ブログ界では有名な染谷 昌利さんの本です。
「ブログで飯を食う」ことを意味するタイトルを持った本ですが、染谷さん自身が専業ブロガーになっていく道筋とともに、「ブログで飯を食うとはどういうことか」の一例が分かる本となっています。
Contents
オススメ対象者
この本をオススメできる人は明確です。
- ブログで飯を食っていきたいと思う人
です。
巷には、「副業ブログで月収100万円」などの華々しい言説も見受けられますが、私は何かで飯を食おうとするにはそれに見合う努力と工夫が必要なものだと思います。
そう思った時、この本にはそんな「ブログ飯」に至るまでの努力と工夫がまさに描かれており、同じようにブログ飯を志す人に通じる軸のようなものが感じられました。
概要
著者の染谷 昌利さんはおそらくブロガー界隈ではかなりの知名度を持っている方です。
単著としての書籍もそれなりにありますが、それより驚きなのは共著に名を連ねる本の多さです。
私も染谷さんを個人として認識するまでは、「色んな本で名前を見るけど一体何者なんだ…」と思うばかりで、すでに書評にした本の中だけでも
の2冊が入っていますし、書評にしてないものの乱読したものも含めればもっと出会いがあります。
そんなファーストインプレッションだったので、なんて偉人なんだ…と思ったことを覚えています。
さて、多くの本はAdSenseだったりWordPressだったり、ブログを実践する上で必要なツールの話をしているものが多いです。
一方で、この本はそういったツール色が前に出ておらず、「ブログを書く」という活動全般について扱っているようで、なかなか期待が高まります。
それでは、いつものように印象に残ったポイントを挙げながら振り返ってみたいと思います。
筋トレのようなもの
本文に入る前にまず注意点が入ってきますが、この部分が個人的に好きでした。少し引用します。
本書では、いろいろなブログの事例や私の今までの経験などを基に、時代に合わせた汎用的な考え方や文章力を身につける方法を中心にお話ししていきます。スポーツに例えるなら、筋トレのようなものだと思ってください。筋トレ自体はちっとも楽しくありませんよね。でも、思い通りの動きを下支えする筋肉を鍛えて初めて、勝負すべきところでその能力を最大限に発揮できるものです。
本書を読む際の注意点 より
この「筋トレのようなもの」という表現は非常にしっくりときました。
いろいろなテクニックや工夫があったとしても、それ1つで爆発的な結果が得られることはほぼないと言ってよく、おそらく宝くじに当たるような話でしょう。
とはいえ、1つ1つ、その行いを積み重ねていく先に何かの成果が徐々に現れるとするのであれば、それはまさに筋トレのようなものだなと思います。
最初は苦しくても、継続していくことで体や生活リズムに馴染み、いつしかそれ自体が楽しくなるときがやってくるというところも、なんとも筋トレチックだなと思いました。
本書を読む際の注意点
筋トレのところから入ってしまいましたが、続く注意点のところもポイントだと思うところでした。
最後にお願いです。本書を読む上で、頭の中に入れておいて欲しいことが3つあります。
本書を読む際の注意点 より
ひとつめは、「鵜呑みにしない」事です。
(略)
ふたつめは、「人との違いが価値である」ということを認識することです。
(略)
みっつめは、「すべて最初からやろうと思わない」事です。
各注意点が具体的にどうであるかはぜひ読んでいただきたいですが、総じて「この本から得た内容を、じっくり、少しでもいいので自分なりの血肉にしてください」というお願いだと思いました。
この本で語られる染谷さんのストーリーは決して一朝一夕で立ち上がったものではなく、実践して成果が得られたテクニックや工夫は染谷さんの人柄やスキル、あるいはその時代や時期に支えられているということです。
もちろん、この本の中にそうした変動要因によっても変わることのない真実は多数含まれていると思いますが、しっかりと吟味し、拙速よりも巧遅の姿勢で他ならぬ自分の体へ身につけていくことが大事だと改めて思います。
サラリーマンから、ブロガーへ
この本のストーリーは染谷さんが専業ブロガーになる少し前から始まります。
2004年にブログと出会い、雑記ブログを書き、グルメレポートブログを書き、…と5年ほどサラリーマンブロガーとしての下地を積んで、会社の転機に併せて2009年に専業ブロガーになるところが語られています。
このくだりはこの本の1/10に満たないものではありますが、年の経過を見ると分かるように、数年以上のブログ活動を続けていること、さらにその中で1000を超える記事を書いていることがサラリと書かれています。
もちろん、染谷さん自身もこのあたりの話について、さほど学びになることがない、あるいは専業ブロガーになってからの学びのほうがはるかに大きいとしてあまり触れていないのかと思いますが、決して短くないこの期間をこの程度済ませられてしまうあたり、ここからブログ飯に至る道の険しさのようなものを感じました。
