学資保険とジュニアNISAで迷ってしまったら

先日、もうすぐ子どもが生まれる友人夫妻と話をしていたら、「子どもの学資保険をかけるか、ジュニアNISAをやるかで迷う」という話を耳にしました。

結論から言えば、「その2つは二者択一的に迷うものではない」のですが、改めてこの悩みを解きほぐしつつ、どういう考えで選択を行えばよいのか、掘り下げてみます。

子どものためにお金を備えるとは

まず、この「学資保険か、ジュニアNISAか」に迷う前提を少し整理してみます。

  • 子どものためにお金を準備したい
  • 子どもはまだ幼いため、本格的にお金が必要になるまで10年以上かかる

という状況です。

もう少し補足すれば、前者で準備するお金の典型的な用途は教育資金、だとすれば後者で言うところの準備期間は特に大学資金を意識する意味で20年近い期間を想定することになります。

それでは、これを念頭に、問いの深堀りと手段の検討を行っていきましょう。

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ゴール地点から逆算すると、どんな手段があるか?

まず最初に、何の障害もなく着々とお金を準備できたとして、どういうペースでお金を貯めていくことになるでしょうか。ひとまず仮に1500万円、期間18年だとしてその教育資金を準備するために必要な月々の積立額を計算してみましょう。

必要な部分だけを抜き出して、計算フォームを作ってみました。内容的には減債基金係数を使っています。

1500万、18年だとすると運用をしない場合に7万円/月を貯金していくと達成できる水準だということがわかりました。

運用しない場合はただの割り算ですが、運用利率などもセットで考える場合はこちらの記事も参考にしてみてください。

取りうる手段は何か?

この計算を踏まえ、改めて取りうる手段を考えてみます。

  • 貯金
    • 計算に従い、毎月7万円を積み立てていく
  • 保険(学資保険)
    • 貯金と同様、概ね毎月7万円ほど積み立てていく
  • 投資(ジュニアNISA)
    • 一定の運用利率を見込みながら積み立てていく
    • 仮に3%を見込む場合は毎月5.5万円ほどの積立になる

というように、考え方としてはこの3パターンになるでしょう。

もちろん、投資と一口に言っても色々な方法があるのでジュニアNISAに限るものではありませんが、「一定の運用率を見込みながら積み立てる」ということに変わりはないので、代表例だと思っていください。

従って、あとは子どものお金を準備する中でどれを選んでいくのか、またはどう組み合わせるのかという話になります。

メリット/デメリットの比較

ここで、3パターンそれぞれでお金を準備しようとする場合のメリット/デメリットを比較してみましょう。

メリットデメリット
貯金・月々積立額が最大
・毎月貯金できれば、確実に目標達成できる
・途中で親が死ぬなどするとお金の準備が途切れてしまう
保険・月々積立額がほぼ最大
・毎月支払できれば、確実に目標達成できる
・途中で親に万一のことがあってもお金の準備ができる
・途中解約すると元本割れするケースがある
投資・月々積立額が最小
・市況によっては目標以上にお金を準備できる
・途中で親に万一のことがあるとお金の準備が途切れてしまう
・市況によっては目標に達しないこともある

他にもいろいろな観点があるとは思いますが、代表的にはこんなところだと思います。

この中でポイントなのは「保険は親に万一のことがあっても、お金の準備ができる」ということです。

“万一の場合” を想定するか

後でまとめますが、結局のところ「保険か、投資か」というような内容を悩む場合には、 “万一の場合” を想定するかどうかに選択のポイントが隠れています。

本来の意味での保険は、 “万一の場合に備える” ための金融商品であるため、それはある意味当然のことなんですが、この点を忘れる方は多いので注意しましょう。

今回の学資保険/ジュニアNISAにまつわるケースで想定すべき “万一の場合” は主に2つです。

1. 自分に万一のことがある場合

まずこちらは、子どもが教育資金などのお金を必要とするより先に、自分が死ぬなどしてお金の準備が止まってしまうことです。この場合は貯金であろうと投資であろうと、原資がストップするので目標の達成は極めて難しいでしょう。

こうした万一のことに対応するのが保険なので、この文脈では学資保険が有力な選択肢になり得ますし、もちろん生命保険でそれをカバーしておいてもよいです。
(ただし、子どもが生まれるたびに生命保険そのものを見直すと条件が悪くなる可能性もあるので、その場合は学資保険を足していく考えが有効)

2. お金が必要なタイミングで大不況に陥っている場合

こちらは投資に対する万一のケースで、子どもがお金を必要とするまさにそのタイミングで、コロナショックであったり、リーマンショックのような不況に見舞われて目標に届いていたお金が大きく減ってしまうことです。
しかしながら、子どもがお金を必要とするタイミングは待ってくれないため、いつか市況が戻ると期待したところで、失敗の状態となります。

こちらの場合は保険などが使えないので、必要以上のリスクを取らないようにするとか、お金が必要となるタイミングに向けて堅いポートフォリオに移行しておくとか、そういったケアが必要になります。

このように、子どもの将来に対して、どれほど万一のことを想定するかで選択肢の見え方が変わってきます。

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万一のことが起こったら、本当にどうなるか?

