株や投資信託の傍ら、私は不動産投資もやっています。
同じ○○投資ではありますが、大きくジャンルが違う以上、不動産投資では何でもってお金を増やそうとしているのか改めて考えてみたいと思います。
なお、基本的にはマンション/アパート投資という居住用不動産を念頭に置き、ローンを用いたサラリーマンの不動産投資を語っている点にご留意ください。
Contents
不動産投資とは
不動産投資に限らず、○○投資に共通して言えることは、
「○○という資産にお金を投じて、元本以上のリターンを得る行為」
だと私は捉えています。
だとしたとき、不動産投資は「不動産からリターンを得る」ということになりますね。
ちなみに、 投資と資産が関わる一方で、 投機という言葉は機会とペアになっていると捉えています。私はFXをやっていませんし、やるつもりもありませんが、その理由はFXを始めとする投機行為は機会にお金を投じるギャンブルだと捉えているからです。
このあたりはまた別途記事にして掘り下げたいと思いますが、資産という価値あるものにお金を投じることを私は重視しています。
不動産とは
少し話が逸れましたが、不動産投資について「不動産という資産からリターンを得る」とすると、次は不動産とは何かということが気になってきます。
Wikipediaで調べてみると、次のような書き出しになっています。
不動産(ふどうさん、英: immovables)とは、国際私法や大陸法系の民事法で用いられる概念であり、大まかにいうと土地とその定着物、あるいはそれらに対する物権を広く含むこともある。
不動産(Wikipedia) より
(略)
日本法においては、土地及びその定着物をいうとされ(民法86条)、条文上の直接の根拠はないが、建物それ自体が土地とは別個の不動産とされる(不動産登記法はそのような前提で定められている)。これは台湾民法にもみられるが、比較法的には珍しい。
要するに、不動産とは
- 土地
- 建物
からなる資産だということですね。
不動産の価値とは
不動産が土地と建物でできている以上で、不動産の価値はそれらに由来するはずです。
それぞれに価値があるとはどういうことか、さらに掘り下げてみましょう。
土地の価値
土地に価値があるとはどういうことでしょうか。
広義には金を埋蔵した鉱山などのこともあると思いますが、自分で実践できる不動産投資を考える上では、実質的に「立地の良さ」を指していることでしょう。
そうした意味で、立地に影響を与える要素を考えてみると、
- 交通アクセスの良さ
- 公共交通機関 / 幹線道路からの近さ
- 都市機能の良さ
- 商業施設 / 医療施設 / 住民サービス / …
- 治安・災害耐性の良さ
- 犯罪発生率 / 災害危険度
あたりが挙げられると思います。
次点として「人口の多さ」などがあると思いますが、結局のところ「いいところには人が集まる」と思うので、上の3つに含まれる側面と考えられます。
土地の価値については、周辺環境の変化や経済動向の変化で上がったり下がったりすることが特徴です。
建物の価値
続いて建物の価値を考えてみます。
こちらはいわゆる物的価値のことなので、その建物についての
- 機能の良さ
- 広さ / 間取り / 設備
- 作りの良さ
- 素材 / 耐震性 / 難燃性 / 日当たり
あたりでしょうか。
上がり下がりの可能性がある土地に対し、建物は基本的に価値が下がっていきます。
このあたりは減価償却の考え方と関わってきますね。
不動産投資の成功に向けて
そうした意味で、不動産投資を成功させる、すなわち元本以上のリターンを得るためには
「価値のある土地を持つ」
ことが基本的な考え方になります。
補足ですが、一般に不動産を買うと建物だけでなく土地もつきます。マンションなどの場合は、マンションが建っている土地の一部を所有することになりますね。
もちろん、不動産投資の成功に必要な要素は他にもメンテナンスやマーケティングなどの観点もありますが、最も大事なものとしては土地の価値そのものだと私は考えています。
専業大家など、メンテナンスで強みを出せればその価値で戦っていくこともできますが、よくあるサラリーマンの不動産投資では太刀打ちできません。
そうであればこそ、不動産投資を行う際には、不動産の価値、特に土地の価値を真っ先に考えるべきだと思っています。
価値のある不動産を持つために
不動産投資の意味、不動産の要素を考えたとき、不動産投資に必要なのは「価値のある土地」だということを考えてきました。
では、そのような価値のある土地はどのように探せばよいのでしょうか。
先ほど考えた、土地の価値を決める要因別に考えてみましょう。
交通アクセスの良さ
これは分かりやすいですね。
自分で住む場所を選ぶ際にも真っ先に気にすることだと思います。