ただ、この書き口は当然今から振り替える染谷さんだからできることであって、当時の染谷さんの思いが次のように綴られています。
もう若くないのに、独身男でもないのに、妻も子もいるのに、なにより、ブログからの収益はお小遣いにも満たない額なのに。それでも私は、「何とかなる」と思っていました。当時は、1年間という時間がどれほど短いかということを、分かっていなかったのかもしれません。不安は、ほぼ皆無でした。私の目の前には、希望しか広がっていなかったのです。
充実したサラリーマン生活から一転、無職へ より
飯が食えるブロガーへ
こうして専業ブロガーになってから、「飯が食えるブロガー」になるまでの紆余曲折、試行錯誤がはじまります。
今でこそ、難なく飯が食えていることから、あまりイメージしづらいところではありますが、かなりの苦労が伝わってくるところです。
この過程で新しいブログを立ち上げ、上手く行かず…みたいなことを何度か繰り返していますが、それぞれごとに「1ヶ月ほどで50記事」とか「1ヶ月で100記事程度」とかがしれっと出てきます。
もちろん、専業ブロガーとしてのことなので、自分と比べるのは違いますが、それでも月に50とか100記事というのは頭が下がるところです。
しかし恐ろしい(?)のはその先で、やはり「1ヶ月で100記事書いた」からといってそれ自体で飯が食えるようにはならないという話で、元々のタイムリミットであった1年を過ぎる辺りから心が折れそうになっている様子が伺えます。
そうした時期を乗り越え、ようやく飯が食える方式の1つである「Xperia非公式マニュアル」やその他スマートフォンブログの「スキーム」にたどり着き、再現性を得ることで一定のブログ飯に到達していきますが、果たして自分がここまで辿り着けるかと言われると正直自身がないですね…。
結局のところ、そこまでギリギリになる可能性を秘めたブログ飯への道であるわけなので、やはり飯を食おうとする限りは相応の覚悟が必要なんだろうと思いました。
ブログ運営のポイント
ブログ飯に辿り着いたストーリーを前段に、残りの80%ほどがブログ運営の心構えやテクニックの話となっています。
具体的な内容は詳しく引用できないのでぜひお買い求めくださいというところですが、箇条書きで気になった部分を挙げておきます。
- 何を書くのか、そして何のために書くのかを決める
- 文章力を向上させる最大の秘訣は「思いやり」
「ブログで飯を食う」ことを謳うこの本だからこそ、この本を読んでいる人はブログで収益を挙げたいと思っていることでしょう。しかし、お金のことだけでなく、「何のために、このブログを通して、何を伝えたいのか」というブログ活動そのものの目的と覚悟を持つことが重要だと触れています。
私は このサイトについて でブログ開設にあたって3つの目的を掲げており、それを通じて得たことをブログで残していきたいと思っています。
これらを掘り下げたところで、短期的には間違いなく収益にならず、この先収益になるかどうかも怪しいと思っています。が、しかしそれでもこれらのことと向き合いたいし、書きたいと思っていることは自分がブログを続ける強いモチベーションになっていると感じます。
もう一つ、記事を生み出すために必要な文章力を高める方法は「思いやり」だという話です。
1点目で触れたように、何を、何のために伝えるか決めたところで、誰に、どのように伝えるかが上手くいかなければ、結局何も伝わりません。
この観点で、伝えたい内容を自分が伝えたいようにそのまま伝えるのではなく、相手にとって一番伝わりやすいように、分かりやすく説明する思いやりが必要だということです。
そうして、自分の伝えたいことが間違いなく相手に伝わり、興味を持ってくれたり、感謝されたりすることを考えれば、相手のために思いやりを持つことは、巡り巡って自分のためになるというわけですね。
さあ、冒険をはじめましょう
第1章の最後にこんなことが書かれています。
やり方に正解なんてありません。なにをやってもいいんです。それがあなたのオリジナリティになるんです。だからこそ、第2章以降の内容は小手先のテクニックやノウハウを解説するのではなく、もっと大切な土台、マインド面を中心に解説しています。私が陥ったテクニック重視の考え方は、ある一時期は大きな成果を上げるかもしれませんが、時代が変わったら、システムが変わったら使えなくなってしまうことが多いです。そんな事に時間を費やすなら、自分の経験を積み上げ能力を向上させて、魅力的な人間になることに時間をかけてみてはどうでしょうか。
タイムリミット、転機、そしてブログ飯へ より
この本はあなたの道標となるよう、一生懸命書いています。さあ、冒険をはじめましょう。
私はこの「冒険」という言葉がすごくいいなと思いました。
確かに、ブログ運営に関してメンターや師匠を見つけ教わることは不可能ではありません。
しかし、そういうブログ運営会社でも設立しない限り、どこまでいってもブログ運営は一人で行うことになるでしょう。サラリーマンとは違って、上司もいなければ、会社から指示される研修もない。
それは自由で気楽なことかもしれませんが、一切未来が保証されていないものでもあります。
