先日自分の家の電気料金をチェックする過程で、東京電力のガスプランにAmazon Primeが付属する「とくとくガスAPプラン」なるものがあることを知りました。
他にもAmazon Primeが付属するプランが他社にもあるようなので、この機会に調べてみたいと思います。
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主なAmazon Prime付属プラン
先に述べた東京電力のガスを含め、調べた限りでは5社がAmazon Prime付属プランの提供を行っています。
- 東京電力
- 大阪ガス
- 朝日新聞
- ドコモ
- 三井住友カード
今回そこまで触れませんが付属という意味では、5つ目のAmazonゴールドも三井住友カードとしてのAmazon Prime付属プランと言えますね。
各プラン、さらっと概要と選択メリットをまとめてみます。
東京電力:とくとくガスAPプラン
先日の記事でも触れた通りですが、Amazon Primeを単独契約する場合に比べ、年間トータルで約2,000円程度得になるというプランです。
単身世帯ではお得幅が小さいですが、40㎥前後であれば、触れ込み通りの年間5,000円が見えてきます。
しかしながら、都市ガスの平均使用料は年平均でおよそ5,000円/月、つまり30㎥/月と言われますので、ちょっと大きめの試算になっていますね。
- メリットまとめ
- 4人家族(30㎥/月、5,000円/月)世帯において、年間約1,800円の得
- Amazon Prime会員権付属
- 加入時Amazonギフト券3,000円プレゼント
- モデル割引率:2.8%
- 4人家族(30㎥/月、5,000円/月)世帯において、年間約1,800円の得
大阪ガス:電気スタイルプランP
こちらも基本的なイメージは東京電力と同じです。
4人家族世帯において、400kWh/月であれば電気料金で年間トータルで約6,500円程度得になると言っています。
実際に4人家族世帯の平均使用料を調べてみると、年平均でおよそ12,000円/月、これが400kWh/月に相当しますので、比較的触れ込み通りと言えます。
- メリットまとめ
- 4人家族(400kWh/月、12,000円/月)世帯において、年間約6,500円の得
- Amazon Prime会員権付属
- 加入時Amazonギフト券2,000円プレゼント
- モデル割引率:5.3%
- 4人家族(400kWh/月、12,000円/月)世帯において、年間約6,500円の得
もともと電気料金はガス料金より高いわけですが、それでも割引率はこちらのほうが大きいようですね。
朝日新聞:朝日新聞デジタルAPコース
朝日新聞デジタルAPコースは2020年11月をもって新規申し込みを終了しています。
2020年5月から始まった新しいプランです。
従来から存在した朝日新聞デジタルのプランに、APコースとしてAmazon Primeが付属するようになりました。
他社プランにあるように、「こちらにすると実質〇〇円お得」というわけではなく、単純に従来プランに純増する形で付属します。
月額3,800円の朝日新聞デジタルコースの中で、Amazon Primeが付属してきます。
ちなみに、APコースの他にもDAZNコースがあり、「映画好きか」「スポーツ医好きか」のような観点で差別化しているようです。
- メリットまとめ
- 従来の朝日新聞デジタルにAmazon Primeが付属する
ドコモ:ギガプラン
こちらは料金プランというよりはキャンペーンです。
終了期間は示されていませんが、1回線あたり1回までなので、ガスや電気のパターンと異なり、継続しないものです。
本キャンペーンは2021年11月30日をもって提供が終了となりました。
ドコモ、au、ソフトバンクといった大手キャリアは実質横並びの料金プランを展開していますので、3社間では若干の優位性があるのかもしれませんが、単に料金の高低を考えた場合、格安SIMには一切太刀打ちできないので、あくまでオマケのようなキャンペーンですね。
- メリットまとめ
- 1回線に限り1度だけAmazon Prime会員権1年分(4,900円/年)をプレゼント
- 対象プランはギガホ/ギガライト(5G含む)プラン
三井住友カード:Amazon Mastercardゴールド
三井住友カードとしては、プロパーカードとしての三井住友カード ゴールドが同じく年会費11,000円でありますが、同じゴールドカードでありながら、Amazon Primeがついてくるというのがこちらです。
本特典は2021年11月1日でAmazon Mastercardがリニューアルされることに伴い、Amazon Prime会員権の付与が終了となりました。
元々三井住友カードとしてはリボ払い設定で年会費が6,600円安くなるマイ・ペイすリボがあったりしますので、実質的にほとんど無料でゴールドカードを持ててしまうのが強みです。
- メリットまとめ
- 年会費11,000円(キャンペーン等で4,400円まで割引可能)
- Amazon Prime会員権付属
- 年会費11,000円(キャンペーン等で4,400円まで割引可能)
なぜAmazon Primeを付属させるのか
大雑把に言ってしまえば各社のプランやキャンペーンは、「Amazon Primeを使うなら、ウチが得だよ」と言っています。
付属させるものは他になんでもよかったはずですが、どうしてAmazon Primeが選ばれているのでしょうか。