セカンドライフ需要で沖縄エリアの地価が上がっていると聞いたりはしますが、基本的には交通の便がよいところの価値が高いとされます。
今後30年や50年で変わる部分は多くあると思いますが、古来から基本的には交通の要所が栄えてきたことを思えば、不動産と交通アクセスは切っても切り離せない関係となるでしょう。
駅の乗降車数
交通アクセスという意味では、駅の乗降車数が役に立ちます。
例えば関東圏であれば
のように、大手電鉄なら概ね公開しているようです。
横断的なデータとしては駅別乗降車数総覧というものがありますが、ちょっと手が出ませんね…。
電車系の交通アクセスの観点では、
- 最寄り駅と不動産の近さ
- 最寄り駅から中心都市への近さ
の2点がポイントになります。
これらのポイントがどうなっていたほうがいいかはターゲットとなる居住者次第でもありますので、「その不動産の居住者はどんな人か?」をイメージすることも大事です。
地価
将来価値を具体的に教えてくれる人はいませんが、現在や過去の価値であれば国や都道府県が地価を公表してくれています。
地価を調べているときに、「公示地価」「基準地価」「路線価」の3種類が出てくると思いますが、調査主体や用途が違うだけで、いずれも土地の価値を具体的に表しているものです。
土地Aを公示価格で見て、土地Bを路線価で見るなどするとおかしなことになりますが、同じ基準で見れば、現在の価値評価については優劣をみることができます。
ただし、他の投資もそうですが「価格が高ければ儲かる」というものではないので、現在価値はあくまで土地の人気を示す指標として参考する程度かと思います。
また、過去価格の推移を見ることもできますが、こちらに関しては時代の移り変わりでどのように価格が変動するものなのかイメージするのに役立ちます。
全国の平均とはいえ、90年近辺でぐっと上がっているのはいわゆるバブルの時代ですね。
この頃の高騰ぶりを示す逸話として「皇居の土地代で○○州が買える」「山手線内側の土地代でアメリカ全土の土地が買える」ということが言われます。今では考えられませんが、そういう時代があったということは知っておいてもいいかもしれません。
グラフを見て分かるように、約40年にわたるグラフにおいて、全国平均としてはほぼ横ばいであることがわかります。2020年のオリンピック景気に向け、東京周辺の地価が上がっていると言われますが、それが高騰しているのか、真っ当な値付けなのかは一度立ち止まって考えてみたい内容です。
都市機能の良さ
続いて都市機能です。
こちらも先ほど「居住者はどんな人か」という話をしましたが、重視すべき都市機能についても同様です。例えば、
- 20代大学生
- 20代社会人(独身)
- 30代社会人(子あり夫婦)
- 60代高齢者(夫婦)
を考えるだけでも、それぞれが好感するような都市機能は変わりますよね。
誰もが住みたいと思える不動産はあり得ませんし、誰もが住み得る不動産もありません。
そのため、「あれもこれも」というなんでもあり不動産ではなく、居住ターゲットにジャストフィットする都市機能を備えた不動産が理屈としてはよいですね。
人口予測
都市機能を考える上でまず確認すべきなのは人口予測です。
基本的に不動産の価値は「そこにどれだけの人が価値を見出すか」ということです。
したがって、人口が減り続けていく土地においては、それだけ価値を維持するのが難しくなるということです。
基本的に日本の人口は長期的にみて減少することが統計的には確定していますので、都道府県レベルはもちろん、市町村レベルまで見ておいたほうがよい内容と言えます。
最新の2018年データを見てみると、
というように、色付き、すなわち人口減少の予測が東京都を含む全ての道府県で出ていますね。表Ⅱ-3から具体的な減少率を引用すると、以下の通りです。
ブロック | 2015年 | 2045年(推計) | 増減率 |
---|---|---|---|
北海道 | 538.2万人 | 400.5万人 | -25.6% |
東北 | 898.3万人 | 620.2万人 | -31.0% |
関東 | 4299.5万人 | 3925.7万人 | -8.7% |
中部 | 2146万人 | 1769.1万人 | -17.6% |
近畿 | 2254万人 | 1838.4万人 | -18.4% |
中国 | 743.8万人 | 606.2万人 | -18.5% |
四国 | 384.6万人 | 282.3万人 | -26.4% |
九州・沖縄 | 1445.0万人 | 1199.7万人 | -17.0% |
というように、2045年では2015年比において関東ですら10%近い減少が予測されており、東北ブロックに関しては30%以上の減少予測となっています。
