「お金」と「幸せ」、これらを手に入れることについて、ほぼ全ての人に異論はないと思います。
この本では、そうした普遍的な価値について、20世紀初頭に出版された本をもとに、お金や幸せを手に入れるための考え方がわかりやすく漫画化されています。
Contents
オススメ対象者
この本をオススメできるのは、
- お金のことを勉強したいが、どうも活字は苦手な人
です。
内容的には、本書の参考文献にも挙がっている、お金の入門書で言っている内容のエッセンス部分を抽出した本と言えますが、そのおかげで活字の量が圧倒的に少なく済んでいます。
もちろん、そのトレードオフとして全体的な内容が広く薄くなっているのは否めませんが、「お金のアイデアに触れ、興味をもつ」効果は十分にあることでしょう。
この本をゆっくり、自分のペースで読みながら、自分の考えといくらか向き合うことができれば、第一歩を踏み出せたと言っていいでしょう。
2019年10月に出版された本ですが、2020年8月時点でPrime Readingの対象となっていますので、読める方はぜひ読んでみてください。
概要
この本は、ジョージ・S・クレイソンの「バビロンの大富豪 (The Richest Man in Babylon)」が元となっています。
(翻訳本としては他にもいくつかありますが、引用文献での記載に従います)
原著の初版は1926年に刊行されていますので、まさに100年後も読み続けられる名著と位置づけられているものです。
元々は倹約や資産形成のための寓話としてまとめていたところ、銀行や保険会社に好評され、こうして本としてまとまったということのようですね。
本書はその漫画版ということですが、資産形成に必要な基本的なエッセンスは十分に詰まっていましたので、その観点から内容を振り返ってみます。
お金持ちであるとは何か
この本の全体的なストーリーとしては、バビロンに住む少年バンシルが、バビロン一の大富豪アルカドから「黄金を増やす七つの道具」を聞き、その教えに従って様々な苦難に立ち向かうというものです。
その冒頭、アルカドがバンシルに問いかけます。
まずお前たちにとって、 “金持ち” とはなんだ?
例えば、わしがお前たちに金貨10枚を手渡したとしよう。
(略)
使うばかりではいつしかお金はなくなってしまう。
そうなるならその人はお金持ちではない。
なんていうことはない、”お金持ち”というのは「お金の増やし方を知っている者」、人々は彼らをお金持ちだと言っているのだ。
このことは、お金持ちのイメージからはかけ離れて聞こえるかもしれません。
しかし、実際にお金持ちに対して「お金を使ってもお金が減っていかない」というイメージはないでしょうか。
お金持ちを考える上で、そうした収入と支出のバランスは非常に大事だという話を冒頭に投げかけています。
収入の10分の1を貯めなさい
お金持ちの一側面として、「お金が減らない」という話をした上で、そのあり方として「収入の10分の1を貯める」ということを具体的な行動の1つとしてアドバイスしています。
この10分の1というのも非常に絶妙なラインで、本書ではこれを「減らしても生活水準に影響しない」ものだとしています。
月に20万円の収入があれば最低2万円貯めるべきであり、元々18万円で生活していたのであればもう1万円くらい貯めても生活水準は変わらないという指摘です。
そうして月の貯蓄原資をなんとか捻出できたとして、あとは「どのくらいまで貯めるか」に目を向ける話が出てきます。
10分の9で叶えられない欲望は諦めなさい
続いて急に夢のない話が出てきます。
収入の十分の一を貯金に回し、残りの十分の九で叶えられない欲望を諦めるのだ。
これだけ聞くと我慢しろというような話に聞こえますが、この指摘の本意としては、「本当にやりたいことを見定め、そのためにお金を貯めよ」ということだと理解しました。
人によっては余裕のある老後かもしれませんし、10年後に建てる家かもしれません。しかし、その途上に様々な誘惑や欲望があり、そうした欲望とやりたいことの優先順位を比較することなく、ついお金を使ってしまうからこそ、お金が一向に貯まらないのだということでしょう。
誰もがお金を貯めて、やりたいことをやれるようになりたいと思います。
しかし、多くの人は本当にやりたいことを他のやりたいことと等しく並べたままにしてしまうからこそ、手が届かないと諦めてしまいます。
多くある欲望から本当にやりたいことを選び取り、そのためにどこまで努力できるかを考えながら、貯める額を10分の1にするのか10分の2にするのか決めていくということですね。
七つの道具、五つの法則
本書のタイトルは「バビロン大富豪の教え」ですが、サブタイトルとして「『お金』と『幸せ』を生み出す五つの黄金法則」というものもついています。
- 収入の10分の1を貯金せよ
- 欲望に優先順位をつけよ
