昨日はAAPL/TSLA/ZMといったコロナショックにも負けずにグイグイ値を上げた個別株のことを調べていました。
その過程で、それらのグロース株を含むETFの存在に気づいたので、今回はそうした米国グロース株ETFを調べてみたいと思います。
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米国グロース株ETF
米国グロース株ETFと当然のように言っていますが、一応定義を整理しておきます。
グロース株
グロース株、日本語で言えば成長株ですが、大雑把に言えば「今後の収益成長により株価上昇が見込める企業の株」のことを指します。
対となるのはバリュー株で、こちらは「割安であるために今後の株価上昇が見込める企業の株」のことですね。
さて、成長株と言うは易しですが、より具体的にどんな状態にあるものをグロース株と呼ぶのでしょうか。
後でも登場しますが、有名なグロース株インデックスである CRSP U.S. Large Cap Growth Index の説明を見てみましょう。
CRSP classifies growth securities using the following factors:
CRSP U.S. Large Cap Growth Index より
・future long-term growth in earnings per share (EPS)
・future short-term growth in EPS
・3-year historical growth in EPS
・3-year historical growth in sales per share
・current investment-to-assets ratio
・return on assets
基本的には一株あたり利益を指すEPSが特に重要視されています。
こうしたEPSの長期的/短期的な成長見込み、3年間のEPS/売上高成長実績、投資率、ROAの基準によって株をグロース株かそうでないかを分類し、グロース株インデックスを計算しているようです。
個別株投資をする際にもEPSなどの株価指標を用いてスクリーニングしたりしますが、仮にこういった観点でスクリーニングをしているとすれば、辿り着く株は同じになるということですね。
(もちろん、グロースに分類するEPSの具体的な基準は公開されていないため、一致することはまずないと思いますが)
主な米国グロース株ETF
先ほどの CRSP U.S. Large Cap Growth Index はグロース株を見つける考え方の一例ですが、こうした「グロース株」と呼ばれる株式に投資をするETFが多数存在します。
以下は、 ETF.com において、
- 北米
- 株式
- グロース戦略
の条件でスクリーニングしたETF45銘柄のうち、純資産総額の上位10銘柄です。
ティッカー | ETF名 | 経費率 | 純資産総額 | |
---|---|---|---|---|
1 | VUG | Vanguard Growth ETF | 0.04% | 636.3億ドル |
2 | IWF | iShares Russell 1000 Growth ETF | 0.19% | 617.1億ドル |
3 | IVW | iShares S&P 500 Growth ETF | 0.18% | 319.3億ドル |
4 | IWP | iShares Russell Mid-Cap Growth ETF | 0.24% | 134.1億ドル |
5 | SCHG | Schwab U.S. Large-Cap Growth ETF | 0.04% | 127.4億ドル |
6 | VBK | Vanguard Small-Cap Growth ETF | 0.07% | 113.1億ドル |
7 | MGK | Vanguard Mega Cap Growth ETF | 0.07% | 99.8億ドル |
8 | IUSG | iShares Core S&P U.S. Growth ETF | 0.04% | 98.5億ドル |
9 | SPYG | SPDR Portfolio S&P 500 Growth ETF | 0.04% | 95.2億ドル |
10 | IWO | iShares Russell 2000 Growth ETF | 0.24% | 93.2億ドル |
米国グロース株ETFといえばまずこのあたりを指すと思って間違いないでしょう。
特に、トップ2のVUGとIWFはバンガードとブラックロックの代表的なETFとして特に有名です。純資産総額も頭一つ飛び出ていますね。
米国グロース株ETFの比較
それでは、いくつかの米国グロース株ETFをピックアップし、さらにその中身を読み解いていきましょう。