2020年の今から見れば、25年後という途方もない先の話に聞こえるかもしれませんが、仮に不動産を35年ローンで買ったとすれば、まだ10年ローンが残っている時期ですね。
バブルのような異常事態を除き、一朝一夕で価値変動するものではない不動産ではありますが、だからこそ長期的な検討が必要であることは念頭に置かなければなりません。
開発計画
人口予測同様に抑えておきたいのが都市の開発計画です。
大雑把に言ってしまえば、都市機能は「そこでどれほどのお金が回るか」で決まります。人が集まれば商業機能が発達しますし、居住者が増えれば税収が上がり、公共サービスが充実します。そうしたとき、人口予測に目をつけた事業者が都市開発を目論むことになり、それによって都市機能が強化され、さらにお金が回るようになるという格好です。
都市の開発は、企業の一存で実施できるものではなく、行政の認可を伴うものです。
そのため、認可状況を追うことで、向こう5年程度の開発計画を知ることができます。
例えば、東京都であれば以下のような状況です。
390mの超高層ビルを含む2027年竣工予定の千代田区常盤橋再開発計画など、それ一個で人の流れを大きく変えてしまう開発計画が多くありますので、こちらも長期的に不動産を見る上では押さえておきたい内容です。
また、都市計画よりさらに息が長いのが、路線計画です。
例えば以下のような計画です。
山手線で46年ぶりとなる新駅「高輪ゲートウェイ駅」が誕生することをご存知の方は多いと思いますが、鉄道計画はそれだけ息の長いものだということです。
鉄道が通ると、それだけで大きく人の流れが変わりますし、その鉄道を活用するために、鉄道会社自身が周辺を大規模に開発するようになります。
ある意味こうした都市計画が不動産の価値を助けてくれるということを思えば、知っておいて損はない内容でしょう。
治安・災害耐性の良さ
最後に治安と災害耐性ですが、これは統計資料などを見ましょう。
治安
治安の測り方は色々あると思いますが、単純に「犯罪発生件率」を頼りにしてみます。
計算の元になるのは、人口と犯罪発生件数ですね。以下、東京23区の例です。
2019年データを使って、上位5区と下位5区を並べると以下のようになります。
区 | 犯罪発生率(人口10万人あたり) | 犯罪発生件数 | 人口 |
---|---|---|---|
千代田区 | 8,082 | 2,896 | 35,830 |
渋谷区 | 3,525 | 4,851 | 137,582 |
新宿区 | 2,685 | 5,898 | 219,639 |
台東区 | 2,407 | 2,862 | 118,858 |
港区 | 2,381 | 3,474 | 145,865 |
… | … | … | … |
中野区 | 1,142 | 2,337 | 204,613 |
品川区 | 1,088 | 2,403 | 220,678 |
世田谷区 | 1,088 | 5,221 | 479,792 |
文京区 | 1,042 | 1,263 | 121,128 |
杉並区 | 963 | 3,097 | 321,531 |
このようになりました。
上位3区を見て分かるように、サラリーマンが多く出入りするなど、人口に対して実在人数の多い区が上位にきています。
そのため、この統計を素直に当てはめても公平な評価はできないのですが、発生率だけを見れば杉並区 / 文京区 / 世田谷区あたりが優秀です。
一方で、これらの区はベッドタウンとして多くの人口を抱えているため、犯罪発生件数そのもののは多くなっています。
また、上記では単に犯罪件数を扱っていますが、統計としては「凶悪犯」「粗暴犯」「侵入強盗」「非侵入強盗」など、犯罪の種類でも数字が出ているので、この観点から見る方法もあるかもしれません。
災害耐性
災害耐性にはハザードマップが役に立ちます。
ハザードマップは自宅最寄りの避難場所などを知らせる観点で、風水害や地震などの災害ごとに、各市区町村から発行されていると思います。
例えば東京都広域で地震に関して見れば、東京都都市整備局が調査結果を公表しています。
調査は「火災危険度」「建物倒壊危険度」「災害時活動困難度」の観点で行われており、それらを総合的に勘案して、総合危険度が算出されています。
建物の入れ替えが進みやすい都心部の災害危険性は低いと評価されていますが、いわゆる下町エリアの荒川区などは災害危険性が高いと評価されています。
不動産投資とどう向き合うか
価値ある不動産を持つことが重要な不動産投資では、どのような向き合い方が必要なのでしょうか。
改めて不動産投資の特性とともに考えてみましょう。
ハイリスク&ハイリターン
不動産投資はほとんどの人にとって、ハイリスク&ハイリターンの投資となります。
というのも、単一の投資商品として規模が大きいからです。
