投資と投機、ギャンブルの違い

投資をしていると言った時、「ギャンブルみたいなものでしょ」と言われることがあります。

個人的には投資にギャンブル性は薄く、投機と勘違いしているんだろうと思いつつ、その線引きをはっきりスラスラ喋れるわけではないので整理してみたいと思います。

投資とは

まずは投資からみてみましょう。

投資【とうし】
1 利益を得る目的で、事業・不動産・証券などに資金を投下すること。転じて、その将来を見込んで金銭や力をつぎ込むこと。「土地に投資する」「若いピアニストに投資する」
2 経済学で、一定期間における実物資本の増加分。

goo辞書「投資」 より

今回きちんと区別したいのは「投資という行動」「投機という行動」なので、1の内容がマッチしますね。

将来のリターンに向かって、お金や力をかける行動のことを投資と言います。
読んで字のごとく、「資産に投じる」というのが投資というわけですね。
特に、投資においては投じる対象に価値を認めているという点が重要です。

ここで言う資産は狭義には株や不動産といった、いわゆる金融資産ですが、広義には人材やスキルといった人的資産も含まれます。自己投資といった場合はこのパターンですが、わざわざ「自己」と前置きしないのその意味でピンとこないので、やはり第一には金融資産が投資対象とみなされると思っていいと思います。

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投機とは

続いて投機です。

投機【とうき】
1 利益・幸運を得ようとしてする行為。
2 将来の価格の変動を予想して、現在の価格との差額を利得する目的で行われる商品や有価証券などの売買。
3 禅宗で、修行者の機根が禅の真精神にかなうこと。師家の心と学人の心とが一致投合すること。

goo辞書「投機」 より

さて、行動という意味では1つ目でしょうか。
利益を得ようとする点では投資と同じですが、幸運というのはずいぶん表現が異なります。

2つ目を見ても、そのものの価値を認めてお金を投じた投資とは異なり、価値があるかどうかではなく、価格の変動とその予想に対してお金を投じているのが投機ということになります。
その意味で、投機は「機会に投じる」と読むことができます。

3つ目はずいぶん別の話に思えますが、実際には投機という言葉の語源にあたる内容です。

投機の由来・語源
もとは仏教用語。禅宗で師家(しけ)と弟子の機(はたらき)が一つになること。また、修行者が大いなる悟りを開くことをいう。
転じて、機会をうまくとらえる意味となり、さらに、偶然の利益・幸運をねらう行為の意味を表すようになった。

由来・語源辞典「投機」 より

投機というのは、元は仏教用語で、師匠と弟子が通じ合うことを指します。
それが転じて機会をうまくとらえるとか、市場と通じ合うといった意味合いで、投機の意味が形成されたようです。

投資と投機

調べた意味を並べてみると、

  • 投資:資産に(お金を)投じること
  • 投機:機会に(お金を)投じること

という対比にあることがわかります。

投資の意味の中に「将来を見込んで」という言葉があったように、一般的に投資の成果が出るまでにはそれなりの時間を要するものが多いです。
「短期投資」という言葉が成立しないわけではありませんが、時間をかけて大きく育つことを目指す観点で、「長期投資」のほうが本来の意味に即しているように思います。

一方で、投機というのは、まさにそのときのチャンスを捉えて利益を得ることです。
ですので、本質的にそれに価値があるかどうかはあまり関係なく、本来の価格より高いとか安いとかいうところを上手く捉え、その差額を利益とする発想です。

そうしたことを踏まえ、いくつかの観点で並べてみると、

投資投機
投入対象資産機会
行動期間長期短期
利益の源価値の成長価値の変動
利益の総和プラスサムゼロサム

というような対比となります。

投資の場合は資産そのものの価値が成長しているため、全体での量も増えていくプラスサムゲームの性質を備えています。

一方で、投機は利益の源を価値の変動に置いているため、「安値で買って高値で売る」といった利益の裏で、「高値で買って安値で売る」といった損失もセットで発生しており、ゼロサムゲームの性質があります。

こうした側面を捉えると、投資がギャンブルからは遠く、投機がギャンブルに近い性質を持っているということが分かるかと思います。

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○○は投資なのか

それでは、世の中にある様々なお金儲けの手段について、それぞれが投資なのか投機なのかはどのように考えればよいのでしょうか。

株式

まず最初に株式を例に挙げますが、株式にお金を注ぎ込むことは投資でしょうか、投機でしょうか。

これはもう、言葉の印象としてですが、

  • 株式投資
  • 株式投機

のどちらがピンとくるかと言えば、そりゃ投資のほうだと思います。

確かに株式自体は、企業が事業拡大のために必要な資本を集める手段であり、だからこそそれが目論見通りにいけば事業が成長し、株式の価値も上がります。
事業成長が一朝一夕ではなされないことからも、投資における長期性ともマッチし、やはり株式は投資行為に繋がると思えるような気がします。

しかし一方で、ニュースを見ていると「投機筋が大量の株式を売買し…」など株式と投機が結びついた文脈もあります。

実際に、株式の世界でもHFT(High Frequency Trading)と呼ばれる、アルゴリズムに基づいた超高速取引がなされており、短期を超えた超短期取引により、わずかな値動きから大きな利益を得ようとする動きがあります。