ピックアップするのは、先ほどの上位10銘柄のうち、
- VUG:大型グロース株
- IWF:ラッセル1000グロース株
- IVW:S&P500グロース株
- VBK:小型グロース株
- MGK:超大型グロース株
の5種類を選んでみます。
主要データ
では簡単に比較できるものを比較してみましょう。
VUG | IWF | IVW | VBK | MGK | |
---|---|---|---|---|---|
運用会社 | バンガード | ブラックロック | ブラックロック | バンガード | バンガード |
ベンチマーク | CRSP U.S. Large Cap Growth Index | Russell 1000 Growth Index | S&P 500 Growth Index | CRSP US Small Cap Growth Index | CRSP US Mega Cap Growth Index |
純資産総額 | 636.3億ドル | 617.1億ドル | 319.3億ドル | 113.1億ドル | 99.8億ドル |
経費率 | 0.04% | 0.19% | 0.18% | 0.07% | 0.07% |
構成銘柄数 | 269 | 437 | 283 | 589 | 107 |
米国グロース株ETFで最大の規模を誇るのがバンガードのVUGです。
経費率へのこだわりで知られるバンガードらしく、経費率0.04%は並ぶIWFよりも一段下の水準にありますね。
次いで、ブラックロックのIWFが続きますが、純資産総額としてはほぼ同等で、こちらは構成銘柄数の多さに特徴があるように思います。
あとは有名な米国株インデックスであるS&P500から、さらにグロース株へのスクリーニングを行った S&P 500 Growth Index に連動するIVW、小型のグロース株に投資するVBK、大型株を超えた巨大株に投資するMGKと続きます。
結局は、対象とする株式のサイズと構成銘柄数が概ね反比例するようなイメージになっていると思います。
- 投資対象株のサイズ
- MGK > VUG > IVW > IWF > VBK
- 構成銘柄数
- VBK > IWF > IVW > VUG > MGK
いずれもグロース株をスクリーニングしてできたETFではありますが、そもそものスクリーニング対象とする株式の集団によってETFとしてのスタイルが変わってきますね。
パフォーマンス
続いては、グラフで値動きを見てみましょう。
5つの米国グロース株ETFのほかに、ベンチマークとしてS&P500も並べています。
ぱっと見て、2つのグループに分かれていることが分かりますね。
S&P500と小型グロース株のVBKは概ね同じパフォーマンスで、それ以外の4つはいずれもS&P500をアウトパフォームしているような実績となっています。
実際に、1-10年の平均リターンをみてみると
VUG | IWF | IVW | VBK | MGK | S&P500 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1年 | 31.27% | 29.64% | 24.35% | 11.97% | 34.05% | 11.96% |
3年 | 19.94% | 20.69% | 18.18% | 13.41% | 20.90% | 12.01% |
5年 | 15.90% | 16.61% | 15.15% | 10.36% | 16.85% | 11.49% |
10年 | 16.79% | 17.07% | 16.42% | 13.80% | 17.29% | 13.84% |
というように、
MGK > IWF > VUG > IVW >>> VBK ≒ S&P500
となっています。
とはいえ、VBKですら10年で4倍になる水準のリターンですので、大変素晴らしい成績なんですけどね。恐ろしい。
構成銘柄の比較
続いては、構成銘柄で比較してみましょう。当然全部書くわけにはいかないので、上位10銘柄とその合計組入率でみてみます。
VUG | IWF | IVW | VBK | MGK | |
---|---|---|---|---|---|
1 | AAPL | AAPL | AAPL | COUP | AAPL |
2 | MSFT | MSFT | MSFT | TDOC | MSFT |
3 | AMZN | AMZN | AMZN | EPAM | AMZN |
4 | FB | FB | FB | ZBRA | FB |
5 | GOOGL | GOOGL | GOOGL | TER | GOOGL |
6 | GOOG | GOOG | GOOG | CTLT | GOOG |
