが選ぶFund of the Year」上位入賞の常連ファンドに名を連ねていくことになるとともに、残高拡大の加速度にも一層のはずみがついていくことになる。
さて、こうして日本の投資信託業界の新たな1ページを切り開いたニッセイの天下が続くのかと思いきや、2017年はかつてのFoYであったVTが投資信託となった楽天VTがFoYを獲得しています。(ニッセイは2位)
このあとさらに三菱UFJ国際投信が業界最安水準を追求するeMAXIS Slimシリーズをリリースし、シリーズとして2連覇を達成するに至っています。
このように、投資対象としてのトレンドは開催当初からほとんど変わっていません。
しかし、それを具体的に実現する商品のトレンドは目まぐるしく変わっており、投信ブロガーの評価を得続けることは並大抵ではないことがわかります。
本当によいと思える投資信託
こうしたFoYに今年初めて参加するわけですが、投票にあたって、投票の考え方を自分なりに整理しておきたいと思います。
見る人が見れば、「ははーん、つまりアレに投票したんだな」とわかると思いますが、具体的なファンド名は控えて考え方のみ記載します。
(具体的なファンド名は結果が出てから別途記事にします)
投票の考え方
意外とびっくりしたんですが、FoYの投票ページやその周辺を見たとき、「こうした考えに基づいて投票すべし」っていう要綱的なものがないんですね。
あるとすれば、冒頭でも紹介した「自分たちにとって本当によいと思える投資信託」のこと言葉だけで、投票に向けた考え方はかなり投票者に委ねられているのがFoYの特徴だと思いました。
専門的にやる場合は投票条件を明確にするほうがいいのかもしれませんが、あくまで「投資信託について一般投資家の目線でつねに考え」ることを考えれば、イベントとしては変に前提を置きすぎないほうが、より一般投資家の実態に即した結果になるような気もしますね。
“自分たち” にとって本当によいと思える投資信託
それを念頭に、改めて唯一の基準である「自分たちにとって本当によいと思える投資信託」という文章を見てみます。
ここで個人的にポイントだと思ったのは、「“自分” にとって」ではなく「“自分たち” にとって」という前置きです。
一般投資家と一口に言っても、それぞれが置かれている状況に違いがある以上、よいと思うことにもそれぞれ違いがあります。
しかし、それをあえて “自分たちにとって” と広く捉えることで、「自分たちの手でよりよい投資環境を作っていこう!」という集団意識がより強く持てるように思いますので、私も自分だけの目線ではなく、少し広めに投資信託を眺めていきたいと思います。
もちろん、参加者が多くなれば、各々が「自分にとってよいものを選ぶ」ことでも、結果としては「自分たちにとってよいものを選ぶ」ことになるという見方もありますが、私個人としては自分がその状況に直面することも含め、様々な属性を加味した上で投資信託を選びたいと思っています。
何を大事にしたいか?
というわけで、今の自分のみならず、将来的な様々な可能性を踏まえた上で、何を大事にしていくべきかということで、私の考えをまとめてみます。
…と、思ってはみたのですが、結局のところこれに尽きるように思いました。
- 長く付き合い続けられる投資信託
私は今、30代前半なのでまだ十分リスクを取ることができ、子育てや介護がない中で自分の時間を十分にとることができています。
しかし、これからそうしたイベントが入ってきて、投資の検討に十分な時間を取れなくなることや、さらには検討のきっかけとなる情報すら十分に得られなくなる可能性があります。
さらには、自分に万一のことがあり、妻が自分の資産を管理する場合など、「日々の取り扱いを間違えてはかえってマイナスのパフォーマンスとなる」ような商品は本当によいものと言えるのか、非常に悩ましいところです。
だからこそ、投資に多くの時間を注いでいる今の自分が実際に投資しているかどうかに関係なく、「もし明日から当分投資できなくなるとしたら」という観点で何を選ぶかというのが、自分にとってまず大事なことなんじゃないかと思いました。
さらには、そうした考えで「長く付き合えるものを選ぶ」ことは、多くの一般投資家にとっても同様に望ましいことなんだと思うと、大事にすべきは「長く付き合い続けられるもの」だと思いました。
このことは、より具体的に言えば、
- 長く付き合い続けられるもの
- 長期投資に向く資産構成の商品
- 長期投資に向く運用会社の商品
- 投資の手間がかからない商品
というような観点だと感じ、この考えに当てはまる投資信託を選んで投資しました。
まとめ
今回が初となるFoY投票ですが、FoYそのものが目指すところや、集団としての投信ブロガーがFoYを通じて何を見てきたのかを知ることは、自分自身にとっても集団知として大いに学ぶところがあるように感じました。
当初はとあるブロガーの企画としてはじまったにも関わらず、恒例イベントとして多くの投信ブロガーの支持を集め、今や金融機関にも固有名詞としてしっかり認知されていることからも、FoYは価値のある活動だと思います。
私は今回が1回目となりましたが、今後は毎年この時期に自分の考えを棚卸するいい機会として、このように投票を続けていきたいと思います。
ここから1年…は言い過ぎですが、しっかりブログを続けてこられた自分をほめてあげたい笑
参考記事
このFoYは今や日本の投資信託事情に大きな影響を与えているイベントですが、そんな日本の投資信託(特にインデックスファンド)の歴史を過去に調べたことがあります。
最新事情としては、0.1%を切る水準の投資信託が登場したあたりですが、今後どんなことが刻まれていくのかと思うと、今年の結果も楽しみです。