他の、例えば株などであれば小さいもので10万円程度が単価となり、高いと言っても100万円単位が関の山でしょう。
しかし、不動産はそうはいきません。
安価な部類に入るワンルームにしたって、東京水準では区分ワンルームでも2000万円くらいしますし、1棟買いをするなら1億2億が当たり前の世界です。
それだけに、ハイリスクにはなりますが、その分得られるリターンも大きくなりやすいということです。
レバレッジ投資
サラリーマンによる不動産投資を特に考えたとき、ほとんどのケースでは「投資用不動産ローンを組んで不動産投資」となることでしょう。私もそうです。
レバレッジをかけるのはFXや株の信用取引のイメージが強いと思いますが、ローンで行う不動産投資も立派なレバレッジ投資です。
もちろん、不動産は現物が存在しているため、強制ロスカットで無一文になることはないかもしれませんが、それでもレバレッジをかけている分、損失が大きく出てしまいます。
不動産投資を勧める人の中には、リーマンショックの例を出したりしながら「株は恐ろしいもの」だとしつつ、その間も株ほど値崩れしなかった不動産価格を引き合いに出しながら「不動産は安全なもの」とアピールする人がいます。
しかし、冷静に考えれば考えるほど、レバレッジをかけている不動産投資が、現物でしか扱わない株よりも安全だというのは非常に恣意的な比較だと感じます。
「ローンを組める」というスキル
お金を得るということは、何らかの資産やスキルを用いて、その対価を得るということです。
そう思ったとき、サラリーマンがローンを使って行う不動産投資は、「ローンを組めるというスキルからお金を得る」という側面を持ちます。
当然にローンが組める方はあまり意識することはありませんが、誰しもが豊富なローンを組めるとは限りません。
ローン枠というものは、本人の年収を基準とし、月々の余裕資金を勘案したとき、「これくらいなら万が一貸し倒れることはないだろう」という意味を持っています。
そのため、低年収よりは高年収が、中小企業より大企業がより大きなローン枠を手に入れることができます。
一方で、生まれたばかりのスタートアップや個人事業主では、ほとんどローン枠が使えないということが起こります。
そうしたとき、あなたがローンを組めるのであれば、あなたには「ローンを組める」というスキルが備わっていると考えられます。
そのスキルをもってして、大きなレバレッジをかけ、大きなリターンを得るというのが不動産投資の側面です。
慎重に、厳しく
ハイリスク&ハイリターンであり、レバレッジ投資である不動産投資をやりたいと思う場合、営業のストーリーに言われるがまま買うことだけは避けなければなりません。
前述したことも踏まえ、不動産営業にとっての利益を考えれば、多くの場合不動産を売ることに存在することがわかります。
一方で、私たち不動産投資家の利益は、20年や35年のローンを完済して初めて訪れるわけです。
もしあなたが、不動産投資に一歩踏み出そうとするなら、この20年や35年の壁を乗り切らなければなりません。
それも、万が一のダメージを勘案し、慎重に、さらに厳しい視点でもって不動産投資に向き合うべきです。
そのような視点でいると、ほとんどの不動産はお眼鏡にかなわず、「買わない」という選択になることが多いでしょう。
しかし、それでもいいと私は考えます。
不動産は売買が大変です。
それだけに、スマホアプリで簡単に株を売買して乗り換えることと異なり、生涯で保有する不動産は1個か2個か、ほとんどの人は多くても5個以下になるでしょう。
そうしたときに、生涯でそれだけしか買わないものを、本当に数日や数ヶ月でいくつも買ってよいものでしょうか。
自分の家を買おうとするとき、恐ろしく悩むことと同じように、本来不動産投資に手を出そうとすることは、それくらいの重みを持った決断が伴うはずなのです。
日々不動産投資の情報を収集し、市場に出回る物件を眺めながら、自らが定めたルールによって物件を見定め、数年のうちでついに良い物件に出会い、購入する。
そうした慎重な姿勢が不動産投資には必要だと感じます。
まとめ
長くなりましたが、不動産投資というものを改めて掘り下げて考えました。
本質的に、「不動産からリターンを得る」という性質をもっているため、価値のある不動産を得ることが、不動産投資の成否を分けると考えています。
不動産の価値は数年のものではなく、20年30年、さらには50年にもおよぶものです。
株を10年保有しようものなら、長期保有と言って差し支えないと思いますが、不動産では10年でようやく入門した程度でしょう。
そうした不動産であるからこそ、いくら慎重になってもおかしくはなく、様々な統計や見通しを駆使しながら、自分なりの「価値ある不動産」を見つけていくことが不動産投資の本質なのではないかと考えました。