相続を考えはじめる前に考えること

相続税を少なくしたい」そう思って、親からの遺産を上手く相続したいと思う人は多いでしょう。

しかし、相続を考えはじめる以前に、相続の仕組みを理解するより難しい話があるので、具体的な相続手続きに先立ってそれを考えてみましょう。

相続を考えるために必要な情報

上手く相続する手順を考える場合、必要な情報は大まかに言って以下の通りです。

  • 資産総額
    • 現金 / 預金
    • 保険金
    • 有価証券
    • 不動産
    • その他資産
  • 相続人の数
    • 配偶者
    • 子ども(養子含む)の数

もしあなたがこれらの相続情報をはっきりと掴めているのであれば、それだけで理論上効果的な相続のやり方はほとんど考えることができます。

一方で、これが分からないということであれば、どういう手順で資産移転していくことが最も効率的かどうかは判断つかないことになります。

相続情報を得るということ

さて、相続情報として資産総額と相続人の数を知ることが相続への第一歩だということがわかりました。

後者、相続人の数は隠し子がいたケースを除いてすぐわかるでしょう。配偶者と兄弟姉妹の合計です。

一方で、前者の資産総額ですがほとんどの場合、知ろうとする以前に知るのは難しいのではないでしょうか。
そう思うと、親に資産総額を聞くことが相続に向けた実質的な第一歩だと言うことができます。

しかし、ここで少し考えてみてください。

あなたは、自分の両親に資産総額を聞くことができますか?

子どもの頃は、あまりお金の話を子どもにしないことからも、「うちは貧乏だから」と言って正確な資産額を言いたがらない親も多いでしょう。
そうしたことも踏まえ、両親が嘘偽りなく資産総額を答えてくれるように聞く、それが非常に難しいはずです。

当然、そうした話をしてこなかった家庭ほど、非常に怪しいことを聞いていると思われるわけです。
お金の無心や、怪しい投資の話、あるいはトラブルによる金銭援助要請など、基本的にロクなイメージがありません。

そういうロクでもない話ではないことを示すためにも、「相続のために知りたい」ということを明らかにしないといけない場合がほとんどでしょう。

そうしたとき、あなたの両親はどのような反応をするでしょうか。

相続のイメージを高める

相続のために知りたい」と言ったとき、あなたの両親の頭の中には何が浮かぶでしょうか。
非常にドライなことを言ってしまえば、当然自分が死ぬとき、あるいは夫か妻かの配偶者が死ぬときをことを連想せざるを得ません。

しかし、普通に考えて、人は自分が死ぬということをあまり考えません。
体験したことがない、目の当たりにすることが少ないということで難しいというのもありますし、そもそも自分が死ぬことが嫌であるということが、死について考えることから人を遠ざけます。誰だって嫌なことは考えたくないですよね。

そうしたことから、子から資産総額・相続について聞かれ、嫌な連想をした結果、子に反発してしまうということも、相続トラブルの事例として度々ある話です。

そしてこの話はひとたびすれ違いを起こしてしまうと、再度切り出すことが非常に難しくなってしまいます。
実際、生前にこの話が切り出せずにそのまま亡くなってしまうことで、理論上わかっていながらも全く相続に向けた準備ができず、節約できたはずの相続税まで徴収されてしまうという話があります。

だからこそ、相続を上手く進めたい場合は慎重に相続情報を集めなければなりません。

相続情報をうまく集めるために

究極的には両親と自分の関係性が全てと言えるため、相続情報を上手く得るための特効薬みたいなものはありません。
しかし、少しでも誤解なく相続を考えられるように、以下のような点に注意して相続と向き合っていきましょう。

両親の意思を何より尊重する

不動産投資の誘い文句などでも見たりしますが、「子どものためにお金を遺す」という表現があります。
これは一見普通の話のように見えますが、必ずしも全ての親に当てはまる感覚ではありません。

両親がどのような考えでその資産を築いてきたか次第ですが、必ずしも子どもに遺すために資産を築いてきたことが全てではないでしょう。

  • 生活の安心のため
  • やりたいことのため
  • 豊かな老後の生活のため
  • 子どもの安心できる生活のため

というように、遺産として残すことは、数ある理由の一つでしかありません。
一方で、相続の観点で資産総額を聞くということは、このうちの遺産という側面で資産を強く見てしまうことになります。そういう目で両親の資産を見てしまうことで、両親からも「この子は私の資産をすべて自分のものであるかのように思っている」と思われてしまう可能性もあります。

そのため、まず聞く立場として知らなければならないことは、両親の資産はどうあっても両親のものであり、相続するかどうかも両親の意思次第であるということです。

資産の行き先を整理する

上手く相続をしたいと思うときに、資産の行き先を考えることは非常に重要です。
大雑把に言えば、資産の行き先は次の3通りありますが、

  1. 両親自身が使う
  2. 遺産として子に相続される
  3. 相続税として国に納められる

相続を上手くやるということは、1+2を最大化するということです。
なので、極論としては両親が全額使ってしまっても、それはそれで悪い相続ではないということになります。

しかし、老後に向かってひたすらにお金を貯める人生を歩んできた人が、老後に一転してお金をどんどん使っていくことはなかなかできることではありません。

そのことを考えると、どうしてもお金が余ってしまうことや、持ち家としてお金ではない形で残る場合もあります。
そうしたとき、可能性として資産が相続税に変わる部分が出てきますので、それを認めて3を少なくしようということが、両親と子どもで相続を考える時の出発点になるでしょう。

お金のよい使い方を一緒に考える

相続をする側、両親の立場からすれば、自分の死後の話なのである意味遺産の使い方など知ったことではないのかもしれません。
しかし、募金と同じように、できることならよい使い方をしてほしいと思うのは相続でも同じです。

先ほど、行き先としてみたとき、「自分で使う」か「相続するか」という観点がありますが、この「自分で使う」というのは「現在に使う」ということと同じです。
一方で、相続をすることによって、子どものためになるとか、孫のためになるということは「未来に使う」と考えることもできます。
これもまた、両親自身が使い方を決めた使い方の1つであるので、目の前にあるお金をどのように使っていくかという観点で、両親の意思に寄り添うことが重要です。

相続と向き合うということ

ここまで考えてきたように、上手く相続することを考えようとする場合、どうあっても両親の協力が欠かせません。

そして、自分が死ぬこと、あるいは死んだ後のことをわざわざ考えてもらう以上、その相続を考えるということが、両親にとってもよいものでなければなりません。

そのように考えたとき、結局相続では何と向き合っているかというと、両親と子どもでともに残りの人生をどうするかを考えることだと私は思います。いわゆる、終活というものを子どもと一緒にやるということですね。

両親には幸せな老後を送ってほしいと思うでしょうし、それとともに自分も幸せでありたいと思うでしょう。
そうして残りの人生の歩み方を考えていく傍らに、それを可能にする資産があるかどうかや、そうして人生を終えるとき、資産がどうなっているのかを考えることが、よい相続の本質にあると思います。

まとめ

お金のことを考えるとき、相続は大きな、かつ必ず訪れるイベントとして存在します。

しかし、相続はどうしても両親や大切な人の死とともにしか発生しないため、考えることが避けられがちです。
そうやって避け続けた後に、「もっとこうしておけばよかった」「あんなこともできたかもしれない」として、人生を振り返ってしまうことは残念なことです。

避けられないものだからこそ、それを受け入れてよいものにしていくためにも、具体的な相続手順を考える以前に、両親とともに残りの人生をどう歩んでいくかを考えてみませんか。