クレジットカードへの付属
最もわかりやすいのはAmazon Mastercardゴールドの例ですね。
三井住友カードにおける、Amazon提携カードなので、Amazon利用者に対するメリットを訴求することで、Amazon利用者をカード契約に結びつけることができます。
カード会社の利益は、年会費とカード決済によって発生するものですが、割引適用で4,400円とAmazon Prime利用権の4,900円を下回っている以上、カード決済で利益を上げるしかありません。
今やAmazon PrimeはAmazon Prime Videoで注目を浴びていますが、元々は無料配送などショッピング利用者にとってメリットのあるプラン設計でしたので、既存ユーザをターゲットにするのであれば、十分にカード決済が見込まれるということなのかもしれません。
また、Amazon Prime Videoを入り口に入ったとしても、通常で2.5%、セール時には最大7.5%まで還元が入るわけなので、そこからでもある程度はカード決済が発生してくるだろうという考えもあるでしょう。
電気/ガスプランへの付属
次に、東京電力や大阪ガスといった電気/ガス料金への付属について考えてみます。
こちらも、基本的にはクレジットカードと同様、Amazon利用者を電気/ガス契約に結びつけることができるという考えでしょう。
ここでよく見てみると、東京電力はガスプランへの付属、大阪ガスは電気プランへの付属をさせていて、ちょうど自由化によって進出した本業外の領域に対してAmazon Primeを付属させていることがわかります。
電気/ガス会社の利益はそれぞれの利用量というよりは、ほぼ契約数に依存することを考えれば、本業外のところで手薄な契約数を獲得することは有効な営業戦略と言えるでしょう。
また、ここで興味深いのが大阪ガスの発表時コメントです。
大阪ガス株式会社(社長:本荘武宏、以下「大阪ガス」)は、従来からのお得な電気料金メニュー「ベースプラン」に加え、お客さまのライフスタイルや個々のニーズに合わせてご利用いただける電気料金メニュー「スタイルプラン」を新たに設定します。その第一弾として、Amazonの会員プログラム「Amazonプライム」がついてお得になる「スタイルプランP」の受付を本年8月1日より開始します。
お客さまのライフスタイルや個々のニーズに対応した新しい電気料金メニュー「スタイルプラン」の設定と「スタイルプランP」の受付開始について(大阪ガス) より
自由化で顕著な傾向として、「まとめるとお得」というものがあります。
自由化に伴い、電気やガスの契約を一本化することで、年間いくらか安くなりつつも、基本的なサービス水準は変わらないというのが各社のウリです。
利用者からしてみれば、元々使っていたものの契約をちょこっといじるだけで、サービス水準そのままに安くなるのであれば、「じゃあやってしまうか」となるのは当然です。
そうなると、「いかに利用者の “おまとめ” が効くプラン設計にするか」というのが大事になります。
そうした観点で、大阪ガスはまずAmazon Primeのおまとめプランを発表したわけですが、コメントにある通り、「その第一弾として」であるようなので、今後他のおまとめ対象をもつスタイルプランが提供されていくものと考えられます。
安直に言えば競合であるHuluやNetflixになるのか、あるいは固定化要素の強いインターネット回線などになるのかなど、今後の提携戦略に注目ですね。
デジタル新聞サービスへの付属
正直、今回取り上げたもののうち、朝日新聞デジタル APコースが最もその意図を汲みづらいものでした。
朝日新聞にとって利用者がAmazon Primeや併存するDAZNサービスを利用することが、本業であるデジタル新聞サービスの魅力を高めるとは思えず、かつ競合サービスから契約を奪うようなものでもないと思いますので、単純にコスト持ち出しで見かけ上の付加価値を高めるもののように思いました。
朝日新聞デジタルには月額980円の下位プランがあるため、この月額3,800円の上位プランに乗り換えてほしいがためにこうした施策を打ち出しているのだとは思いますが、単純値下げのような戦略に思えるため、あまりいい打ち手とは思えなかったのが率直なところです。
携帯電話プランへの付属
こちらはキャンペーンなので、そこまで強い意思はないかもしれませんが、Amazon Primeの中でも典型的なリッチコンテンツサービスであるAmazon Prime Videoに注目する場合、その通信環境を提供するドコモとしてはシナジー効果が期待できる領域と言えます。
通信環境と定額ビデオサービスという観点では、少し前までカウントフリーという動きがありました。
カウントフリーとは、YouTubeなどの動画サービスや、TwitterやLINEといったSNSサービスによる通信料を無課金(カウントフリー)とするサービスです。
3G時代のいわゆるパケ放題時代から、4Gで再び容量を気にして使うようになったところ、ここ数年は大容量コンテンツが数多く提供され、パケ死以来の「ギガが足りない」という容量不足を嘆く言葉が誕生するに至っています。
そんな中においては、まさに救世主とも言えるカウントフリーであり、格安SIM各社が競って導入していくなど、かなり認知度が高まってきています。
ところが、そんな注目の動きに待ったをかけたのが総務省です。
要するに、「カウントフリーやめろ」という内容ですね。