そうしたとき、株をじっくり持って成長を待つスタンスを取れば株式投資であるし、HFTのように短期で何度も取引を行うスタンスであれば株式投機のような様相となってきます。

FX

続いて、日本においては株式同様に人気のあるFXです。

FXはドル円などを売買することで、為替の変動によって利益を得るものです。
価格の変動によって利益を得るという観点ではいかにも投機のようですが、ではFXに投資の側面はないのでしょうか。

これは当然あります。
通貨というものの価値は、本質的にはその発行体である国やその国の経済にどれほどの価値があるかということと繋がっています。
そのため、外国からお金が流入し、その国の経済が発展していくと、その通貨の価値が高くなり、利益を得ることができます。
こちらの捉え方であれば、企業の株式を買うがごとく、国家の通貨を買っているような構図が見えてきます。

新興国などは預金金利が先進国に比べて高く設定されていますが、高い金利によって外貨を呼び込みたいことと、その金利を支える経済成長が見込めることなどが絡んでいます。
一方で、新興国を最たる例として不安定な通貨であるために、「金利を高くしないと見向きもされない」という側面もあります。

実際に日本の円は超低金利でまわっていますが、それでも国際的な価値を評価されているのは、日本という国と日本経済に信頼があり、安定的な通貨と信頼されていることの裏返しとも言えます。

投資か、投機か

株式とFXの例しか見ていませんが、ほとんどこの2例で大事なことは見えてきます。

株式にせよ、FXにせよ、その資産が投資的なのか投機的なのかに一定の強弱はあるものの、本質的に資産の種類そのものが、投資であるか投機であるかを決めるものではないということです。

株式だって短期で売買を繰り返せば投機だし、FXだってその国を長期で見ていれば投資であると思えます。

ですので、「○○は投機だ」と言うようなことがあれば、それは○○という資産そのものの問題ではなく、その資産を通じてどのようなお金儲けを見ているかということの問題だと言えます。

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ギャンブルとは

最後に、ギャンブルとの違いを考えておきましょう。

言い切ったら言い切ったで異論が出そうですが、ギャンブルとは本来的に「何らかのルールの下で勝負を決し、その結果に従って金品のやりとりを行うこと」を指すと思います。
この勝負の決し方については運が多分に絡むものが多いため、運に任せるという要素がギャンブルの特性としては重要となります。

また、期間の点では短期となる場合が多く、この点では投機と似ていることになります。

こうしたことから、投機≒ギャンブルとしてもよい面がある一方で、ギャンブル固有の特徴としては「胴元が存在する」ということがあります。

一対一のやりとりであれば別ですが、パチンコなんかは店が胴元ですし、競馬も競馬場が胴元です。
こうした胴元たちは、勝った負けたでの払い戻しを踏まえても、全体の何割かが利益として残るような設計となっているため、参加者から見ると「マイナスサムゲーム」となるのが特徴です。

どれくらいマイナスサムかというと、賭け金の総額と払い戻し金の総額の割合に基づく払戻率の観点で、以下のような水準だと言われています。

払戻率
パチンコ80~85%
競馬70~80%
競艇75%
競輪75%
宝くじ50%

一般的に、「夢を買う」などとして社会的に容認されている宝くじですが、パチンコ屋もビックリの払戻率で、購入額の50%程度しか払われていないと言われています。打ち出の小槌のようなビジネスですね。

だからこそ、一般企業は宝くじを販売することができず、自治体など限られた団体が宝くじを独占している構図となっています。

このような観点でみると、投機とギャンブルの間には、

  • 共通
    • 短期的な行動
    • 予想によって利益を得る
  • 相違
    • 胴元が存在する
    • マイナスサムである

という関係がありそうです。
結局、この3種をまとめてみると、以下のような関係になると思います。

投資投機ギャンブル
投入対象資産機会勝敗
行動期間長期短期短期
利益の源価値の成長価値の変動価値の移動
利益の総和プラスサムゼロサムマイナスサム

まとめ

今回は投資と投機の線引き、さらにはギャンブルとの線引きまで考えてみました。

お金儲けの行動として投資や投機、ギャンブルがあるのは同じであるとしても、お金儲けのスタイルがそれを分けるということが分かりました。

また、そうしたお金儲けの対象によってそのスタイルが確定することはなく、どのような対象に対しても、投資 / 投機 / ギャンブルは成り立つため、結局は自分の取り組み方や考え方が投資や投機を区別する上では最も大事だということです。

投資初心者にありがちな失敗として、思うような成果が出ず、早々に手を引いてしまうということがあります。
巷を席巻するような、「1年で1000万円!」などという華やかなイメージが念頭にあるがゆえにそういった行動に出てしまうわけですが、おそらく初心者として投機やギャンブルがやりたいと思っている人は少なく、投資を望んでいるはずなのに、やっていることは投機やギャンブルといったことが投資初心者のミスとしてよくあります。

だからこそ、自分がやろうとしていることが投資なのか投機なのか、あるいはギャンブルなのかをよく理解し、そのスタイルにおいて適切な行動が何かを十分に考える必要があると感じました。

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