とはいえ、基本的に万一のことと言うだけあって、致命的な状況になるケースは現実にはそう多くないのかもしれません。
リスク管理上それが正しいとしても、「自分が死んだときのために…」なんて考えるのは気持ちのいいものではないですよね。

だからここは楽観的に捉えて、夢はでっかく投資プランだ!

と思いたくなる方もいると思いますが、ここで立ち止まって考えてほしいのが「万一のことが起こったら、本当にどうなるか?」ということです。

先ほど紹介した万一の場合を例にとると、

  1. 自分に万一のことがある場合
    • このとき、子どもの視点で考えると親がいなくなり、自分の将来像も大きく見直さなければならない状態
    • 仕方ないと言えばそこまでですが、泣きっ面に蜂のような状況で、子どもにとってなかなか酷な状況と言えます
  2. お金が必要なタイミングで大不況に陥っている場合
    • これは端的に大学入学くらいのタイミングだと思いますが、それまで順風満帆だった進学展望が、市況の急速な悪化とともに、親から「すまない、〇〇ショックでお金がなくなってしまったので進学は諦めてほしい」と言われるような状況です

というようなイメージになるでしょう。

総じて、「こうなってしまった以上、仕方ないよね」と言ってしまえばそれまでの話ではあるのですが、万一の局面で子どもにそれを許容させるかどうかということですね。

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他に手段はあるか?

ここまで話をしてくると、心配性の方は特に、貯金か保険を使わざるを得ないような、そんな気持ちになっているかもしれません。
しかし、極論として投資を使わない場合には、毎月7万円を捻出し続けなければならないわけで、それがそもそも苦しいという家庭も少なくないでしょう。

ですので、あとは組み合わせやサポートを使ってできる限り負担を少なくして準備を考えることになります。

投資の一部利用

確かに投資にはリスクがつきもので、子どものお金が必要なタイミングで不況になっていたりすると、資産形成どころかむしろダメージを食らうこともあります。
一方で、これから子どものお金を準備しようとする人にとっては20年近い時間があるわけなので、その時間を味方につけて一部投資を行うことはそこまでリスキーなことではありません。
あくまで過去のデータにおいてですが、10年以上の積立期間を前提にする場合、ほとんどマイナスにならないという結果になっています。こちらの記事を参考にどうぞ。

例えば、毎月7万円の積立が必要だとしても、最初の10年間は半額を貯金、半額を投資にまわしつつ、後半の10年は満額を貯金にするなどすれば、全額投資するよりもリスクは低く、全額貯蓄するより負担を軽くできることでしょう。
また、投資を活用することで市況の影響を受けることになりますが、後半の期間を低リスクにコントロールすることでそこまでビクビクしながら生活しなくてもよくなります。

もっと言えば、何も投資は子どものお金領域だけで考える必要もないので、家計全体のどこかで投資の力を使えているのであれば、「家計全体ではそれなりにリスクを取っているので、子どものお金くらいは手堅くいこう」という考えも十分あるでしょう。

奨学金の利用

子どものお金の話だとした場合、最もわかりやすいサポートは奨学金を利用することです。
どのコース/金額を利用するかにもよりますが、生活費程度をまかなうことも可能でしょうし、大きな力になるでしょう。

奨学金として最もメジャーな日本学生支援機構を例にとると、無利子の第1種奨学金と、有利子の第2種奨学金があります。有利子とはいえ、最新の金利は変動制の利率見直し方式で0.002%という超低利になっています。
市況によって利率変動があるにせよ、かなり有利にお金が借りられるのは間違いないので、必要以上に家計を切りつめたり、あるいは投資でリスクを負うよりは奨学金の活用を考えたほうがぐっと悩みが少なくなるケースも多いと思います。

また、子どもの学力が優秀であれば、無利子の第1種を借りられたりもするので、その学力部分に限っては子どもの協力を求めてもよいでしょう。

まとめ

ここまでの話を踏まえると、最初の問いである「学資保険か、ジュニアNISAか」という問いは以下の点が選択のポイントになります。

  • 必要額に対する投入元本
    • 家計負担の観点では、リスクはありつつも投資を活用すれば負担を軽減できる
  • “万一の場合” をどう思うか
    • 「ごめん、だめだった!」で済ませられるなら投資を最大限活用すればよい
  • 10年20年をどう過ごしたいか
    • 方針の修正までケアできるなら貯金/保険/投資を組み合わせるとよい
    • 子どもにもある程度お金と進路の関係を意識させられると、奨学金等を上手く活用できる

というわけなので、このご時世、安全性重視で貯金/保険一辺倒というのも違うでしょうし、また逆に投資に全振りするのも極端な話です。ですので、様々な手段を調べたり考えたりしつつも、しっかり自分の考え/感性に向き合って、自分にとってバランスのよい手段を選びましょう。

リーマンショック以降、コロナショックを含めても投資界隈は好調さをキープしていますが、それでも10年に1度くらいは一時的な混乱期を迎えているので、「なんだかんだ損することはないでしょ」と楽観視しすぎることなく、手元資金や家計収支の余裕度合いを見ながら、上手く手段を組み合わせて子どものお金を準備してあげるとよいでしょう。

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