松下電器(現パナソニック)の創業者として有名な 松下幸之助 が開いた 松下政経塾 の講義テープを元にした言行録。
オススメ対象者
この本を読むのに適していると考えられるのは、以下のような方です。
- 何かを “誰かと” 取り組んでいきたいと思っている人
- その “誰か” を率いる立場にある人、またはなりたい人
書名の通り、「リーダーになるということ」を取り扱っていますので、一人で取り組むのではなく、誰かとともに何かに取り組む人、さらにはそうした誰かを率いる立場に関連する人が読むと効果が得られる本だと思います。
概要
松下幸之助に関する本としては他にも多くありますが、私自身としては松下本を初めて読みました。
「リーダーになる人に知っておいてほしいこと」というタイトルからも分かるように、 “リーダーになる” ということに対しての心構えを、松下政経塾における言行録からピックアップする形で1冊の本にまとめてあります。
リーダーになる人間が知るべきことは多種多様にあると思いますが、読み終わってから改めて、本の帯に添えられた
戦略・戦術は大事
しかしそれ以上に大切なことがある
という文章を見ると、この本で「知っておいてほしい」と言っているのは、リーダーに相応しい生き方や道徳観のことなんだと感じました。
以下、本の中で象徴的に述べられていると感じたトピックについてメモから引用します。
素直さ
松下幸之助は、自身を成功に導いた要素として「素直さ」を挙げています。
- 自分自身が世界を素直に理解すること、即ち客観的な視点を持つこと
- 周囲からの意見を素直に受け入れ、理解し、良いことを取り入れること
先入観を排した姿勢でいることで、周囲から意見が集まり、またその良い意見を取り入れて実行していくことで、周囲も松下幸之助への貢献を感じるという周囲との調和によって成功したということを強調していました。
熱意
先に挙げた素直な姿勢をもちながら、熱意を持って仕事に向き合うことが成功への近道であると述べています。
- 1つのことに熱意を持って取り組むほうが、複数のことに取り組むよりずっと成功しやすい
- 熱意によって日々勉強に励み、知識という道具をもって仕事を行う
ここで、勉強というものは大学までの学校で学ぶような一般的な内容を前提として、仕事を通じて得られるアイデアや気付きなどを指している。あくまで知識は道具であり、熱意と知識をもって仕事に励めば知恵が得られると述べていました。
人類の繁栄と世界平和への貢献
松下政経塾の 塾是 にもあるように、人類の繁栄と世界平和への貢献を説いています。
人類の繁栄と世界平和への貢献を真に望み、熱意を持ってその大業にあたるとするなら、この世界の誰もがそのリーダーの味方をするだろうとし、だからこそ仕事や商売を超え、日本や世界のために動くことが大事だということでした。
総評
全体で約120ページほどでしたので、1日もかからずに読むことができます。
また、元々が口頭での講義録ですので、高度に論理的な文章ではなく、小気味よく読み進め、理解することができます。
「リーダーになる」という観点ではリーディングスキルのような具体的な手法について書いている本も多くありますが、松下幸之助が述べているのは幼少期から老齢に至る現在まで、どのような姿勢で生きてきたか、そしてなぜそうした姿勢で生きていくことが重要なのかを自分の言葉で語っています。
これを読んですぐ明日からリーダーになれるということはまずないと思いますが、10年や20年、さらには30年と時間を重ねる中で、気がついたときにふと読んでみて、自分の生き方を振り返ったり、少しばかり反省したりしながらこの本と長く付き合っていきたいと思いました。