書評: ウォーレン・バフェット 成功の名語録 世界が尊敬する実業家、103の言葉

ピーター・リンチやジョージ・ソロスと並び、投資の神様とも言われる ウォーレン・バフェット の言行録。

オススメ対象者

この本を読むのに適していると考えられるのは、以下のような方です。

  • ウォーレン・バフェットの投資哲学に触れてみたい人
  • 自分の投資スタイルを考える上で、他者の一例に触れてみたい人

この本自体は、何か単一のメッセージ性を持って書き上げられたものではないため、あくまで「そうした考え方もある」というような、投資スタイルの一例として捉えるとよいでしょう。
しかし、その一例の対象としては十分な刺激をウォーレン・バフェットから得られると思いますので、いわゆるバフェット本の入門書としても最適だと思います。

概要

お金に関する情報収集をしている中で、当然ですが株式投資もお金にまつわる手段の1つとして出てきます。
そして、株式投資について調べようと思うと、特に名の知れた投資家の一人として、バークシャー・ハザウェイ会長として、ウォーレン・バフェットの名を避けては通れません。

そうしたことから、当然私も彼についてのWeb記事や、他者による彼の表現を見たり聞いたりしたことはあるのですが、直接的にウォーレン・バフェットに関する本を読んだことはありませんでした。

この本は、特に何かの場や講座における言行をまとめたものではなく、様々なシーンにおける彼の発言をまとめたものです。
最初から最後まで、何かのメッセージを秘めた前提で彼が一連の発言をしているわけではありませんが、発言の中にもある首尾一貫した態度は、それ自体にバフェット哲学のようなものを感じました。

様々な発言の一部分をまとめたこの本だけでも、大いにウォーレン・バフェットの考えに興味を持ちましたので、今後もバフェット関連書籍を追ってみたいと思いますが、1度読み終わった現時点で印象に残った点をまとめてみます。

投資すべき会社とは

一時期はフォーブスの長者番付トップに立ったこともあるほどの大富豪であるウォーレン・バフェットですが、自身の遺産については妻に「資産の90%をS&P500インデックスファンドに、残りの10%を債権に」と言ったといわれています。
そうした意味で、市場平均による成長を着実に広く捉える投資スタイルなのかと思いきや、かなりの一極投資を行うタイプであることが本書の節々から伺えます。

彼の投資スタイルを端的に表す表現として、

まずまずの企業を素晴らしい価格で買うよりも、素晴らしい企業をまずまずの価格で買うことのほうが、はるかに良いのです。

という言葉がありますが、バフェットはあくまで「素晴らしい企業」を買うことが大事だと述べています。そしてさらに、その素晴らしい企業については、

10年、50年たっても欲しいとみんなが思うものをつくっているかどうか、これが私の投資判断の基準です。

と表現しています。
このことからも、バフェットの投資スタイルはバリュー投資であり、それもかなりの長期投資を基本的なスタイルとしてます。実際に、バークシャーハザウェイが保有している会社のことを、バフェット銘柄と呼んだりしますが、コカ・コーラやアメリカン・エキスプレスなど、長期的に必要とされ、また業績を高めている企業がその体現であると言えます。

原則を守る

バフェットの発言として有名なものとして、以下があります。

  • ルール1:絶対に損をしないこと
  • ルール2:ルール1を絶対に忘れないこと

一体どうしたことかと思いますが、ここに「原則を守る」というバフェットの重要な姿勢が表れています。
損をしないことの逆には、利益を得ることがありますが、人は利益が得られそうだと思うと思わぬ行動に出ることがあります。

「絶対に儲かる話」がこの世に存在しないことはおそらくほとんどの人が認めるところです。しかし不思議なことに、この「絶対に儲かる話」が自分の目の前にやってくると、なぜかこの世で自分だけが恵まれていて、自分が儲かることに何の疑問も抱かずに詐欺の被害に遭ってしまうことがあります。

上記の話は極論ですが、バフェットが警鐘を鳴らすのはまさにこの部分で、いついかなる時も自分に課した原則を守り抜くことが長期投資においては特に重要な態度であるということです。

他にもバフェットの持つ原則で有名なものは、「理解できない会社には投資をしない」というものです。
1990年から2000年にかけて、世界の株式市場では多くのIT企業が隆盛を極め、ITバブルと呼ばれる時代を築きました。この流れの中で多くの投資家がIT企業への投資を行いましたが、バフェットは一貫してIT企業への投資を避けていました。
その理由がまさにITというものが理解できないからですが、ITに関して言えば、実はバフェットは半導体の巨人インテルの創業期に投資の誘いを受けていたものの、同じ理由で断っていました。
ITバブルの頃、既にインテルは巨大企業として成長していましたから、IT技術の可能性はバフェットも十分目の当たりにしていたものの、あくまで「理解できない会社には投資をしない」という原則に基づき、投資を行いませんでした。

バフェットとIT企業

ちなみに、このバフェットとIT企業の話には続きがあり、実は2011年頃からバフェットは初めてIT企業であるIBM、次いでインテルに投資を行いました。それまで50年にわたって決算書を読み続けてなお理解できないとしていたIT企業への投資を、ついに解禁したのです。

その後、IBMやインテルは大きな利益を上げられないままに売却してしまったものの、直近公開されたポートフォリオではなんとアップルがバークシャー・ハザウェイとして最も多く所有する株式となっています。

オマハの賢人

よく知られているように、アメリカにおける投資の中心はニューヨークのウォール街であると言われます。投資において情報の重要さは誰もが認めるところではありますが、そうした意味で「生の情報に近いほうがよい」として、投資家がウォール街に吸い寄せられることも、同様に信じられて自然なことだと考えられています。

一方で、投資の神様と称されるバフェットは、広大なアメリカという国のほぼ中心に位置するネブラスカ州のオマハに定住しています。
バフェットはこのウォール街から遠く離れたオマハの地から、年に数度の決算書をじっと読み、その会社が10年50年必要とされ続ける会社かどうかを見極め、「自分が理解できる会社」への投資を続けています。

そうした原則に基づいた投資を続けることで、年平均約20%という驚異的な成績を50年にわたって築き上げてきたことは本当に驚くべきことだと思いました。

総評

この本では他にも多くの考えがまとめられています。
捉え方によっては投資スタイルよりも、「原則を守る」に代表される人間としての行動様式に関する内容のほうが多いように思います。

これまで私は、個別株投資で日々のチャートを眺めてテクニカルな視点で投資をしようとしたこともありましたし、数年にわたる長いストーリーを描かずに、直感的な理由で株を買ったこともあります。
しかし、そうしたその場の流れでしかない投資を行うことは、日々のチャートの動きや日々流れてくる新たなニュースに右往左往することを生み、大いに自分を消耗させていたように思います。
そういった意味で、オマハの賢人としてウォール街から離れ、自分の原則に従って「どんな会社に投資すべきか」ということを長い時間軸でとらえ続けてきたバフェットの姿勢は、大いに刺激を受けるものでした。

歴史上、非常に高い成績を上げた投資家としては他にもマゼラン・ファンドで有名なピーター・リンチや、イングランド銀行を潰した男として知られるジョージ・ソロスなどがいます。
しかし、そうした人たちの実績を見ても、やはりこのウォーレン・バフェットという人間の魅力を、様々な発言・考え・行動を通じて、強く感じました。

もちろん、様々な角度から投資を考える観点で、他の大投資家の考えなどにも触れていきますが、バフェットに関することを自分という人間のためにも、深く知りたいと思うきっかけになる1冊でした。