7 | V | V | V | ETSY | V |
8 | HD | TSLA | NVDA | PODD | HD |
9 | MA | NVDA | MA | FICO | MA |
10 | NVDA | MA | ADBE | POOL | NVDA |
上位計 | 44.59% | 46.57% | 46.06% | 8.29% | 53.25% |
組入銘柄数 | 269 | 437 | 283 | 589 | 107 |
まず、最初に目につくのがVBKを除いて、上位がほとんど同じ顔ぶれになっているということですね。
VBKとそれ以外、ってところは先ほどのチャートやリターンからも異なる性質が見えていないので、ここと繋がっているということのようです。
また、上位10銘柄の組入比率についても概ね45%程度を組み入れている一方で、VBKは8%程度と、圧倒的に分散度が異なることもわかります。
ただ、この組成をしていながら、結果的なパフォーマンスがS&P500と同程度になっているのは興味深いですね。
あとは、そうした残り4つのETFの違いは何かというところですが、特徴的なのはIWFが組み入れているTSLAだと思いました。
TSLAはここ数年で急速に株価を伸ばした一方で、インデックスからの評価が遅れていて、あの規模を持ちながら未だにS&P500に組み入れられていません。
(注:2020年9月時点では組み入れられていませんでしたが、2020年12月に組み入れが決定されました)
そのため、S&P500をさらにスクリーニングして作られるIVWにはそもそもTSLAの組み入れがないということになっています。
他のVUGやIWF、MGKはS&P500とは別のインデックス体系であるため、それぞれ1-2%程度の組み入れがあります。
MGK/IWF/VUGの比較
最後に、リターンの上位3つであり、さらに同様にTSLAを組み入れていたことを考えると、これらはほぼ同じ性質を持っているように思います。
そこで、この3種が組み入れる全銘柄情報から、その差分を見てみたいと思います。
重複する銘柄を可視化するべく、銘柄情報からベン図を書いてみます。
これを見るとVUGとMGKの関係がよくわかりますね。
少しだけ特有のものがありますが、ほぼMGKはVUGにすっぽり含まれる構成となっています。
一方で、VUGとIWFは重複は大きいものの、それなりに差分が出ているのでここはファンドの性格が出ているところだろうと推測します。
しかし、結果的にこれら3つのETFのパフォーマンスは似たようなものになっているため、パフォーマンスのほとんどは中心にある83銘柄からもたらされているということですね。
そうなるとあとはトッピング程度の要素ということになりますが、個人的にはIWFの幅広さにグロース株としては夢がありそうだなと思いました。
まとめ
今回は米国グロース株ETFについて調べてみました。
VTIを主軸に投資はしているものの、やはりその中でも成長性に注目したグロース株ETFは魅力的ですね。
今は順調に市場が拡大しているために、こうやってグロース株の可能性が強く感じられるところですが、そのパフォーマンスの良さは後退期のパフォーマンス悪さにも繋がるため、この結果をもってすぐさまグロース株ETFに移行するかというとそれはそれで考えものです。
とはいえ、こうしたグロース株をスクリーニングするために、各社で一定の成長の指標を考え、その考えに基づいた投資を実践しているわけですので、グロース株に興味があるとすれば、非常に便利な商品だなと思いました。
参考: QQQとの比較
今回の主題はグロース株だったので本編では触れていませんが、パフォーマンスの良さがどうしても気になってしまうので、その極端な例としてQQQを重ねてみます。
インベスコのQQQはグロースがどうとかいうものではなく、NASDAQに上場する企業の時価総額トップ100で組成されているETFです。
グロース株がS&P500の上をいくことにも驚きましたが、やはりQQQはさらにその先をいきます。
VUG、IWF、MGKのパフォーマンスは中心部の83銘柄からきているという話をしましたが、それをアウトパフォームするQQQの秘密はこのいずれにも含まれない24銘柄にあると言えそうです。このあたりはまた調べてみたいですね。
このように、単純にパフォーマンスを求めるだけならグロースもバリューもなく、とにかくQQQにいけばいいということでもありますが、果たしてそれはそうなんでしょうか?
いい情報ばかりも見ていられないので、異なる性質をもつものを上手く比較することも今後考えていかないといけないなと思います。
参考記事
こちらの姉妹記事にあたりますが、バリュー株ETFの比較です。
記事中でベン図を使った構成銘柄分析を行っていますが、Pythonを使って描画しています。