- 貯えた金に働かせよ
- 危険や天敵から金を堅守せよ
- より良きところに住め
- 今日うから未来の生活に備えよ
- 自分こそを最大の資本にせよ
七つの道具は、先ほど触れたような「収入の10分の1を貯めなさい」といった具体的な行動を指しています。もちろん、これはこれで有用なことではありますが、より重要なのはサブタイトルにも通じている五つの法則のほうだと感じました。
良いことだと言われた行動を実践すること自体はさほど難しいことではありません。
しかし、より難しいのはその行動を継続し続けることであり、そうした継続を実現するには自分自身を支える基本的な原則が大事になります。
- 家族と自分の将来のために、収入10分の1以上を蓄える者の元には黄金は自らを膨らませながら、喜んでやってくるだろう
- 黄金に稼げる勤め先を見つけてやり、持ち主が群れを膨大に増やす羊飼いのように賢明ならば、黄金は懸命に働くことだろう
- 黄金の扱いに秀でた者の助言に熱心に耳をかたむける持ち主からは、黄金が離れることはないだろう
- 自分が理解していない商い、あるいは、黄金の防衛に秀でた者が否定する商いに投資してしまう持ち主からは黄金は離れていくだろう
- 非現実的な利益を出そうとしたり、謀略家の甘い誘惑の言葉にのったり、己の未熟な経験を盲信したりする者からは黄金は逃げることになるだろう
物語の中盤に出てくる五つの法則は、七つの道具に比べればずいぶんと抽象的なのですが、ストーリーの流れとともに、この五つの法則のことを心の底から同意できれば、五つの法則を手に入れたと思って良いでしょう。
コラムをじっくり読もう
この本の大部分は漫画でできています。
だからこそ、活字が苦手な人であっても内容を受け入れやすいようになっていることでしょう。
しかし、そんな漫画版の各章の間には以下のようなコラムが挟まれています。
- 収入の十分の一を貯めるとどれくらい貯まるのか
- 収入の十分の一を貯金しても「生活水準が変わらない」は本当か
- お金があれば幸せか
ここに書かれている内容は具体的にお金が貯まるテクニックではありませんが、テクニックの前提となるマインドの話が書かれています。
全体のストーリーとしても、冒頭は「お金」の話に終始していたところ、徐々にお金から「幸せ」へとストーリーが変わっていきます。
そうしたストーリーの移り変わりとともに、自分でも「自分にとっての幸せ」について考えてみてはいかがでしょうか。
活字が苦手でこの本を手にとった可能性を重々承知の上でも、この数ページずつのコラムをじっくり読み、漫画で語られる寓話と合わせて、自分の考えをじっくり固めるのが、この本を読む上で一番大事なことだと思いました。
まとめ
100年前にこれらの寓話が編纂された時、日本に生まれていたとしても、おそらくこの本の内容と出会うことはなかったでしょう。
また仮に、「世界の投資家に投資する」ことが長期的によいことだとわかっていたとしても、それを実際に行う方法はなかったと思います。
しかし幸いにも、今はそのどちらも可能です。
漫画中心ですので1時間もかからず読み切れると思いますが、その短い時間で得られるものは非常に多いように思える一冊でした。
参考文献
本書がコラムなどで引用している本がいくつかありましたので、それもセットで紹介しておきます。
1億円貯める方法をお金持ち1371人に聞きました
まず最初に、大規模な調査を通じて億万長者になる人達のマインドを考察した本です。
遺産相続等で勝手にそうなった人もいるかもしれませんが、自ら財を築いた億万長者の多くは成功を支えるにふさわしいマインドがあります。人にとっては刺激の少ない内容かもしれませんが、本書同様、じっくり考える機会を与えてくれます。
難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!
本書のコラム「現代における『賢明な投資先とは』」の中に出てくる主旨は主にこの本で言われていることと同じですね。こちらもPrime Reading対象なので、余力があればぜひ読んでみてください。
世界一孤独な日本のオジサン
なかなかインパクトのあるタイトルです。
本書において絡みがある部分は「社会的なつながりを持つ人は、持たない人に比べて、早期死亡リスクが50%低下する」といったくだりでしょうか。
そうした孤独について掘り下げた内容で、「お金があれば幸せか?」ということを考える一つの切り口となるでしょう。
the four GAFA 四騎士が創り変えた世界
先日こんなニュースがありました。
ここまで巨大化していることをバブルとして警鐘を鳴らす向きもありますが、実際GAFAを中心とするハイテク企業が生活を便利にし、社会を発展させた側面は否定できません。そうしたところに投資する意味でも、コラムでは世界中の株式に投資することを提案していたりしますね。