だからこそ、そんな未開の地に足を踏み出し、自らのブログを運営していくことは冒険に他ならないことだと思います。
ロールプレイングゲームのように自分自身をレベルアップさせて楽しむのがブログの醍醐味です。ラストのボスを絶対に倒すぞという「覚悟」を決めて、でも最初から結果なんか出ないという「気軽な」気持ちで始めることが長続きする秘訣だと思います。
考え編① ブログ運営で最も重要なポイント より
いくらかの覚悟は必要になるかもしれませんが、このゲームはきっと自分が好きで始めたゲームです。
その気持ちを忘れず、ワクワクした気持ちで自分をレベルアップさせてボスを倒していきたいですね。
特別コラム:鬼嫁は見た! ~没個性サラリーマンの華麗なる転身の秘密~
実は、この本で一番好きなのがこのコラムです。
サラリーマンを辞めて独立するタイミングで何度か出てきますが、染谷さんの奥さんが描き下ろした特別コラムで、染谷さん(マサオ)がブログ飯に至る隣でどのように見ていたのかを奥さんの視点で書いていて、これがまた面白い読み物になっています。
でも私は、健康で、コミュニケーション能力があって、パソコンが出来れば、大概のことはなんとかなると思っていました。幸いマサオは、それらのスキルが高く、ブログを9年書き続けたことで、PC知識・発信力・文章力といった武器も持ち合わせていました。そして何より、コツコツと記事を書いてきた継続力があります。個性もキャラも薄いマサオですが、これだけの力があれば何とかなると考えていました。
夫が会社を辞めた……そのとき妻は より
なんということでしょう。
僕の目から見て、ブログ界の偉人だと思っていた染谷さんが、奥さんに言わせれば「個性もキャラも薄い」人だったなんて。
もちろん、それは当時の染谷さんであって、ブログを書き続けたきた姿、それも文章上の登場人物としてしか知らない自分のイメージとかけ離れていることは無理もないことです。
しかし、ここまで成果を上げた人が「個性もキャラも薄い」だなんて、率直に驚きました。
ここまで読んで「あれ?」と思いませんか?そう、この本に書かれている内容は、私がそこで語った事の焼き直しなのです。文章や絵を生業にしてきた私は、表現としての「魅せ方」や、企画の立て方、売り込み方などを、マサオに伝授したのです。ということで、この本の元ネタは「私」であり、体よくパクっただけのマサオよりも多くの印税をもらうべきだと思う今日この頃です。
マサオ氏、フルボッコの巻 より
これを読んで思ったのは、ブログでもなんでも、何かを自分の柱になるものを打ち立てたいとする場合に、パートナーの存在ほど大事なものはないということです。
私も結婚していて、ブログを書いていることは妻も知っています。
しかし、記事を書いて感想をもらっているわけではありませんし、ブログをどうしていこうとか、ブログを武器として今後どんな生活にしていきたいとかそんな話はしたことがありません。
確かに、このブログで記事にしている個々のテーマについての知識や考えの深さは私に分があると思います。それはそれだけ勉強したり、時間をかけただけ自信があります。
とはいえ、そうやって深めた内容を誰に伝えたいかというと、おそらくは妻のような「全く興味がないわけではないけど、そこまで考えたことがない」ような人なんだと思います。
正直なところ、妻に逐一記事を見せることに躊躇する気持ちがあります。
「今は個人的な趣味だから…」というのが言い訳ではありますが、いずれ本格的にブログ飯に向かおうとする覚悟を持つ場合には、妻と二人三脚になってブログを考えていくことが必要不可欠になると思いました。
まとめ
思いの外、長くなってしまいました。
やはり、この本を通じて多くのページが割かれているのは、続けるために必要なマインドの部分であって、そこの多くに共感したということなんだと思います。
私自身、「サラリーマンをやめてブログで飯を食おう」としているわけではありませんし、近い将来そうしたいという思いも現時点ではありません。
しかし、ブログは続けていきたい、そして面白いブログにしていきたいという思いがあります。
私はこうした界隈に途中から合流した人間であるため、同じように現在を生きている先輩ブロガーがどのようなバックグラウンドを持っているのかほとんど知りません。
そんな中にあって、このブログ飯という本は、そういったバックグラウンドや、長い時間を通じて心に残り続けたマインドを教えてくれる意味で、とても面白く読むことができました。
最後に、再び奥さんの言葉を引用して、この記事を締めたいと思います。
彼は「継続」という言葉が大好きです。これといった個性を持たないマサオは、続けることで多くの不可能を可能にしてきました。日々の積み重ねは確実に血肉になります。また、執着を手放した時に、大きな奇跡となって貴方の元に還ってきます。その過程を実際に見てきたからこそつくづく思うのです。どんな人間でも成功する手立ては必ずあるのだと。
継続は力なり より
私もこの言葉を胸に、楽しく、面白く、ブログを続けていきたいと思います。