これには当然、公正な市場環境を保ちたい総務省としての考えがあり、ここで名前に挙がるような大規模事業者はいいとしても、現在ここに名前に挙がっていない新規事業者をはじめとする中小規模事業者に不利な市場環境を醸成しかねないという危惧によるものです。
確かに、利用者としては当然嬉しいわけですが、仮にAmazon Prime Video利用者がカウントフリーの恩恵を受けていたとして、他に魅力的なビデオサービスがあったとしても、それがカウントフリーでなかったとしたら、本来の競争力以外で優劣が決まってしまうので、それが市場として望ましくないということでしょう。
そうした観点からカウントフリーには待ったがかかっているわけですが、カウントフリー自体も先ほどのスタイルプラン同様、「利用者のライフスタイルに寄り添う」戦略ではあったわけです。
このことを考えると、はじまったばかりのスタイルプランですが、今後はカウントフリーと同様に採用企業が増えていけば、いずれは待ったがかかるのかもしれないですね。
ドコモもキャンペーンに留め、Amazon Prime会員権が継続的に発生しないようにしていますが、このあたりの事情も絡んでいるのかも知れません。
しかしながら、ドコモとしてはこのAmazon Prime提携以外にも、d払いをAmazonで利用できるようにしたり、d払いによるAmazonショッピングキャンペーンを頻繁に展開するなど、このところ提携を強めている傾向がみられます。他にどんな施策が今後展開されるのかについては、ドコモ/Amazon双方をよく使う人間として非常に期待しています。
クレジットカードへの付属
カウントフリーに見られるような、「選択意欲の阻害」を理由とするストップ要請ですが、ではクレジットカードへの付属はどうなのでしょうか。
今さらクレジットカードの付属についてはAmazon Prime限らず手を出せないレベルなのかもしれませんが、クレジットカードと電気/ガス/携帯電話プランで異なるのが「1人で複数契約するか」という点で、これによって問題ないと判断されていると考えます。
実際に、とあるサービス提携があったとして、それが付属する提携カードと、競合する付属しないカードがあったとしても、両方契約することは難しくありません。(利用者にメリットはほとんどないと思いますが…)
また、カードの収益が基本的に年会費以外から出ている通り、契約と収益が必ずしも一致しない点も異なると言えます。
そうしたことを踏まえると、クレジットカードに付属していることは何ら問題ないものと思われますが、こちらではHuluやNetflixといった競合サービスの提携カードが誕生していないのもポイントですね。
確かに、HuluやNetflix提携によって加入者は一定程度獲得できるのかも知れませんが、Amazonというショッピングサイトを構えるAmazon Prime Videoと異なり、その提携カードを使ってカード決済が発生すると考えにくく、収益イメージがないというのが提携がない理由でしょう。
複数サービスを統合する意味
各社、様々な切り口で複数サービスの統合を旨とするプランニングを行っていることがわかりました。
それぞれ利用者の視点でみてみれば、統合によってサービス水準をそのままに、利用料金をいくらか下げられるというメリットがあるわけですが、これが「サービス選択の流動性」を犠牲にした結果であることには注意しなければなりません。
電気/ガス料金との統合が最も典型的で、Amazon Prime提携プランを契約したとして、Huluその他のサービスに乗り換えようとした場合、単独であればAmazon Primeの解約だけで済むところ、なんと電気/ガスプランの変更が必要になるというわけです。
継続的な利用料金と引き換えにサービスを提供するサブスクリプション事業者としては、そうした「取り外しの困難性」がまさに望むところで、契約が収益に直結する以上、「いかにして解約を難しくするか」というのが収益維持に重要になってきます。
このこと自体はAmazon Primeサイドとしても同じなので、同様に変更しづらい電気/ガスと統合することで、Amazon Primeとしての解約リスクも下げられるという双方にメリットがある提携と言えます。
なので、こうしたプラン統合を考える際には「まとめるだけでお得」という発想よりも、「今後そうそうプラン変更を行わない場合はお得」と考えたほうがよいことになります。
もちろん、プラン変更なんて大した手間ではないというような方もいるかと思いますので、そうした方は積極的に選択していけばいいかと思いますが、そうした方についても、Amazon Prime会員権の発生時期を踏まえるなど、切り替え時期の考慮は多少必要になるかと思います。
まとめ
ひょんなことから知ることになったAmazon Prime付属プランですが、同様のプランを調べていくことで、会社ごとのねらいや効果が異なることがわかり、契約の維持と獲得が重要なサブスクリプション事業としてのポイントなど、なかなか楽しい結果が得られました。
Amazon Primeに関して言えば、かなり気に入っているサービスなので、統合によって固定化されることは特段気にしませんが、カウントフリーのことを考えると、今後固定的な契約との抱合せについては同様に規制対象になるかもしれないですね。
いずれにせよ、現在のライフスタイルをうまく捉えることで、日々のランニングコストを節約できる観点を学べましたので、他にもそんなものがないか調べてみたいと思います。